ビニール傘と金属バット【外伝】~とある天使の休日~vol.11
こんにちは!ワセリン太郎です!ちょっと長くなりすぎてしまった温泉番外編、今回でようやく終了です!ちなみに今回出て来た”お店”は僕の”想像の産物”ですので、実在の店舗や団体などとは一切関係ありません!あしからず!次回から再び本編に戻りたいと思います!
「ゔう……あ、足が痺れた……あ、いえ、何でもないですごめんなさい……」
太郎は固い床の上に正座させられていた。彼が隣を見ると、哀れカチンコチンに氷漬けにされた神様と白目を剥いて転がる大家の姿が。答弁が許されたのは太郎のみ……絶対絶命の状況である。
目の前の回転ベッドに脚を組んで腰かける花魁姿のフリッグ様が太郎に声を掛けた。その瞳は鋭い光を宿し、小心者の太郎を圧倒するには過剰とも言える迫力を備えている。
「で……高級店とやらは十分に堪能できたかい?小僧」
「あっ……ハイ……それはもう十分に……」
「目を逸らしてんじゃないよ!こっち向きな!何か言いたい事があるなら言ってみな!」
「あっ……いえ……その……特には……」
「んん?何だって?声が小さいよ!!」
「いえ……お、お綺麗な脚ですね……じゃなかった、本当に……申し訳ございませんでした……」
太郎の発言を聞き逃さなかったヒルドが呆れた様な顔をし、おっぱいを”無い”と判定されて怒り狂うエイルも冷たい視線を彼に送って来る。フウーッと煙管から煙を吐き出し、脚を組みなおしたフリッグ様は続けて太郎へと問うた。
「で、どいつだい?今回こんな店に遊びに行こうって言いだしたのは。ジジイかその転がってる筋肉ダルマか……それとも太郎、お前かい?」
太郎は焦った。
(ま、まずい……実際最初に企画したのは神様と大家さんなんだけど……ここで俺が”一抜けた”しちゃうと……それはそれで社会的に死ぬ気が……この状況は大家さんのせいにしとくのがベストなんだろうけど……後で物理的に何されるかわかったもんじゃないし……ヤバい、困ったぞ……)
ゆっくりと助けを求めるように氷漬けにされた神様の方を見る太郎。
(意識があるのかどうかはわからないが、何故だか神様と目が合った様な気がするぞ……?これ絶対、神様のせいにしたら後でヤバイパターンじゃん……?どうすんの俺……!?)
真剣に悩む太郎の隣で突然意識を取り戻し、ハネ起きる大家。
「いくぞオラ!ばっちこい、おっぱい!!かかってこいおっぱい!!オラァッ!!」
「やかましい!お前はそのまま寝てな!!」
フリッグ様が手をかざすとベッドの隣にあった丸椅子が大家の顔面へと勢い良く飛んで行き激突、再び巨漢は白目を剥いて沈黙した。そのまま彼女は身を乗り出し、床で正座する太郎へと顔を近付ける。あの神様を氷漬けにする様な相手だ、生きた心地が全くせずにビビる太郎。
「さて太郎や、そんなに返答するのに時間が必要なもんかね……?んんっ?」
「あっ……えっと……ハイ……僕です……えっ……!?じゃなかった……アッ――!ち、違うんです……あ、いや……違わないというか……何というか」
汚いものを見るような目で太郎を見下ろすヒルドと憤慨するエイル。
「太郎……まさか貴方がそのような卑猥な計画を立案するとは……不潔です」
「太郎さん……私はですね……あなたの様ないやらしい人間に揉ませるおっぱいなど持ち合わせていないのですよ!!」
「い、いやエイルさん……あなた”おっぱい”は元々無いというか……あっ、ごめんなさい……」
「な!なんだとぅ!?い、いい度胸だ!!決着をつけてやります!今すぐ表へ出ろ!!」
太郎に飛び掛かり、胸倉を掴んで揺するエイルをフリッグ様が手で制止する。
「つまり……太郎や、お前が主犯格というワケなんだね?」
「えっと……はい、そうです」
太郎はこの時考え、そして急に腹を括ったのである。それが大きな間違いになるとも知らずに。
(今後の事を考えると神様のせいにすることは得策ではないし、大家のせいにしても話が余計ややこしくなるだけだろう。ここは一つ、俺が大人になって全部被れば全て丸く収まるじゃぁないか!それにフリッグ様だって俺達なんかより遥かに永い年月を生きて来たお方だ。俺が他の二人を庇ってる事ぐらいきっとお見通しになられて許してくれるに違いない……見てて下さい神様!俺、今から漢を見せてやりますよ!!)
