トイレの紙さま。
こんにちは! ワセリン太郎です!
昨日、”お叱りを受けないか?”とヒヤヒヤしながらウンコネタを投下したのですが……たった一話しか投稿しないにも関わらず、レアさん奇行が始まって以来の最大のPVを叩き出す!という事案が発生してしまいました。
僕はこれに一体どういった反応をすれば良いのか皆目見当もつきません。やはり”皆様ウンコが大好き”と受け取るべきなのでしょうか? 何かウンコ専門の小説家になれそうな気がしてきました! とりあえず今現在の話の流れ上、仕方がありませんので、お食事中の方はしっかりとご飯を咀嚼しながら読んでくださいね! うんこちんちん!
聖剣様を両手で空高く掲げたまま、レアがゆっくりとこちらへ振り向く。彼女のツナギのお尻部分は……その……盛大に茶色に染まっていた。
「太郎……う、うんこ出ちゃった……」
「あ、ああ……で、出ちゃったな……」
辺りをほんのりと包む、ほのかな異臭。
異形の怪物達は酷く錯乱したまま河川敷公園を走り回り、お互い衝突したりし始めている。理解が追いつかない。一体何なんだよ、この状況は。
(ヤツ等に何が起きたんだ?? でも、何かが引き金になったのは間違いない)
そう考えていると、レアが振りかざしていたバットをゆらりと下ろし……俺の方へ向かってきた。
おい何!? アイツ何のつもりだ!?
「ちょ――!? レア、お前、こ、こっち来んなよ!!」
涙目でジワリ。距離を詰めて来るレア。
「太郎……ゔんこ漏らしちゃった!」
「わ、わかった! わかったから!!」
俺の背後にいたはずの大家やアリシアさん達の気配が、ソッと遠のくのを感じた直後……
「うわあぁぁああ!! ゔんこ漏らしちゃったぁぁぁぁあ――!!」
何故だか、泣きながら俺の方へと駆け寄るレア。
マジで勘弁してくれ!!
「う、うっわぁぁぁい!? こっち来んなあぁぁぁぁぁ!!」
冗談! これ以上、一張羅をウンコまみれにされてたまるか! 俺は土手を駆け下り、ビニール傘で敵を力任せになぎ倒しながら、こちらへ退避途中の神様達の方へと走り出す。あれ? 俺ってこんなに強かったっけ!?
此方に気付いた様子のミストが、ぴょんぴょんと飛び跳ね手を振りながら、大声を上げるのが目に入った。
敵の包囲が解けたからか、彼女の表情は明るい。だが俺はそれに構うどころではなかった、何せ後ろから”ウ◯ンコ”が全力てー追いかけて来ているのである。
「おーい太郎、一体何やったんだよ? 敵が急に逃げ回りだしたんだけど! あっ、レア姉さんだ! 何かさっき、メッチャうんこ出まくってたらしいけど、腹はもう治ったの?」
「逃ぃげるな太郎ぉぉぉお!!」
全力で逃げるわ。
「ミストぉぉぉ助けてくれよぉ! つーかレア、何でこっち来るんだよ!? アッチ行け!!」
すぐ背後から、レアの喚く声。
ジーザス!! 距離が詰まって来ている――!?
「ミズドぉぉぉぉ! ゔんこ出ちゃったぁぁぁぁ!」
ポカンとした表情で、俺とレアを交互に見つめるミスト。
そうして、必死に逃げる俺が彼女の脇をすり抜けようとした瞬間――!!
このアホの子二号、とんでもなく余計な事をしてくれたのだった。
突然、ババン! と俺の前に立ちふさがるミスト。
「二人とも何やってんだよ! ちょっと止まれよなっ!」
「おいミストやめて!? 頼むからそこ退いて!?」
「そうは問屋が卸売り――!!」
願いも虚しく、そう言って立ち塞がった彼女は……その両手で、逃げる俺の肩を力一杯押さえつけたのだ。
(ぶ、ぶつかる!?)
だが、流石に”命がけの全力”で走る俺の勢いは止まらず……そのままミストを押し倒す形となってしまう。
「うわあぁぁぁ!?」
「ちょ――!?」
衝突して縺れる俺達――!!
ぶちゅ……俺の唇に、何か柔らかい感触が触れた。
「あっ……」
「え…?」
気が付くと、目の前にはミストのクリクリした茶色い大きな瞳。
派手にころんだ俺は……なんとミストを押し倒して”ちゅー”してしまったのだ。頬を上気させ、アワアワと瞳を泳がす彼女。
「ちょ、太郎……み、みんな見てるし……そ、それにまだ、こーいうのはアタシには……まだちょっと早いっつーか、何つーか……てか初めて……だし……」
「ご、ご、ごめん!」
慌てて上体を起こす俺。
しかしその直後、追いかけてきていたレアが派手に転んで俺達に覆いかぶさり、再び俺とミストの唇を無理矢理くっつけたのだ。
「「ん、んんんっっ――!?」」
必死に腕立て伏せで抵抗するが、レアの乗った位置が悪いのか、上手く上半身に力が入らない。
慌てて下を見ると、ミストは潤んだ瞳をそらして顔を真っ赤にしている。しかしこの直後、倒れた俺達二人を更なる悪夢が襲う。
ポタリ……ポタリ……
俺の後頭部へと”何か生暖かいもの”が滴り落ち、そのままゆっくりと頬を伝ってミストの顔面へと降ってゆく。まるで沸騰した様な表情で俺を押し戻すミスト。
「ぷはっ――! 臭っさ! 太郎、お前、お口臭っさ! ア、アタシに、キ、キス……とかするならさ……ちゃんと……その、ポリデントとか……してから来いよな……何か……口からウンコ◯みてーな匂いするし……」
なに顔を真っ赤にして、ポリデントとか言い出すのこの娘!? エッ!? それより“口臭ウンコ”ってなに――!?
