ビニール傘と金属バット【外伝】~とある天使の休日~vol.9
僕の書く小説を読んで下さる奇特な皆様方、新年明けましておめでとうございます。昨年の年末は
私事で忙しく、なかなか更新できずに申し訳ございませんでした。年明けてようやく時間が取れ、また駄文をまき散らせそうな状況になって参りましたのでボチボチと頑張ろうかと思います!
それはそうと久々に投稿しようと「レアさん奇行」のページを開いてみて驚愕しました。何だかよくわかりませんが……更新していないにも関わらずやたらとブックマークして下さっている方が増えているではありませんか!?その上なんとレビューまで書いて下さる方までいらっしゃる!!(本当に素敵なレビュー、ありがとうございました!嬉しさで涙が出ました)
しかし感動と同時に「僕の下手で頭のおかしな小説をこんなに沢山の方々の目に触れさせて大丈夫なんだろうか??」と少し恐怖も感じます。でも、読んで笑って下さる方が一人でもいるのなら頑張ってボチボチと更新して行こうと最初に決めて書き出しましたので、また初心に戻って淡々とコソコソと書かせて頂こうと思っております。
あと最初に書こうとしていた事を忘れておりました。ハッピーニューイヤーなのでみんな幸せになぁれ!!
「ほっほっほっ。どれ、お邪魔させて頂くとしようかのぅ」
当然この扉の先には間違いなく”あられもない”桃源郷が待ち構えている。廊下の一番奥に構える重く豪奢な扉を品の無い笑みを浮かべつつゆっくりと開く神様。
先ず目に飛び込んで来たのは扉の裏側に位置する正方形の狭い靴置き場だった。
(うむ……?室内でご対面ならここでお姉ちゃんが三つ指ついてお出迎えしてくれるはずなんじゃが……?おっ、部屋の趣向は”和風”という訳か。妖しさ満点でこれはこれで悪くないのぅ)
靴置き場の先に見えるのはこれまたゴージャスな屏風の目隠しのみ。しかし室内の怪しげな色使いがされた和風な佇まいに期待感を高まらせた神はその違和感すら好意的に受け止め……自分に都合の良い妄想を抱きながら革靴を脱いだ。その瞬間にハッ――!と気が付く。
(そうか――!もしかしてこれはアレじゃな!?”即!”そう!出会って即!……というヤツじゃ)
エナメルに輝く美しい革靴を靴箱に仕舞ってニヤリと笑い、身だしなみを整えてから自慢の白鬚を撫でつけながら紳士的な態度で先へと歩みを進める神様。こんな店に来ている時点で紳士的もクソもあったものではないのだが……
「こんばんは。お嬢さん、お邪魔するよ……」
目隠しの屏風の先には煌々と輝くピンクの灯りに照らし出された丸いターンテーブルの様なベッドが見え、その上にこれまた豪華な花魁の衣装に身を包んだ艶やかな女性の姿が目に飛び込む。彼女は此方へと背を向けて煙管から紫煙を立ち昇らせていた。
その仕草は日頃オッパブに通い詰めて数多のお姉さん達を見てきた神すらをも唸らせる程に艶があり、彼の興奮を誘ったのである。合格!
