ビニール傘と金属バット【外伝】~とある天使の休日~vol.5
こんにちは!ワセリン太郎です!何と小説に”挿絵”なるものを入れられるらしい……という事を知った僕は、早速お絵かきを開始してみました!うん、五分であきらめました!残念賞!僕には絵心が全くなかったようです!どなたか絵に自信があり上手な方!大家さんを描いてみてください!別に他のキャラクターでもよいですけど、僕はあなたの心の風景の中の大家さんが見てみたいです!うん……却下?誰がそんなもの描くか?……だろうと思いました!!
「ゔぼええぇぇぇぇぇ……」
高速道路上のサービスエリアのトイレ内でレアの背中をさするアリシア。
「レアちゃん……大丈夫……?今からでもいいから酔い止めのお薬、飲みましょうね……?」
「ゔぼええぇぇぇぇぇ……」
レアが何故こんなにも悪酔いしているかというと……車に乗る前にアリシアが勧めた酔い止めの薬を「フッ、エリートの私が車酔いなどするはずがなかろう?」と拒否し、大量のポテチを食べつつ後部座席でスマホのゲームに興じていたのが原因だ。
おかげで太郎のスマホの画面はポテチの油で虹色に。
同じくスマホで遊んでいたはずのミストも心配そうにトイレへと入って来た。実際やっていた事は大差ないのだが、彼女はアリシアに言われるがまま酔い止め薬を飲んでいた為に全く問題が無かったのだ。やはり人の言う事は聞いておくものである。
「ちょ……レア姉さん、マジでゲロゲロしてっけど……大丈夫かよ……?」
「ふ、ふん!この程度大したことな――!ゔぼええぇぇぇぇぇ……」
「うう……何か見てたら……アタシも釣られて吐きそうになってきたぜ……」
釣られゲロをしてしまう前に慌ててトイレから逃げようとするミスト。申し訳なさそうにアリシアの顔を見ると、彼女は困ったような顔で笑いながら言った。
「もうちょっとで大丈夫になると思うの。ミストちゃん、お外で待っててね?」
「へーい」
ミストがトイレから出ようとすると、洗面台でタオルを濡らすアイリの姿が。
「あ、ミストさん。え、えっと……レアさんは……大丈夫でしょうか?」
「うーん、レア姉さんしばらくダメなんじゃね?アリシアさんが”食べたの全部出たら楽になる”って言ってたけどなー、あ、でもポテチすげー量食ってたし。アタシは言う事聞いて薬飲んでて助かったぜ……」
「そうですか……あ、私濡れタオル持って行ってきますね……」
「うん。アイリ、サンキューな!」
トイレの奥へと急ぐアイリを見送ったミストは外の駐車スペースへと出て大きく伸びをした。遠くの喫煙所には、休憩する太郎と大家の姿も見える。
「うーん、でもこれが高速道路ってヤツかー!ホントすげー道幅が広いんだなー?信号もないし。駐車場も広いしなー。え――!?ウソだろ!?お店まであるのか!?あ、中にヒルド姉さんいる……アタシも行こうっと」
そのまま土産物屋に吸い込まれて行くミスト。その姿を遠くから確認する目が四つ。
「大家さん……ミストのヤツ、ようやく店に入っていきましたよ……」
「ああ、やっとだな。これで”ようやくハナシができる”ぜ……アイツ確かクチの動きで言葉を読むんだよな……?」
「ええ、ついでに速記して記録しちゃいますからね……念には念を入れよ、です。あと、神様は後から魔法で現地へ直接来るそうで……今、話が出来ないのが残念ですけど。」
「乗車定員があっからなぁ…… とりあえず”夜のピンク街大作戦”の構想を練っとかねえとな。それと今夜の代金は神様が払ってくれる……それで”現場”の簡単な下調べが俺らの仕事だってよ?……あの人マジで神様だよな!!」
「マジっすか!?いやーホントいいんすかねぇ?こんな好待遇で……大家さん、俺、女の子の”おっぱい”とか触った事ありませんけど……本当に大丈夫なんスかね??」
両手をいやらしい形でワキワキさせて見せる太郎。
「おいおい太郎……オメー何言ってんのよ!?ピンク街だぜ?神丘市内と一緒にしてんじゃねーぞ!?”おっぱい”どころの騒ぎじゃねーっつーの!」
顔を見合わせてグヘヘ……と”下品”に笑う大家と太郎。
「マジっすか!!オラ……わくわくしてきましたわ!あ……でも大家さん、アリシアさん達に絶対にバレないように行動しないといけませんね……」
「ああ、同感だな。バレたらぜってー”ゴミ虫扱い”されるに決まってる。あ、ヤベぇ!店からヒルドが出て来たぞ!アイツもどんな特技を持ってっかわかったモンじゃねーからな……くわばらくわばら。太郎、またこのハナシは後で、だ」
「うっす……」
二人でニヤリと笑い、缶コーヒーの残りをグイッと飲み干すと……彼等は車へと戻って行った。そうこうしているとトイレから随分とスッキリした顔のレアが現れる。後ろにはアリシアとアイリの姿も見えた。
「うう……車酔い、侮りがたし……まさかあそこまで気持ち悪いとは……」
「はい、今度はちゃーんと言う事聞きましょうね~?」
アリシアから手渡された液状の酔い止め薬をグッと飲み込むレア。
「おいしくない……」
「お薬だから……ね?」
「あ、アリシアさん……ヒルドさんが呼んでます……」
アイリが指さす先には手を上げて”こちらへ来い”と呼ぶヒルドの姿があり、その隣ではミストがソフトクリームをペロペロと舐めているのが見える。
どうやら皆の分のソフトクリームを買うようであり、それを見たレアが急に元気になって走り出した。車内からそんな彼女達を見ている大家と太郎。太郎がボソっと言う。
「あ、ソフトクリームかぁ……何か美味そうっすね。俺、買ってきましょうか?」
運転用のグラサンをかけつつ大家が答えた。
「おいおい太郎……オメーは何もわかっちゃいねぇ……オメーはこんな所まで”ソフトクリーム”を舐めに来たって言うのかよ……?そうじゃねぇ、違うだろ!?俺達には……他にもっと”ぺろぺろ”するべきものがある……ハズだぜ……?」
――!息を飲む太郎。
「大家さん許して下さい……俺が間違ってました。そうだ……そうっすよね!俺達を……”別のぺろぺろすべきもの”が待ってるんですよね!」
再び顔を見合わせてグヘヘ……と”下品”に笑う大家と太郎。それから暫くして女性陣が車内に戻ってくると、大家の自家用車は目的地のピンク街……ではなく温泉街へと向けて再び走り出したのだった。
しかしこの時の大家と太郎は”ある事”をすっかり忘れていた。そう、初めての長距離ドライブで疲れ、うつらうつらと半分居眠りをしていたエイルが”ずっと最後部座席に転がっていた”事を。
エイルはメガネを外し、眠い目をこすりながら先程の二人の会話を思い出す。
「うん……?違うものを……”ぺろぺろ”する……?一体何の事でしょうか……?」
大家と太郎と神様、彼等の行く先に、暗雲が立ち込めようとしていた。
うんこちんちん!




