あの娘の妹
こんにちは!ワセリン太郎です!時間が取れる様になって来ましたので更新していきたいと思います!
そんなことより!どなたかが僕の小説、レアさん奇行に評価をつけてくださいました!ありがとうございます!!!無茶苦茶嬉しくて、嬉しくて……何故だかわかりませんが下痢になってしまいました!実話です。
「スマホ……私も欲しい。姉さん達、みんな買うって言ってた……」
ああ、大体理解したぞ。昼間の”天界VS魔界”の乱闘騒ぎの発端は、レアと姫様の子供じみた争いだった。しかし今回の騒ぎについて良く考えてみると確かに違和感を感じる。
それが何かと言うと、レアと姫様の呼びかけに呼応して集まった天界、魔界双方のメンバーだ。当然、両軍共に近接戦闘部門の脳筋女達の集団であり”日頃のガス抜きの為”に集まって来たとも考えられるが、それだけでは少々説得力に欠ける気がする。
流石にレアや姫様レベルの”あんぽんたん”は稀にしか存在しないだろうし、わざわざ大人の女性達が”訳の分からない子供じみた喧嘩”に応じて世界を跨いでまで殴り合いに来るだろうか……?いや、断じて否だ。
結局のところ、彼女達は喧嘩に付き合う振りをして日本へ渡り、スマホを入手するのが本当の目的なのだ。
そして通常、用事も無しにゲートをくぐって天界と現世を行き来できるのは……現地の駐在天使か”許可持ちの連中”だけだろう。スマホが欲しい天界の彼女達からすると日本へ来る千載一遇の好機だったと言う訳だ。どうせ魔界側も似たような理由なのだろうと思う。
それにこの小さな少女が釣られてこっそり付いて来てしまった……と。お姉ちゃん達が皆で楽しそうに出かけるのを見て、お留守番を言いつけられた妹が黙って後を追いかける……まあ、ありがちな話ではあるのかも知れない。
「で、ゲートをこっそり通って来ちゃった……と?」
「……うん」
「ロッタちゃんあのね?スマホはお金が無いと契約出来ないのは……わかるかな?」
「うん……わかってるの……ごめんなさい。もう迷惑かけないように、ちゃんと帰る……」
おおっ――!?この子は……おバカじゃない――!?良くわからない感動が俺を包んだ。戦乙女でおバカじゃない子を見るのは久しぶりというか……いや賢い人は普通にいるのだけれど、どうもウチの”あんぽんたん達”のイメージが強すぎていけない。
学校なんかで先生がよく言う「たった一人でも悪い事をすると、学校全体が悪く思われますので注意してください!」的なアレなのだろうか?あれもあれで暴論だとは思うのだが。
兎に角、そんな事より俺は目の前の”幼くも物分かりの良い戦乙女”の存在に強い感動を覚えていた。
「大家さん!俺、こんな常識的な戦乙女、久しぶりに見たような気がしますわ!ヒルド以来じゃないですかね!?ちゃんと話したらわかってくれるんですよ!?どこぞのヤツらみたいに駄々をこねないんですよ!?こんなに小さい子なのに!俺、この子の定食代払いますわ!!」
「私、まだ戦乙女じゃなくて見習い……」
「お、おう。エライ感動っぷりだな……まあ、俺の定食代もお前の払いなんだけどな!!」
ん……?この大家今何て言った?まあいい、そんな事は後だ。熱弁する俺の言葉に少し遅れて彼女が反応する。
「ヒルド……?ヒルドお姉ちゃんと知り合い……なの?」
大家さんが驚いて目を丸くする。今の彼女の言い方は、戦乙女達の間でよくある”お姉様”的なニュアンスとは少し違う雰囲気だった。
「お姉ちゃんってよ……オメーもしかしてヒルドの実の妹か!?」
「……うん」
コクリと頷く目の前の少女。確かに言われてみれば綺麗な青い髪と瞳、それに美しい目鼻立ちがヒルドに似ている気がする。ロッタちゃんは長い髪をポニーテールにしているのだが、髪型を似せれば”幼いヒルド”に見えない事もないだろう。
「へぇ、言われてみりゃ確かにヒルドに似てんな」と一人頷きながらシュポッとタバコに火を点ける大家。
「ちょ、大家さん!子供のいる席でタバコはやめましょうよ……」
「おう、ついな。悪ぃ悪ぃ!」
制する俺に珍しく素直に従う大家。しかしロッタちゃんが無表情なりに嬉しそうな雰囲気でフルフルと首を横に振る。
「……だいじょうぶ。天界人は病気ならない。吸ってだいじょうぶ……それより、ヒルドお姉ちゃんに似てるって……嬉しい」
そう言えば天界人には病気というものは無いらしい。永い寿命の限りはあるらしいが、本当に羨ましい限りだ。
いや待て。確かに”身体の病”はないのかも知れないが……身近に”頭の病”を患っている戦乙女がいるような??
それはそうとして、タバコの件はそういう理由だけじゃない、わかっているのかバツが悪そうに灰皿で火を揉み消す大家さん。
「へへっ、そうかよ。いやな、ガキの前で吸おうとした俺が悪ぃんだわ。それに子供が大人に気ぃ使ってんじゃねえぞ。それよかオメー、これから天界に帰るんだろ?どーせ通って来た移動用の魔法門は俺ん家の車庫だろうからよ、ソレ食ったら送って行ってやるぜ。神様とか他の奴等にこっちに来てるのバレねぇ方がいいだろうしよ、まあ怒られねぇ様に俺が上手くやってやっから心配すんな!」
嬉しそうに頷くロッタちゃん。
「うん……助かる……大家優しいから……すき」
「へっ、そうかよ。まあオッサンに任せとけや!」
昔から不思議なのだが、この大家は何故か子供に好かれる。
通常なら、恐ろし気な見た目でドン引きされて泣かれてもおかしくなさそうなものだが……まあ根が悪い人ではないのが本能的にわかるのだろうか?
話が纏まったところで残りの定食をガツガツと頂く。余談だが陳宝軒の定食は非常に美味い事で有名だ。
これでこの”から揚げ”が”一体何の肉なのか?”がわかれば安心して堪能できるのだが……オバサンに聞いても教えてくれなかった不安を押し殺し、何も考えずに頬張る。
そして暫く経ち、皆が定食を平らげてからボーッとテレビを眺めていた時だった。
いや、正確にはロッタちゃんはボーッとではなく、初めて見るテレビに釘付けになっていたのだが……とにかくその時だった、再び事件が起きたのは。