そう心に決めた太郎は、男らしく爽やかな笑顔で氷漬けにされた神様の顔を見た。何故だか神様が”太郎よ!待て!早まるな!!”と言っている様な気もしたが……覚悟を決めた彼は居住まいを正してフリッグ様へと向き直る。
「フリッグ様、正直に言います。俺です、俺が主犯格です。もう隠し立て致しません。俺はおっぱいを……どうしてもおっぱいを欲望の赴くままに揉みしだきたかったんです!!」
キリィッ!!とした顔で言い放った太郎を暫く見つめ……再び煙管から吸い込んだ紫煙をスゥーッと吐き出したフリッグ様は、今まで鋭かった表情を緩めて満足したように優しく頷いた。それは太郎を安心させるには十分過ぎるものであり、彼の肩から緊張の強張りを一気に奪い去った。
(よ、良かった!何か納得してくれたみたいだし、これで許してもらえるかも!?)
煙管の灰を煙草盆の上の灰落としへとそっと落としたフリッグ様はしばらく何かを考え……笑顔で太郎へと語りかける。
「太郎や、正直に言えたじゃないか、アタシゃ素直な子は好きだよ。さぁて、良い子には”御褒美”をあげようかねぇ」
「ご、御褒美まで……い、頂けるのですか!?」
「そりゃそうさね……」
大きくため息をついたヒルドが騒ぐエイルを連れてソッと部屋から出て行く。それを見送ったフリッグ様は再び太郎に顔を近付けニヤリと笑うと……瞳にゾクリとするような光を灯し、大きく舌なめずりをした。この時点で太郎はようやく”これから己に降りかかる災難”に気が付いたのだ。
「えっと……ど、どういった……御褒美……なのでしょうか……?」
「そうだねぇ……さあ、どれが”欲しい”んだい?言ってみな?」
突然フリッグ様の背後の空間が歪み……そこから”長くて太い棒状のモノ”が現れる――!その数、数十本。どうやら全ての”棒”の電源はオンとなっている様であり、ヴヴィィィィィンと激しい音をさせつつ先端が暴れ回っていた。震え上がる太郎。
「――!?え、えっと……フ、フリッグ様……?そ、それは……多分なんですが……女性に使うモノかと……用途を間違うと……その……あまり宜しくないかと思われますが……!?」
手近な一本を手に掴み、妖しげな表情でソレを舐め上げるフリッグ様。
「おや、そうかい?それは本当なのか……試してみないとねぇ……」
「いや、いやいやいやいやいやいやいや――!?」
勢い良く立ち上がって部屋の出口へと逃げ出す太郎――!!足が痺れていた筈だったが”大切なもの”を守る為なのか全く気にもならなかった。しかしそれもそのはず……何とフリッグ様の魔力で空中に浮かされていたのだ。
そのまま身体を宙に固定され……彼女がパチン!と指を鳴らすと太郎のズボンとパンツがはじけ飛び、フリ〇ンでお尻を突き出した形にされる。顔面蒼白の太郎の背後から近付く”ヴィィィィィンという音”と”ドS女”の気配……。
「さぁて……時間はたぁっぷりあるんだ。したかったんだろ?”初体験”。大丈夫、アタシがしっかり”突っ込んでやる”から心配いらないよ!さあイクよ!覚悟しな!!」
「や、やめて!!ちょっ!?あ、あ、あ、あ、あ、うわああああっ!?……アッ!?アッーーーーーー!!!」
哀れ太郎、こうしてピンク街の夜は更けていったのであった……。
「「たーんたーんたーぬーきーのきー〇たーまは~♪かーぜもないのーにぶーらーぶらー♪そーれをみーていたこーだぬきもー♪」」
温泉街から神丘市への帰路につき、高速道路を走る大家の自家用車にレアとミストの鼻歌が響く。当然、昨夜の一件がバレているので他の女性陣は一切口を開かない。運転する大家が助手席でグッタリと項垂れる太郎に言った。
「おう太郎、俺ぁ昨日から記憶が無くってよぉ……ちぃと呑み過ぎたんかも知れねえな。オメー何してたか覚えてねえか?」
「うう……覚えてません。思い出したくありません、覚えてないです!!絶対に覚えてないです!!……誰か俺の記憶消して!!」
「へっ、そうかよ!オメーもかなり呑んだみてーだな?朝起きたら神様も帰っちまったみてーだったしな!」
「……そうっスね」
後ろの席からレアが楽し気に太郎へ声を掛けてきた。
「太郎!温泉楽しかったな!フリッグばあちゃんに小遣いをいっぱい貰ったのでお菓子もいっぱい食べられたのだ!ミストと全部食べたので太郎達の分は残って無いのだがな!ははっ残念だったな!」
「……そうっスか。良かったっスね……」
「うむ!旅行は良いものだ!またみんなで来ような!」
「そうっスね……ううっ……車内の空気が……重い……」
こうして彼らの初めての温泉旅行は幕を閉じたのだった。
かにかまぼこおいしい!




