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ビニール傘と金属バット【外伝】~とある天使の休日~vol.2

こんにちは!ワセリン太郎です!本編は少しだけお待ちください!

 手早く私服に着替えて外出の準備を終えた私は自室の鏡の前に立ち、少しサイズの大きなメガネをクイッと上げつつ己の姿をチェックする。


「よし、準備ができました。ふむ……やはり私は可愛いですね。何故世の中のイケメン達が声を掛けてこないかが不思議でなりません」


 そりゃ少し身長も低いし胸も”多少は”小さいですけど……とりあえず自分で言っておいてイラッ☆ときたのでベランダへと出て……「巨乳」と書かれたサンドバッグを一発無言で殴る。それから財布の入ったトートバッグを手に取ると、アパートの玄関を開いて外へと出かけた。



 私の住むアパートは神丘市商店街から少しだけ離れた住宅街にあり、正直あまり交通の便がよろしいとは言えません。実は免許は以前取得しており、賃貸には備え付けの駐車場もあるのですが……まだ車を所持するには至っていない現状なのです。まあそのうち欲しいとは考えているのですが。


 いやしかし!私が車を所有すると、世の男性諸君が”私の様な麗しい女性”を助手席に乗せる機会を失うという悲劇を招く可能性が高くなり……云々。


 アパートを出た私が商店街へ行こうと目の前の公園をショートカットしていると、掃除をしていた近所のおばちゃんに出会った。あ、おばちゃんがこちらに気が付いたようです。


 私が挨拶をすると「あらぁ、エイルちゃん!今日も元気ねぇ、あ、コレ食べる?」頭を撫でられ飴玉を頂いた。本当に皆、寄ってたかって私を子供扱いしやがりますね。


 飴玉のお礼を言い、おばちゃんと別れた私が公園を抜けてしばらく行くと……前方の駄菓子屋の前に見知った女性の姿が見えた。ミストだ。


 上着を腰に巻き、ジャージの裾を片方だけ膝までまくり上げた彼女は……お店の前の日陰に座り込んで美味しそうにアイスを食べている。私が少し離れて見ていると、彼女はこちらに気が付き手を振ってきた。


「あ、エイル姉さんちーっす!」


「こんにちは、ミスト。アイスですか、随分と美味しそうですね」


「うん、今日は暑っちいよなー。あ、これさ、公園にいたサトシから”当たり”の棒貰ってアイスと交換したんだぜ!」


 サトシ君……確か彼は小学生で商店街にあるラーメン屋、「初出し!ラーメン漢汁軒!」の店主の一人息子だったと記憶していますが……また面倒が起きそうなので、以前レアさんがあそこの店舗を破壊した件は黙っておきましょうか。


「ミスト、あまり子供に食べ物をたかるものではありませんよ?」


「へーい」


 アイスを食べ終えた彼女はよっこらせ!と立ち上がり、またどこで手に入れてきたかわからない”ブカブカの野球帽”を被る。しかし阪○タ○ガースですか……いえ、私も嫌いではありませんよ。


「そーいやさ、エイル姉さんこれからどこ行くの?」


「私はちょっと商店街に寄ってから発泡酒を買って帰ろうかと……」


「うげ、真昼間からお酒飲むのかよ!?」


「人聞きの悪い!夜です夜!昼間からビール片手に商店街をフラついている、どこぞの大家さんと一緒にしないでください!こう見えて私公務員なんですから!」


 全く悪びれた様子のないミストは……


「ふーん。じゃ、アタシも付いてこ!」


「まあ、いいですけど……あっ!何も買ってあげませんよ!?」


「ケチぃ……」


 そうしてとりあえず二人で商店街の方へと足を進めた。あれ?商店街に来たついでに寄ろうと思っていたのだが、アリシアの自宅兼、書店のシャッターが降りている。


「アレ?閉まってんな、アリシアさんどっか行ってんのかな?」


 そう言ったミストがシャッターをドンドンと叩く。チャイムを押しなさいチャイムを。子供の様にシャッターを揺らしだしたミストを止め、チャイムを押してみる。


 ピンポーン♪ピンポーン♪


 暫くすると頭上から声が降って来た。空を仰ぐと窓から顔を出すアイリちゃんの姿が。


「あ、あの……こんにちは。今降りますので……」


 少し待つとシャッターが開いておどおどしたアイリちゃんが顔を出した。彼女は日本(こちら)に来てからまだ日が浅く、アリシアさんから「あまり刺激を与えないように注意してね~」と言われているのを思い出して笑顔で声を掛ける。


「アイリちゃんこんにちは。アリシアさんは外出中なのですか?商店街まで来たので、少し顔を出して行こうかと思って来てみたのですが……」


 両手を前で重ねて深々と「こんにちは」する彼女。あれ!?この子……私と身長は同じ位なのに……胸が少し大きい!?しかもこれから成長するのを考えると……いや、現段階ではそう恐れる相手ではありません!!

 私が妙な表情をしていたのか「ひっ……」と声を出して後ずさるアイリちゃん。いけない、怖がらせる所でした。再び笑顔を作って話しかける。


「アリシアさんはお仕事のようですね?」


「あっ、はい。さっき何か”ちょっとゴネてる人いるから説得しに行ってきまぁ~す”って……言って出掛けちゃいました……」


 ゴネる?ああ、アレですか。実はあまり多くはない”駐在天使のお仕事”の一つだ。また面倒臭いタイミングで来てしまいました……


 しかし内容を知った私が適当に引き上げようと考えていた矢先、座り込んで道端のカマキリを棒でツンツンしていたミストがニヤニヤしながら立ち上がったのだ。


「ああ、アレ……ね?面白そうだから見にいこーぜ?アイリも行くよな?あんま街中出たことないんだろ?アタシらが連れてってやるぜ!」


 また余計な事を……しかし私も立場上、断るわけにはいきません。おどおどしつつも街中に興味津々のアイリちゃんはコクコクと頷く。はあ……仕方ありません。


「アイリちゃん、私達はここで待ちますので戸締りを」


 そのまま暫く待つと……可愛い帽子を被って外出用に着替えたアイリちゃんが降りてきた。


「では、行きましょうか」


 そうして二人を連れた私は……アリシアさんが”現在いるであろう場所”へと歩き始めたのです。ああっ!休日なのに面倒くさい!

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