ビニール傘と金属バット【外伝】~とある天使の休日~vol.8
こんにちは!ワセリン太郎です!忙しくて更新遅くなってしまいました!ごめんなさい!しかし、行った事もない空想上のお店を書くというのは……本当に、本当に難しいですね!!!
下品な笑みを顔に浮かべた大家と太郎に向い、神様がゆっくりと口を開く。応じる二人。
「さて皆の衆、そろそろゆくか……聖域へ――!」
「おう!行こうぜ!俺達を聖域が待ってるぜ!」
「神様!俺、一生ついて行きます!」
こうして三人は「うひゃひゃひゃ」といやらしい笑い声と共にスキップをしながら”夜の繁華街”へと進軍を開始したのだった。
宿泊中の旅館からお目当ての歓楽街までは、歩いて十五分程度とそこそこの距離があるのだが……今の彼等にはその位の事は些末な問題でしかない。
夕闇の温泉街に気持ちの良い風が吹き抜け、彼らの頬を撫でて行く。しかしウキウキ気分で歩いているのには違いはないのだが、太郎には少しだけ気になることがあった。
彼は”その筋の専門用語”を頻繁に織り交ぜた会話をしながら先を歩く神様と大家の背中を追いつつ、その事を思い起こす。
それが何かと言うと、夕食の時の事であった。皆で旅館の広間に集まって豪華な料理を頂いたのだが、その際に女性陣が妙に静かだったのだ。
当然ながらレアとミストはいつも通りに大騒ぎしており、その事には何ら違和感は覚えない。それより気になったのが他のメンバーの行動だ。
普段であれば、料理を目の前に過剰に騒ぐレアやミストをヒルドが注意する姿が見られる筈なのだが、今日に限っては大声を出さない限りは野放しにされていた。
アリシアとエイルに関してももっとこうキャッキャウフフと会話が弾む筈であるが、何かよそよそしい雰囲気であったように感じられ、アイリに至っては何故か料理をジッと見つめたまま顔を上げずに終始無言で食事をとっていた……何かがいつもと違う。
後ろめたさも手伝ってか違和感が不安へと姿を変えてゆく……
暫く歩くと歓楽街のピンクのネオンが彼等を誘う。その妖しい輝きは太郎の脳裏から一瞬で”不安”を消し去った。
顔を見合わせてニヤリと笑う三人。太郎が時計を見ると”予約時刻”の三十分前であり暫くの余裕がある……路上に備え付けの灰皿を見つけた大家が煙草に火を点けながら彼に声を掛けた。
「まだ慌てんじゃねーぞ?俺達は”予約”してんだ。十五分前になったら行くべ、どーせ中でも待たされるんだからよ」
その隣でフフフと笑い、何処からか取り出したパイプにマッチで火を点けながら神様も言う。
「まあ三人同じ時刻に予約と言うてもな、結局は時間差でバラバラに通されるんじゃよ。それと太郎は”初回”じゃしのう、他の客もわんさか居る待合室に最後まで残されるのも辛かろう……そこでお主に”一番槍”の名誉を与えるとする」
「い……一番槍――!」
目を見開く太郎。それを見て笑う大家。
「ヘヘッ、ビビって槍がフニャフニャのチクワにならねーように祈っとくぜ」
「や、やめてくださいよ!」
そうして三人でワイワイと騒いでいると時間となった。店の前へと移動し、予約時に貰っていた整理券をボーイに渡すと待合室に通される。
待合室のソファーで再び紫煙をくゆらせる神と大家……その隣では太郎がガタガタと貧乏ゆすりを始めていた。
「やっべー!マジ緊張してきました!お、俺は一体……ど、どうすればいいんでしょうかね!?」
パイプをくわえたままニヤリと笑う神様。
「なーに心配はいらん!その為の特殊な銭湯じゃ。お主は最悪、ジッとしてお姉さんの言う事を聞いておればよいのじゃ」
「そ……そんなもんなんですかね!?」
神様は笑いつつ、太郎へ店の奥の方に見える扉を指さして見せた。
「そう、そんなもんなのじゃ。こういう店ではの、まず一人ずつ呼ばれて”あの扉”の前に行くじゃろ?それからボーイの”注意事項”を聞き、扉の向こう側で”お嬢さん”とご対面という流れじゃ。別の客に他のお嬢さんを見せない意味合いも含めて”一人ずつ呼ばれる”んじゃな。しかし大家よ、待合室に”ほかの客”が見当たらんのう……この店、本当に流行っとるのか?」
待合室に置かれているエロ本を見ていた大家も不思議そうに周囲を見回した。
「いや間違いはねえハズなんだけどよ、だが確かに神様の言う通り他の客がいねえな……まあアレじゃねーの?超高級店だし」
「そうじゃ、超高級店じゃったのう……まあ太郎も慣れぬ内は他の客がいると落ち着かぬじゃろうし、良かったとしようか!」
顔を見合わせてグヘへと笑う三人。そうこうしていると先程のボーイが待合室へと入って来た。
「大変お待たせいたしました。三名様、ご案内となります。どうぞ、あちらの扉までお越し下さい」
「は、はい――!お、お伺いします!!」
過度に緊張して立ち上がった太郎は、同じ側の手と脚を同時に出しながら指示された扉へと向かうが……ふと神様達の不思議そうな表情が気になり、歩みを止めた。
先程「時間差で順番にご案内」が一般的だと言われた事を彼は思い出す。しかし一瞬の沈黙の後、皆の「この店のルールなのかも知れないし、まあいいか」といった雰囲気に納得して扉の前へと進んだ。
ボーイが扉に手を掛け、彼等へと注意事項を伝えだす。太郎はふとボーイの表情が昼間会った時に比べて少し虚ろな様子に見える気がしたが……気のせいだろうと思い、真剣に彼の言葉へと耳を傾けたのだった。
「大変お待たせいたしました……それでは当店の”注意事項”をお伝え致します……え~、女性の嫌がる行為”だけ”はお控え下さい、以上でございます」
伝達される内容をしっかりと覚えようとしていた太郎は、理解に苦しみボーイへと聞き直す。
「えっと……それ”だけ”……ですか?」
「それ”だけ”でございます」
真顔で後ろを振り向く太郎。背後には下品な笑みを浮かべる二人の同行者、大家が大声で笑う。
「太郎よかったなオイ、それ”だけ”なんだとよ」
「……マジ……っスか」
虚ろな表情のボーイが扉を開く――!太郎には”未知の世界への扉”だ。そして彼は興奮を抑えきれずに開いた扉の奥を覗くが……その先の廊下には誰の姿も無かった。
「扉の先で女性とご対面」という話ではないのか?太郎が振り向くと、再び怪訝な表情をした神様と大家の姿があり……彼の不安を煽った。それに気が付いたのか、ボーイが付け加える。
「当店は個室内にて女性と”ご対面”して頂くシステムとなっております……指定させて頂いたお部屋にお入りください」
そう言うとボーイは、各々、丁寧に個室への案内を開始する。
神様は一番奥、大家は奥に長い廊下の中央辺り、太郎は一番手前の部屋であり、多少不審な点もいくつかあったが……いざ部屋の前まで来てみると、興奮した野郎共にとってそんな事は些細な事でしかない。
別れて部屋に入って行く同行者達と力強く頷き合い、太郎は大きく深呼吸すると……はやる気持ちを何とか落ち着かせ、ドアのノブに手を掛けたのだった。