「ほっほっ、これはこれは!お顔を見ずとも伝わるこの色香!どうやら今宵は最高の夜になりそうじゃ!(ノーチェンジ!!)」
興奮する老人の言動にクスリと笑い、背を向け顔を見せぬまま艶っぽく会釈する女性。
「お嬢さん、そろそろワシにその可愛いお顔を見せておくれ」
彼女は少し照れた様な仕草で頷き、帯に挿してあった上品な扇子を広げて口元を隠すと……ゆっくりと神の方へと振り向いた。
(よいのぅ……よいのぅ……初心なその仕草もまたよいのぅ……)
しかし向き直るその視線は研ぎ澄まされた名刀の様に鋭く、それは神を戦慄させた――!呆然として目を見開く神様。
「なっ――!?バ、ババア――!?何故じゃ!?何故お主がここにおる!?」
ゆっくりと口元を隠した扇子を下げながら「ババア」と呼ばれた女性はニヤリと笑った……当然説明するまでも無いが彼女は天界の主神である神様の妻であり、最高位の女神でもあらせられるフリッグ様その人である。見た目の歳の頃は三十代前半といった所だろうか?美しい顔立ちではあるが、威厳に満ちたその眼光は研ぎ澄まされた日本刀のそれを彷彿とさせるものがあった。
「おや、アンタ。可愛い可愛い自分の妻にババアとはよくぞ言ってくれたもんさね。それより一体こんな所で”ナニ”をするつもりだったんだい?さあ!言ってみな!」
「う、うう……」
滝の様な汗を額から噴出させる神様。言い訳の出来る状況では無い。神は後ろ手にした手に小さな杖を顕現させ、女神様に気取られない様に小さく素早く呪文を唱え始めた。記憶忘却の魔法だ……しかしそれが発動する事は無かった。
「――!?」しまった!神様の表情が曇る。それを見てニヤリと笑う女神様。先手を打って既に対策済みだった様だ。
「おや、暫く会わない内に忘れちまったのかい?アタシの方がアンタより魔法の扱いが巧いって事も。アンタ達は店に入った瞬間にアタシの仕込んだ魔法陣を踏んじまってたのさ」
「ぐ、ぐぬぬ……」
「さあジジイ!観念おしっ!!」
「チィッ――!おのれババア!こうなったら最後の手段じゃぁ!!」
懐に手を入れ強力な魔力が封入された小瓶を取り出し、床に叩きつける神様――!圧倒的魔力で魔法の上掛けをするつもりだ……しかしその呪文が最後まで唱えられる事はなく、鋭いフリッグ様の魔法発動の掛け声が一瞬先に轟いた。
「フン、遅いっ!!Absolute zero penalty(絶対零度の刑罰)――!!」
一瞬で凍てつく氷塊が神様の足元を絡め捕り、パキパキと音を立ててその身体を包み込む――!
そして暫く経ち、強烈なブリザードが舞い散っていた室内に気温が戻って来ると……哀れ、部屋の中央には巨大な氷柱の中で時が停まった様に氷漬けにされた悲惨な表情の神様の姿だけが残されていた。
老神の巨大な氷漬けのモニュメントを見つつ満足気に笑ったフリッグ様は、憎たらし気に氷柱に一発蹴りを入れると部屋の奥にあったシャワールームに向って声を掛ける。
「アリシアや、もういいよ出ておいで。可哀想にアイリは怖かったろう?もう大丈夫さね、さあこっちへおいで」
シャワールームの扉が開いて先程の猛吹雪の余りの寒さにガタガタと震えながら出て来るアリシア、その後ろからは涙目のアイリの姿も見える。それを見たフリッグ様が短い呪文を唱えると……二人の身体に急速に体温が戻った。
アイリを優しく抱きしめ、愛おしそうに頭を撫でる彼女に氷柱を指差しながらアリシアが問うた。
「えっとあの……女神様……?神様……ホントに大丈夫……なんですか……?」
カチンコチンである。コクコクと頷きアリシアに同意するアイリ。しかしフリッグ様はニヤリと笑って言い放った。
「フン!このジジイがこの程度でどうにかなるもんかね!このまま暫く閉じ込めて心底冷え切らせて反省させてやろうじゃないか!」
「はぁ……まあ女神様がそう仰るのなら……」
頬に手を当てたまま困った様な顔で氷柱を見上げるアリシア。それを見て笑うフリッグ様は胸元に抱きしめたままのアイリの頭を撫でながら楽しそうに言った。
「クソジジイの始末はついた事だしアタシの仕事はこれまでさね。さぁて、残りのおバカ二人……太郎と大家だったかね?アレ達にどんな”天罰”が下る事やら……それでは私の可愛い娘達のお手並み拝見といこうかね」
太郎達の未来に救いは無い。
ちんちん!




