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ビニール傘と金属バット【外伝】~とある天使の休日~vol.1

こんにちは!ワセリン太郎です!ちょっとだけ息抜きに【外伝】を書いてみました!よろしければどうぞ!

 私はエイル。ここ、神丘市に天界より遣わされている”現地駐在天使”です。普段は神丘市役所の市民課に務めています。最近、天界の関係者となった人間達に「駐在天使って普段は一体何をしてるの??」と、よく聞かれるのですが……ん?知りたい?仕方がありませんね、太郎さん達には内緒ですよ?


 彼らの前では威厳を保つ為に黙っているのですが、ぶっちゃけ”駐在天使”は普段何もしていません。業務内容的には”何か特別な事態”が担当地区で起きた場合以外は特に仕事はないのです。一応、週一で本部へ”異常なし”と報告書は上げるのですが。


 ん?何て羨ましい仕事……ですか……あまり勘違いをしないで頂きたい。私達、現地駐在天使にもあなた方人間と同じく日々大変な事が待っています。それは何かというと……その辺のOLよろしく”現地の通貨を稼いで日々生活する”事。この辺りは人間と変わりませんね。


 天界で生活する分には通貨は必要ありませんし、食物の接種もあくまで趣味の範疇でありトイレに行く事もありません。それがどうでしょう?天界より顕現して日本(こちら)へ来ると、魔力と栄養補充の為に食事は必要だしトイレットペーパーも買わなくてはなりません。それに新陳代謝が始まり当然お風呂も沸かす……と。


 これが天界よりお金を支給されていれば非常に楽な暮らしなのですが、規則として「現地の経済に対して天界由来の力をもって干渉する事の一切を禁ず」とありまして……わかりやすく言うと”天界由来のお金を現地経済に流しちゃダメ”って事ですね。ほんと面倒臭いです、アホかと。


 この規則の存在によって、我々”駐在天使”は派遣された先に準ずる経済活動を余儀なくされるワケなのですが……ありていに言うと現地での就職ですね。これがまた、慣れるまでとても苦労させられるのです。


 しかし就業に何とか慣れてくると天使自身も随分と世俗に紛れ始め、もはや当然の如く毎月のお給料日のみを楽しみに待つ生活を始めてしまいます。そして……いかに神属であろうとも毎月のお給料の額が決まっている以上、無駄遣いはできません。よって主婦達に混ざってはスーパーで特売品を買い漁り、広告を見てはバーゲンにも出かけるのです。


 そのうえ日本(こちら)にはあらゆる娯楽の誘惑も多く出費もかさみ、職場を出ては友人関係に悩まされたりと……あ!誰ですか!?今「お前友達いないだろ……」って言ったのは!?表に出ろ――!!


 とまあ、天使にも色々とあるわけなのです。神様の遣いなのに世知辛いですよね。今日はそんな私の一日を少しだけお見せしましょう。


 ジリリリリリ……目覚ましのベルが鳴る。重い目蓋を開いて時計の針を見ると”午前九時”。そう、今日は私は勤務先で”個人休”を頂いているのだ。目覚まし時計の頭を華麗にタッチして黙らせ、再びモゾモゾと布団へ急速潜航……。天界で図書館(ライブラリー)の司書をしていた頃には考えられない生活、まさに至福の一時です。ビバ、二度寝。


 そうして私が幸せに抱かれ暫く眠っていると……突然スマホの着信音がけたたましく鳴り響く。一体誰でしょうか?朝っぱらから迷惑な……着信画面を見るといつも可愛がって頂いている職場の先輩、慌てて電話に出る。どうやらパソコンの操作でわからない事があったらしく、暫くそのまま扱い方を教える。そして要件が済み、電話を切る直前に……先輩が妙な事を言った。


「エイルちゃん、お休みの所ごめんね!もうお昼食べたの?」


「えっ!?ええ……はい、それでは失礼します……」


 挨拶を終え電話を切る。お昼……だと?私が不審に思って部屋の時計を見ると午後一時過ぎ。あれれ?先程目覚ましを見た時は”午前九時”。


 目覚まし時計の時間が大きくずれていたのでしょうか?それとも電池残量?これが出勤の日だと思うと……ゾッとして身震いし、目覚まし時計を手に取る。


 あれ……?時刻は”午後一時過ぎ”。部屋の時計と合っている??……どうやら私とした事が随分と派手な二度寝をしてしまったようです。そう考えた私はフフッと笑い……再び布団の中へと潜っていきました。素晴らしきかな三度寝、ハレルヤ!!


 ぐぅ……空腹によるお腹からの訴えに屈し、仕方なくモゾモゾと布団から這い出る私。時計を見ると午後二時三十分、ふう、今日の寝溜めはこのぐらいにしてやりましょうか。


 軽くシャワーを浴びた後に一瞬何か作ろうかとも考えたのですが、とにかく面倒です。私は戸棚の中から特売日に大量買いした袋ラーメンを取り出し、お湯を沸かし始めました。そしてラーメンを作りながら録画しておいた「ザ!イケメン倶楽部!」を再生する……これが私の毎週の最大の楽しみの一つなのです。


 生ハムを二枚落とした美味しいインスタントラーメンをすすりながら、クーラーの効いた部屋でイケメンだらけの番組をモニター直前まで顔を近付け堪能する……そこには仕事の出来ない脂ぎった市民課の課長の顔も無ければ、次から次にけたたましく鳴り響く電話の音もない。ストレスからの解放!まさにここが”天国”、そう、天国なのです。


 しかし暫くすると番組も終わり、現実へと引き戻される私。そしてふと思うのです、世の中あんなにイケメンが溢れているのに……何故一人ぐらい私の元へ現れて甘い言葉を囁かないのでしょうか?


 私天使ですよ?おかしい、絶対に何かが間違っている!!


 きっと誰かが裏で”私の元へイケメンが来ない様に手引きしている”に違いありません。そうか……奴等の仕業か。私はフラりと立ち上がると、アパートのベランダに置いてある中型のサンドバッグの前に立ち呼吸を整える。サンドバッグの胸の高さには「巨乳」の二文字。その、悪しき言葉が私の憎悪を掻き立てる!


「巨乳死すべし!死すべしッ!!死すべしッ!!」


 バシッ!バシッ――!私の放つ突きや蹴りは人間なら急所であろう場所へと的確に突き刺さってゆく……ふと視線を感じてそちらを見ると、ベランダの防火扉ごしにお隣のおばあちゃんがニコニコと覗きこんでいた。きっと私の立てた騒音が気になったのでしょう。


「あら~、エイルちゃん。今日も元気ねぇ。また柔道の練習?」


「あ、おばあちゃん!こんにちは……いえ、これはどちらかと言うと空手に近いような……」


「あらそうなの……?おばあちゃん余り詳しくないからごめんなさいねぇ……」


「い、いえ……では……」


 今日もまた見られてしまった……微妙に気恥ずかしくなり、おばあちゃんへと頭を下げて部屋へと戻った私はふと時計を見る。


 時刻は午後三時三十分、折角の休みだしそろそろ何処かへ出かけてみましょうか……?夜のお楽しみの発泡酒も買いに行かなくてはなりませんし。


 はぁ!?ビールの方が美味いですって!?まったく……これだから経済観念の希薄な連中はダメなのです!!

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