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二話

「よし! リザードマン相手に時間取った分、さくさく片付けるか!」

 現在、俺が雇われている魔王軍こと、クルーガ帝国が建国されて二百年。

 魔王が治める魔都は名に似合わず、皇帝である魔王は魔物、人間、亜人間、種族も経歴も問わず優秀な者を登用。

 さらに信賞必罰を徹底させた。

 そして、人間を含む他種族との交易。

 まあ、古参の魔物たちは気にくわないらしいが、今の所その政策は功を奏していた。

 この国の経済発展は留まることを知らず、古いしきたりに囚われて停滞している人間の国と比べることが出来ないほどの発展を見せていた。

 魔王が治める国。

 しかも日の出の勢いの新生国を、人間の住む国々は面白いはずが無かった。

 自分たちは古いしがらみにしがみついて動けないくせに、日々発展する帝国を目の敵にして色々な難癖をつけ、国境付近で盗賊まがいのことまでやり始めた。

 それでも初代皇帝である魔王は、なんとか穏便に済ませようとしたみたいだが、六年前に即位した二代目の女帝ティファ・エリザベーテは違った。

 今まで貯め込んだ莫大な経済力と軍事力にものを言わせ、ちょっかいを出してくる人間の王国全てに経済制裁を行なったのだ。

 結果。

 帝国のその行動に敵意、軍事行動を起こした二つの国はわずか一年で滅び、ラダニア王国は四番目に滅びる国と帝国内で噂されていた。


 その噂どおり父王が病で倒れたことを機に、ラダニアの若き王が宣戦布告もしないまま帝国領に進行したのは、わずか二ヶ月前。

 もちろんそれは女帝、いや魔王ティファの想定の内だった。

 ラダニア兵は待ち構えていた魔王軍によって、村の一つも占拠しないうちに大敗。

 大義名分を得た帝国は正当防衛と称してラダニアに侵攻。

 瞬く間に敵を最終防衛ラインまで追い詰めた。

 その最終防衛ラインを突き崩すため、白羽の矢が立ったのが俺たちの部隊なのだが……。

 大雑把に、今までの流れを頭の中で整理した俺は、部下に調べさせていた資料に目を通す。

 魔王軍二千に対し、ラダニア軍五千…………。

「どう考えったって勝ち目ねーだろ? 何考えてんだうちの大将は!」

 戦力差を確認し、一瞬でさじを投げた。

 敵は各地に配置してあった部隊をかき集め、徹底抗戦の構えを見せていたのだ。

「あとからベーゼ将軍率いる五千が、援軍に来るって聞きましたけど?」

 そんな俺の絶叫を軽く流し、のほほんとした瞳でイリーナが呟く。

 ふ~。まったく、これだから蝶よ花よと育てられた貴族の娘は単純で困る。

「なんでしょうか? 急にテイルさんを斬れと、神の啓示を受けたんですけど!」

 ジト目で睨み、イリーナが剣の柄に手を掛ける。

 神様恐るべし!

 そもそもなんで魔王軍の、しかもダークエルフが神を信仰している?

 危険思想で捕まったりしないのか?

 いや、もし俺が告発しても、魔王はきっとこう言うのだろう。

『あらあら面白いじゃありませんか』と。

 俺は内心の動揺を隠し、出来るだけ冷静に真実だけを伝える。

「そんなの来るわけないだろ? だってあいつ俺たちのこと嫌いだもん!」

「それは……わっちが東国の魔物だからかえ?」

 イリーナの隣で沈黙を守っていたシオンが口を開く。

 その無表情から、若干の自責の念とかを感じられる……かもしれない。

 確かに、東国は猪突猛進だの狂気の戦闘集団だの言われるが…………。

「たちだよ! たち! ぽっと出なのに日の出の勢いで出世する人間の軍師。目立ち始めたダークエルフの騎士。それにお前だ!」

「私もですか? 私はテイルさんのような悪事は何一つ働いてませんけど?」

 不思議そうに首を傾げるイリーナ。

 いや、俺も悪事は働いていない。

 めんどくさいが、俺は今の状況を簡潔に説明する。

「妬み、嫉み、嫉妬に、危機感。貴族だが女のお前が家督を継いでわずか数年で将官クラス。自分は戦わないで偉そうにしている将軍様たちにとって、面白いわけないだろ? 俺のように心の広い人間じゃなきゃ、嫉妬して当然だろ?」

「そういうものですか?」

 物心ついてから今まで、勧善懲悪の厳粛な教会の教えで育った彼女にとっては、俺の言葉は信じ難いらしく、逆に俺に疑心の視線をぶつける。

「ぬしらも、わっちと同じと言うことでありんすか……」

 逆にシオンの無表情な顔が、少しだけ和らいだ気がした。

「そっ、だから奴は来ない。もし来たとしたら、それは俺らとラダニア軍が疲弊したところを叩くだろうな。もちろん俺らごと!」

「ふむ、ではわっちらはベーゼが来る前に、勝利しなければならんと言うことじゃな?」

 無表情なシオンの言葉に無言で頷く。

「そういう事。そんな訳で、あの将軍の嬉しそうな顔を見たくなかったら協力してくれ!」

「うん…………良く分かりませんが、分かりました!」

 俺は彼女たちの渋々だが了解したと取れる視線を確認し、作戦の説明を始めた。



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