Hamburger steak in the sky !!
こんにちは!ワセリン太郎です!本日分もお食事中に読むに相応しい内容となっております!突撃!あなたのおひるごはん!!
「あのアンポンタン達には後で説教するとして……アイリスさん、外の怪物達はどうなってます?」
パンツの山の上に立ち、城門の外を見ながら困ったような表情で笑うアイリスさん。
「そぉねぇ……やっぱり、かなり動揺しているみたいよ? 例の河川敷公園でのレアちゃんの件と反応は同じね。逃げ出す個体も数百は下らなくて、怪物達の指揮官も相当慌てていたわ。とりあえず入口広場がこの有様だし……現状、攻め込んでは来ないんじゃないかしら?」
とりあえず状況は振り出しに戻ったワケか。ただ怪我の功名、”穢れ”を恐れる異形の怪物達がヴェストラ市街地へとなだれ込んで来る事は……今のところない筈だ。
「状況は最低最悪ですが……幸か不幸か時間は稼げています。今の内に対策を練りましょうか」
ヒルドの提案に、再びアイリちゃんが小さく手を挙げた。
「あのぉ……私が竜化してやっつけちゃう……というのはダメでしょうか?」
忘れてた……その手があったか。
「アイリちゃん、敵はあの数だよ? 一気に叩けるの?」
「えっと、竜化して本気でブレスを吐けば、多分……」
マジかよ、スゲーなドラゴン!? しかし活路を見いだして興奮する俺をヒルドが制した。
「太郎、気持ちはわかりますが……それは最終手段にしましょう。トビラ山の騒ぎでいなくなった筈の黒竜が再び現れたとなると、色々と都合が悪い気がします。連れて来ておいてなんですが、私個人としてはあまりアイリを戦わせたくありません。できる限り彼女には、普通の女の子として生活して欲しいのです」
「ああ、そっか……そうだな。いや、俺が軽率だったよ。これはもうあれかな? 広場のオッサン達と共謀して、全員で身体にウ○コ塗りつけて戦うしかないか……」
そうやって俺達が対策を考えていた時である。後ろでタバコを咥え、煙をくゆらせていた大家さんが妙な事を言い出したのだ。
「おい、そういやよ……レアとミストはウ○コ付きパンツを”増幅器”とやらに入れたんだろ? つーとアレだ、捻り出したウ○コは何処いったんだ……? アイツらぜってーウ○コ自体も入れてるハズだろ? 俺なら百パーぶち込むぜ」
……? この人は何を言ってるんだ?
「いやだな大家さん、ウ○コはパンツに包まれて飛んできたじゃないっすか。お陰でその辺一帯クソまみれなワケで……」
「あ? なに言ってんだオメー、クソがあんな少量なワケねーだろうが。勉強不足だぞオラ!」
何の勉強だよ!? しかし少し気になり、周囲へ無数に転がるウ○コ入りパンツをしゃがみ込んで注視してみた……うーむ、言われてみると確かに”量が少ない”気がしないでもない。
レアがよくウチのトイレで”大”をして流さずに立ち去ることがあるが……日頃、俺の家計簿を炎上させるレベルでモリモリ食べるアイツのウ○コが……こんなに小さかった試しはない。つーか流せよ。
「やだなあ大家さん、妙なフラグ立てないでくださいよ……」
そう言いながら俺が立ち上がった瞬間だった。
──スパァァァン!!
殴られた様な衝撃。顔面に勢い良く”何か”が直撃した俺は、汚れたパンツの山へ向かって吹き飛んだ。
「た、太郎ちゃん!?」
「痛てて。な、何が起きたんだ……?」
顔を押さえて立ち上がると……手には固めの泥の様な感触が。起き上がった俺を見てアイリちゃんが悲鳴をあげる。
「い、いやあぁぁぁ──!?」
目を開ける事ができず、パーカーの袖で顔を拭うと……そこには再び”あの茶色い染み”が付いていた。呆然と立ち尽くしていると、顔面へ更にもう一発。
──スパァァァン!
「おふうっ!?」
再度転倒する。今までも大概臭かったが、それを遙かに上回る香しい香り。鈍い俺でも二度目になると流石に理解した。これは……ウ○コだ。しかもパンツなどに包まれていないダイレクトなウ○コ。
「う、うわあぁぁぁぁ!?」
これはまずい。先程のパンツ事件で学習した俺達は、慌ててその場を離れる。
──スパァァァン!
今度は先程まで立っていた背後の城壁へとソレが炸裂した。
──スパァァァン!
バッティングセンターのピッチングマシンから放たれるボールの如く、次々と城壁に叩きつけられる茶色い物体。パンツに包まれていた”ブツ”とは硬さも質量も段違いだ。それにヤバい、間違いなくボールにして百五十キロは出てる。
──スパァァァン! ──スパァァァン! ──スパァァァン!
徐々に茶色に染まりゆく石壁を呆然と眺める俺達、それをあざ笑うかの様にどんどんその射出間隔は短くなってゆく……背後からは女性陣の悲鳴が。流石に慌てたのか大家さんが大声をあげた!
「おい、ヤベーぞこれ! 太郎オメー、ウ○コマンだろ!? どーにかしろや! うおっ!? えのきだ! えのきとコーンが混ざってやがる! こいつぁハンバーグ定食だな!?」
意味がわからない。この状況、俺に一体どうしろと……?
「いやいやいや無理ですから! 何訳のわからないこと言ってんすか!? つーか名前変わってただのウ○コ男になってるし!」
俺に浄化の魔法を掛けつつ、街の奥の見張り塔を注視していたアイリスさんが叫ぶ。
「やだ! 見張り塔のレアちゃん達いなくなってる! どこ行ったの!? 何か魔導器が真っ赤になってブルブル振動してるんですけど──!?」
レアとミストのアホ! アイツら手に負えなくなって逃げやがったな!? 遠く俺の目では見えはしないが、塔の方に視線をやると……そこには大量の飛沫が飛び散っているのだろう、汚い虹が綺麗なアーチを描いていた。
再度広場を見渡すと、そこは茶色い地獄絵図。空を舞う茶色い飛沫を目にした住民達が悲鳴を上げつつ、必死に逃げ惑っている……もはや俺達には呆然と眺める事しか出来ない。
しかし、突然静寂が訪れる……そう、急にウ○コの射出が終わったのだ。
「お、終わった……のか?」
口ではそう言いつつも、心を支配する”不安”。いや、このまま何事も起きずに終わる筈がない……
──ズドオォォォォォォォォォォン!!
次の瞬間、つかの間の静寂を破って周囲に鳴り響く轟音。その音はレア達のいた見張り塔から発せられ、遠く離れた正門広場へと容易に到達する。
──ジーザス! その直後、俺達は『真の悪夢』を目の当たりとする事となったのだった。




