四話
少し短いので、余力があれば今夜もう一話投稿します。
「孤立した味方がいる?」
敗走する左翼の兵が、恐怖を伝染させながら右翼の兵と合流。
その混乱を極めた敵を、シオンの部隊と連携して挟み撃ちにしている理想的な状況で、伝令の一人がそう報告した。
どうやら功を焦った魔物たちがシオンの指示を離れ暴走。
それを数百の敵兵に追い回されているらしい。
「すぐに救援隊を……」
肩で息をしながらも本隊と合流したイリーナを、俺は片手を上げて遮る。
「作戦指示に従わない者のために、この好機を逃すわけにはいかない。そいつらの救出は目の前の敵を叩いてからだ!」
「そんな……」
悲痛な表情と逆恨み的な視線を向けるイリーナ。
だが、まだ数で負けている状態で敵が冷静さを戻してしまえば、すぐにでもこの優勢な戦況はひっくり返されてしまう。
そうなれば数名では無く、数百単位で犠牲者が出るかもしれない。
それに勝手をしたのは、雑魚のゴブリン。
そこまでやってやる義理は無いと、彼女も分かっているはず……なのに。
「……分かりました! その救出作戦は私一人でします!」
当たり前のように言い放ち、再び馬に飛び乗る。
「お、おい! イリーナ!」
「命令違反の処罰は後で受けますので! 失礼します!」
「イリーナ様! ご自重ください! 数名の兵のためにイリーナ様が……」
俺たちの会話を聞いていた、近くの兵が声を上げる。
「私はこの部隊の一人一人を戦友、仲間、家族だと思っています。その家族を見殺しにするなんて、たとえ神がお許しになっても、私が許しません!」
そう言うと彼女は、取り残された味方がいる場所に向け馬の腹を蹴った。
「お~い! この状況でお前がいないと、誰が俺の指示を聞いてくれんだ!」
言うこと聞かない兵士の中に残された俺の声が、戦場の怒号に掻き消された。
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かなりテンション上がります!