ビニール傘と金属バット【外伝】~とある天使の休日~vol.6
こんにちは!ワセリン太郎です!突然ですが、新しい小説を書き始めました!タイトルは「魔法の解けたその街で。」です!いつまで我慢が続くか心配ですが、ちょっと真面目なものも書いてみようと思いまして……。
当然、「レアさん奇行」の方をメインで更新していきますので、新しい小説の方は少しスローペースになる予定です。
ちなみにこの「魔法が解けたその街で。」には「レアさん奇行」を読んで下さっている読者様への”ちょっとした仕掛け”を随所に入れて行こうと考えておりますので、お時間がありましたら是非読んで頂けると僕は感激で”お漏らし”してしまうかも知れません。ぷっしゃー。
素っ裸のミストが目の前の光景を見て騒ぐ。
「うっひょー!これが温泉かぁー!何か風情があっていいじゃん!」
はしゃぐ彼女を見てフフフ、と笑ったヒルドが補足した。
「ミスト、確かに温泉ではありますが、こういった空を開放的な環境にしているものを”露天風呂”と言うのだそうですよ?」
「あ、ヒルド姉さんそれ聞いた事あるぜ!アレだろ?サスペンスドラマとかで出て来るやつ!んで、温泉来ると誰かが死ぬんだ!そんで最後に犯人をみんなで崖に追い詰めて……」
「こら、ミストちゃん!変な事言わないの~」
そう言いつつアリシアが妙な事を言い出したミストに後ろから抱き着いた……のだが、その圧倒的な胸の質量で温泉に突き飛ばされるミスト。ばしゃん!派手な水しぶきが上がった。
「ご、ごめんなさい!大丈夫!?」
「うう……何か背中にトランポリンみたいなのが……」
「こら、お前達。あまり騒がない様!それと先に身体を洗ってから入る事!」
「「はーい」」
注意するヒルドに従う彼女達。そして洗い場へと移動すると各々身体を洗い出す。
下を向き、髪を洗うミストへタイミングを見計らって冷水を掛けるレア。
「ぎゃっ!!つ、冷たい!!誰だよ今、水ブッかけたの!?てかどーせレア姉さんだろ!」
お返しにとレアに冷水を浴びせるミスト。騒ぐレア。
「ぎゃぁ!や、やめろミスト!い、今やったのは私じゃないぞ!犯人は……え、えっと……だ、誰にしようかな……」
「やっぱレア姉さんじゃねーか!」
「こら!お前達いい加減にしなさい!」
怒るヒルドにしぶしぶ従うアホの子二人。それを見てアイリがクスクスと笑う……しかし、そのアイリの胸部をまじまじと見つめる視線があった。そう、”怒れるまな板天使”エイルである。
(うっ……彼女の胸はまだ”私と大差ない”と侮っていましたが……いざ脱いでみると何ということでしょう……あ、あれでは私より二割増しではないですか……!しかも他の連中は普通乳のミストを覗いて全て巨乳。もしやアイリちゃんもいずれ……おのれ巨乳共!巨乳死すべし!ああ、ゆるすまじ巨乳!!)
身体を洗い終えた者から順に湯船へと浸かる。ふぅ~っと息を吐きながらお湯の中で伸びをしたアリシアがふと思い出したようにヒルドへと聞いた。
「ねえヒルドちゃん?そういえば太郎さんと大家さんは温泉に入っているのかしら?私が温泉に行こうと部屋から出た時に廊下で会ったのだけれど……入浴道具は持たずに”今から温泉に入りますよ”って言ってたの。部屋に着替えを取りに行く所だったのかなぁ?」
「さあ、しかし太郎はともかく、大家殿がいれば”大声のひとつ”でも聞こえてきそうなものだが……」
二人して柵の向こうの男湯の方に向く。いつもの大声は聞こえてこず、柵の向こうで子供達が騒ぐ声のみが響いて来た。アリシアの膝の前をレアが潜水しながら泳いで行く……それを見てため息をついてから捕まえるヒルド。
「もしかして……!アレだよアレ!姉さん、覗きだ!覗きってやつをしてるんじゃね……!?だから静かなんだよ!マンガで見た事あるし!!」
洗い場から戻り、湯船に身体を沈めながらミストが言う。彼女の後から来たエイルがそれに答えた。
「ミスト、流石にそれはないでしょう。少年漫画の読みすぎですよ……それに実際にはそういった事は難しいものです。施設の壁面を見て下さい、こちらから男湯が覗けますか?」
湯船から飛び出したミストは男湯との仕切り壁の方へと走って行き、ピョンピョンと飛び跳ねてはみるが……
「うん、無理だなこれ。それに壁も分厚そうだし、穴とかも開いてないし!」
「でしょう?ご都合主義で、温泉の仕切り壁が薄いような漫画の世界と現実は違うのですよ……」
そうやって皆が騒いでいると、洗い場から戻って来たばかりのアイリが不思議な事を言い出したのだ。
「あ……あの……太郎さんと大家さんなら……何か二人で駐車場の方へ走っていくのを……見ましたよ?声を掛けようとしたら……”ぺろぺろ”がどうとか騒ぎながら……私、声が小さいので気付いてもらえなくて……あ、あと”夜に神様が到着する前に急いで下見しないと”とかも言ってました……」
ふとエイルは思い出す、何か聞き覚えのある単語だ。
「はて……”ぺろぺろ”?そういえば車の中でも聞いたような……?待ってください!そう言えば彼らは休憩中の車内で……アイスクリームなど舐めてはいけない!俺達を”別のぺろぺろすべきもの”が待っている!とか騒いでましたね……あれって……」
湯船の中で泳ぎ、呆れたヒルドに捕獲されていたレアが横から口を出す。
「アイスより美味しいものがあるのか!?私もぺろぺろしたいぞ!」
今現在、会話に加わっている中でアホの子はレアとミストの二人のみ。話の流れで”ある事”に気が付いた残りのメンバーが呆れたような顔となる。……咳払いしたヒルドが呟く。
「なるほど、それで神様の到着待ち……という事ですか……」
アリシアが尋ねる。
「ヒルドちゃん、二人が神様を待つのはどういう理由なの?」
「アリシア、太郎達は”いつも金欠状態”なのです。それがそういった怪し気な店へ行くとなると……いえ、通常であれば、そもそも”行こう”という発想にすら至らないかと。それが意気揚々と……」
理解してアリシアも頷いた。
「ああ、なるほど!そこで……神様のご登場……って訳なのね?」
ヒルド、アリシア、エイルの三人がお互いの顔を見て頷き合う。
「彼等にはそろそろ……一度お灸を据えてあげなければなりませんね……」
そうして目付きの険しくなる”親愛なる姉達”の姿を見て震えるアイリであった。
「わ、私……もしかして余計な事言っちゃったの……かなぁ……?」
哀れ太郎達は……まだこの事を知らない。




