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干天の慈雨

こんにちは!ワセリン太郎です!頑張って続きを投稿していきたいと思います!

 (かわや)で用を足し、再び元領主邸の見張り塔へと登ってきたレアとミストは……魔導増幅器の射出側リングの向きを調整していた。


 余ったロープでリングの三ケ所を見張り台へと結び付け、リングの射出側をヴェストラの正門があるメインストリートの方角へと固定する。


 その射線上には市場のある大通り、更にその先には扉の破壊された高い城壁が見えた。


 ロープに縛られ宙に浮いた魔動器をグッグッと手で引っ張り、ぐらつきがない事を確認したレアが満足気に額の汗を拭う。


「よし!どうもブラブラしていて安定感に欠けていたが、これなら大丈夫だな!後は……とりあえず説明書を読むか!」


 取扱要領が記されたメモ用紙を地面へと置き、それを頭をくっつけて読むアホの子二人。


「なになに?増幅ダイヤルを三分の一以上回す場合は……先ず射出する方向に人や壊れそうな物がないかを確認する?よし、これはダイヤルを最大にしたので関係ないな!」


 ミストもウンウンと頷いた。増幅ダイヤルのメモリは最大で射出方向には市街地……問題大ありである。


「そして次は……射出側リングへ神気を必要量注入、本製品が赤く光るまでが目安です。過剰供給は暴走する恐れがあるので危険です。う~ん、一応光るには光っているが……少し頼りないな。もうちょっとだけ注入しておくか!燃料は多い方がいいと思うぞ!」


「うん、そだな!」


 レアとミストは説明書に視線を落としたまま、既に紅い光を放つリングへ向けて神気を再充填し始めた。

 光量を増し、炎を纏った様にに揺らめき出すリング……明らかに過剰供給であるが、当然二人はそれに気付いていない。


「あっ!姉さん、他にも何か書いてある!えっと、なになに?本製品は複数の素材を投入した場合、その投入順に関わらず……重量の軽い素材から順番に複製されて射出されます?複製って増えるんだっけ?大きくなる?う~ん、難しくて良くわかんないや。わかる?」


「私にもよくわからないな!こういうのはきっと研究者向けの説明書(せつめいが)きなのだ、つまりこれを使用する者には関係ないという事になると思います!」


「そっか~。何か納得した!」


 良くわからないまま納得した様に頷くレアとミスト。


「あとは稼働ダイヤルをオンの方向へ回すだけ……か。よし、準備完了だな!これは……ワクワクするぞ!」


「おっけ~姉さん!んじゃアタシは鐘鳴らしてオッチャン達に合図出すぜ?」


「うむ!頼んだぞミスト!」


 立ち上がり、頭上を見上げたミストは鐘からぶら下がる綱を掴んで勢い良く振り始める。


 カーンカーンカーン――!カーンカーンカーン――!カーンカーンカーン――!カーンカーンカーン――!カーンカーンカーン――!カーンカーンカーン――!


「うわ、スゲーうるさいなこれ!」


 鳴らしながら、しかめっ面で耳を塞ぐアホの子二人。その音は大きく、外周を高い城壁に囲まれたヴェストラ市街地へと十分に鳴り響いた。


 そして合図を終えた二人は射出用リングの前へと立ち、お互いの顔を見て頷くと……稼働ダイヤルへと手を掛ける。そしてそれを躊躇なくオンにしたのだった。


 ヴヴヴヴヴヴヴヴヴ……神気を過剰供給された為か、大きく振動を開始する射出リング。そして暫く待つと……リングの内側に虹色の膜が張った。それは大きなシャボン玉の様に見える。


「あれ……?コレほんとに大丈夫なん?何かえらく振動してるんだけど?」


「うむ、多分大丈夫だぞ!説明書をちゃんと読んで起動したから何の問題もないはずだ!」


「そっか~。なら安心だな!」


 そうこうしていると……リングの振動は収まった。そして……


 パシュッ――!