てかショック! マジでショックだ!! 強制的とはいえ、初めて“ちゅー”したのに『おじいちゃん、お口臭〜い! はい、ポリデント!』みたいに言われてショック!! 更にウ◯ンコみたいな臭いとか……もはや死にたい!!
立ち上がろうとしたのか、再び俺の後頭部に体重を掛けるレア。それにより、また俺達の唇が強く塞がれる事となる。
「「ゔんんんっっ!?」」
おい、だがちょっと待て。俺が如何に童貞だとはいえ、当然歯だけは毎食後にキッチリと磨いており、衛生面についてはそれなりに気を遣っている。それが口からうんこの臭い?? いやいや、流石にそれは無い筈だ!
そう思って首だけで必死に前を見ると、そこにはズッこけたまま俺達の頭を抑え込んでいるらしき、レアの上半身。
そして……
(何だこれは……悪臭??)
今現在、ミストを押し倒したままの俺の後頭部には……レアの股間部分が思い切り乗っかっている事となる。そしてその状況で天より降り注ぐ、何かこう、酸味の強い不思議な香り。
そこまで確認した俺は……己の置かれた場所が“地獄”と悟り、一瞬で諦めの境地に辿り着く。
再び真下を見ると、先程とは打って変わって目を血走らせ、『んん――!!んんーっ!?』と必死にもがくミストの姿が。そう、彼女も”滴る液体とその悪臭の正体”に気付き、何が起こっているのかをハッキリと理解した様子だ。
――ブッ! ぶびび! ひぶぶっ、ビルルルリュルッ――!!
頭の上で鳴り響く、まるで聞き慣れない不思議な音。
そう。それは本来であれば、誰しもが出勤前に早朝のトイレで聞き慣れた“あの音”である。しかしそれが頭上で轟くなど、俺はこの二十六年の人生において、未だかつて経験した事が無い。そしてそれは“その筋の特殊な性癖等”に開眼でもしない限り、一生縁のない筈のものであった。
そのレアの尻から解き放たれた“無慈悲な茶色い液体”は、薄手のツナギを容易に貫通し……
ブッ、びびっぷっ!! ぶぽぽびっ!!!
「ゔあぁぁ……また出ちゃったぁぁぁ……」
俺は必死になって、覆いかぶさるレアを押しのけた。
直後、ミストの絶叫。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!? ゔんこだ! うんこだコレ!! まぢゔんこだあぁぁぁぁ!? うああ、く、口に入ったぁぁぁぁ――!!」
急いで立ち上がる頭部がウンコまみれの俺達。
哀れ、ミストのサラサラしていたはずの綺麗な茶髪は……これ以上にない程にウン汁でベタベタになっていた。かく言う俺も一緒だが。
「うわあぁぁぁぁっ!!ぺっ!ぺっ!」
「ア、アタシのファーストキスが、ゔんこの味にいぃぃぃぃ――!!」
レアに俺にミスト。もれなく皆、クソまみれである。
それを見てドン引きした神様達は、俺達三人から素早く距離を取った。近くを走り回る怪物達を薙ぎ払いながら叫ぶブリュンヒルデ。
「お、お前達、い、一体、何をしている!?うっ、く、臭っ――!?」
その後ろでは、神様とヒルドが絶望したような表情で首を横に振っている姿が目に入った。
「レアや……お主は何をやっとるんじゃ……」
じわり……ブリュンヒルデに近付こうとするレア。
「た、たいちょおぉぉぉ!う、ゔんこ出ちゃったぁぁぁ!!」
「や、やめろ!レア、わかったからこっちに来るな!!」
――ぶびっ! びじゅうっッ!!
再び、”あの恐ろしい音”が響く。何故だか逃げ惑う怪物たち。それをを背景に、正に地獄絵図である。
もう色々と諦めた俺は、大きくため息をついて戦場をゆっくりと見回した。
不思議だ。奴等は何故、襲って来ない??
相変わらず怪物達は、”俺達を避ける様にして”逃げ惑っている。当然、こちらには一切手を出して来ない。この状況に違和感を覚える。
妙だ。一体何が混乱を引き起こしたのかはわからないが、もし何か不利であるなら昼間みたいに次元の裂け目を作って逃げて行けばいいのに。何故ヤツ等はそうしない……?いや、もしかして“出来ない”のか?
色々と疑問はあるが、それについて分析している余裕はない。それより”混乱”を引き起こした”原因”には……何となく心当たりがあった。
そう、”うんこ”である。
馬鹿げているが、恐らく間違いないだろう。
俺はブリュンヒルデに迫りつつあるレアを追い、そのお尻に手持ちのビニール傘をなすりつけた。
騒ぐレア。
「太郎、貴様、何をする? ハレンチな!それにツナギの中でお尻がネチョネチョする!きもちわるい!」
俺は騒ぐレアを無視したまま、ウンコの汁が盛大に付着したビニール傘を中段に構え……敵の輪の中へと突撃を開始した――!!
俺の奇行に驚き、叫ぶヒルド。
「太郎!? 貴方は一体何を――!? 危険です、戻りなさい!!」
「喰らえ! うんこソードだ――!」
傘を振り回すたび、辺りへ飛び散る”うん汁”。
「キシャァァァァァァァァッ!?」
やはりそうか。俺は確信した。茶色い傘を見てたじろぐ異形の怪物達は……明らかに俺を必死で避けつつ逃げてゆくのだ。
背後から神様の声が響く!
「成程そうか! うんこ!うんこじゃ! レアよ、尻を出せ! 皆、武具にうんこを付着させて戦うのじゃ!」
史上最低の逆転劇の幕開けである。