 突然リングの中から何か白い物が一つだけ射出された。それは空気抵抗を受けつつも、非常に強い勢いをもって正門付近の広場まで飛んで行く。


「「――!?」」


 急な射出音に驚くアンポンタンズ。しかしその後、リングはうんともすんとも言わない。


「今の何……?何かよくわからないけど……白い布みたいなのが飛んで行かなかった??」


「うん、でも突然だったから私も良く見てなかったぞ?」


 再びパシュッ――!射出音。頭は弱いが身体能力の高い二人には……今回はソレが何なのかが見て取れたようだ。


「姉さん今のって……」


「ミストのパンツだったな!ピンク色だった!」


「でもさ、パンツって布だろ?あんなに勢い良く飛ぶもんなの……?」


「うむ、私の位置からは見えたのだが……パンツの内側に結構大物(おおもの)のウ〇コが包まれていたようだった!それで慣性を得て飛んで行ったのだな!良いかミスト、ああいうのを”質量保存の法則”というのだぞ!宇宙の法則なのだ!」


 訳がわからない……


「マジか!流石姉さんは物知りさんだな!」


「私は理科だけは得意なのだ!エリートだからな!」


 再びパシュッ――!射出音。


「あっ!今のレア姉さんのパンツだった!白……いや、何か茶色くなってたけど。それより何か臭う!」


「うむ!今のは宇宙ひも理論だったな!働かずに自宅でゴロゴロしている旦那に関係しているらしいぞ!今日も勉強になったな!」


 パシュッ――!……パシュッ――!レアが訳の分からない事を言っている間にどんどん感覚が狭まり、交互に撃ち出される二人のウ〇コ付パンツ。次々に増産されるそれは正門前広場へと飛んで行き、そこへ集まる人々の頭上へと降り注いでゆく。そして更に射出間隔は狭くなっていき……


 パシュッ――!パシュッ――!パシュッ――!パッ!パッ!パッ!パッ!パパパパパパパパパパパパパパ!!


「うわ!すげえ!何だこれ!?」


「な、何かヤバいなコレ!?と、止まらないぞ!?」


 怒り狂った機銃の様に撃ち出されるウ〇コの付いたパンツ!!バババババババババババババ!!それは空中に描かれた一本のラインとなり、何千、何万、何十万と街中へ降り注いだ――!!


 慌てて稼働ダイヤルをオフにするアホの子二人!しかし……バババババババババババババ!!暴走した魔導具は止まらない!!ミストが叫ぶ!


「ヤバっ!何か広場がパンツの山になってる!!みんなスゲー慌ててるけど……人間ってパンツで死んだりしないよな!?」


 バババババババババババババ!!降り止まぬウ〇コパンツの雨に逃げ惑う人々……阿鼻叫喚の正門前広場。それを見て混乱したレアが訳のわからない事を叫ぶ!


「パ、パンツは命までは取らないと思うぞ!パンツはポンポン冷やさないように守ってくれる優しさの結晶なのだ!世にはパンツ愛好家までいると聞く!太郎もパンツが好きだと言っていたし多分だいじょうぶです!!」


「パ、パンツ優しくてよかった!!」


 バババババババババババババ!!バッ!……バッ!……バッ!……バッ!……パシュッ――!……パシュッ――!……パシュッ――!


 突然射出間隔が大きくなる……そろそろ撃ち止めの様だ。二人が落ち着きを取り戻して広場を見ると……そこにはパンツの海で泳ぎ、助けを求める人々の姿が。


「ミ、ミスト!これは危なかったな!」


「姉さん、とりあえずパンツ出るの止まったし……もう大丈夫……だよな?」


「す、すごかったな――!何か良くわからないけどすごかった!」


 見張り台から上半身を乗り出し、広場の惨状を食い入る様に見つめるアホの子二人。しかし彼女達は気付いていない、再び背後で魔道具が紅く燃え上がっている事に……


 本当の地獄はこれからだったのだ。

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