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人はそれを既視感と呼ぶらしい

こんにちは、ワセリン太郎です!今回は自分で自分の小説に感想をあげよう!と思い付き、レアさん奇行を最初の第一話から読み返してみました!すべて読み直してみると、お話しの整合性の取れない部分や新たな発見などがあったりなかったりするかもです。僕が自身の作品に贈った感想はあとがきで!!

 ロビの街を出発した大家の自家用車(バン)はトビラ山へと続く夕日の石畳を行く。


大家(しげる)さん、どーするんスかコレ……俺知りませんよ?後で神様(ジーサン)に怒られても」


「ハッ、知ったことかよ!めんどくせー。おう、そこの馬車!ジャマだどけや!!」


 パァ~ン!パパーッ!!と中世風の街道に響く品の無いヤンキーホーン。初めて見る謎の乗り物に驚く御者達。一番怒り出しそうなヒルドも既に諦めて今朝作成していたであろうトビラ山の手書きの見取り図にボールペンで何かを書き込み考えている。俺が助手席で頭を抱えていると、後部座席からミストが笑いながら俺の頭をポンポンしつつ声を掛けてきた。


「太郎、心配すんなって!車の件はあとでアタシが神様(じーちゃん)が怒らないように言ってやっからさ!!」


「ホント頼むよ……俺まだ初任給貰ってないんだよ。前の安月給の会社も辞めてその上この仕事をクビとかなったらさぁ……」


「だいじょーぶだって!アタシに任せとけよな!!」


 俺が珍しく頼もしいミストを振り返ると、彼女の隣に天使(アリシア)さんが何かしているのが見えた。随分とご機嫌なようだが……手に何か本を持って懸命に読んでいる。何だろう?えーっと……「ド○ゴンク○スト初級ガイドブック」。何だ、天使か。彼女は俺と目が合うと、ニコニコしながら語りかけてきた。


「えっとね、実は私こういった冒険に少し憧れてたの!でもお仕事が戦乙女隊(ヴァルキリー)じゃなくて駐在天使でしょ??だからこういった経験とは一生縁がないんだろうなぁ~って考えていたのだけど……ちょっと不謹慎で怒られちゃうかも知れませんね」


 ペロリと舌を出してウインクする彼女。誰がこのように可憐な天使を怒るものでしょうか。俺が後ろを向いてアリシアさんにヘラヘラしていると明らかにイラッとした顔のミストが「あ、悪ぃ!肘が滑った!!」と後部座席から顔面に肘を入れてきた。

 アリシアさんの可憐な香りから一気に鉄の味に変化する俺の鼻腔……そうこうしているとトビラ山の麓に到着した。

 大家(マッチョ)がかなり速度を出していたのもあるが、流石に自動車は馬車とは比較にならない程に速い。今朝馬車を停めていた場所に車を隠し、逃走も視野に入れて軽装にて登山を開始する。


 暫く経って今朝居た岩場に到着した俺達は周囲の監視を開始した。ヒルドが周囲を双眼鏡で見廻しながら言う。


「良かった、何とかまだ陽は落ちてませんね。結果として大家(しげる)殿の判断は間違っていなかったのかも知れません。後の事を考えると少々気が重いですが……おや、軍のドラゴン討伐隊は一旦引いて野営の準備に入った様です」


 俺に双眼鏡を渡してくるヒルド、受け取った俺も遠くを見る。確かに軍は一旦下がってテントを張ったり火を起こしたりし始めているようであった、。麓の平原にドラゴンの姿は……ない。

 軍も流石に夜間に(ドラゴン)を追って山に入る様な愚策は取らないのだろう、山頂から一網打尽にされるのが目に見えているし兵の消耗も激しそうだ。つまり必然的に俺達が(ドラゴン)に接触するなら夜の内って事になるのか。

 軍による夜間襲撃の斥候隊なんかと鉢合わせにならないようにしたい所だけど……いや、この場合共闘もあり得るのかな。


「ドラゴンも一度巣に戻った……って事なのかな??」


隣で楽しそうに双眼鏡を覗きこみながらアリシアさんが答えた。


「人型になるんだから巣じゃなくて”おうち”じゃないかしら??」


「そうっすね!!おうちだと思います!しかし軍もドラゴンが人型に戻った所を襲撃しようとかは考えないんでしょうかね?人間なんて真っ先にソッチに走りそうなもんですけど」


俺の疑問に双眼鏡を覗き込んだままアリシアさんが応じる。


「えっとね、ドラゴンが人型になるって事は”竜族だけの厳重に守られた秘密”なんですって。だからこのアタランテの世界の竜族以外の人達は知らないの。私達もエイルちゃんが天界由来の資料を調べてくれたおかげで知りえただけで……」


「なるほど、掟に従順な種族だって聞きましたしね。それにわざわざ……」


会話の途中でゆっくりと陽が落ちて辺りが闇に沈む 。先程、ジャージ姿で身軽なミストを”ドラゴンの自宅探し”に出していたのだが……戻って来たようだ。


「おーい、あったぜ!ここよりもうちょっと上。思ってたより小奇麗な山小屋に住んでた。窓に暗幕張って外に光漏れない様にしてたから中に居るのは間違いないと思う、畑とかきれいな花畑とかあったんだけど……あのドラゴンってもしかして、じーさんじゃなくね??」


報告するミストに答えるヒルド。


「いやしかしミスト、君も最初にドラゴンに接触した際に見ただろう?あの威厳というか……漆黒の巨体というか……」


 確かに最初にドラゴンが馬車を追って来て会話した時、当然すごい迫力だったし力強く威厳に満ちた物言いだったのを思い出す。ともかく一旦その小屋が見える場所に移動しようという事になり、荷物を担いだその時だった、俺はある事に気付いてしまったのである。

 そう、レアと大家(マッチョ)のアホ二人の姿がどこにも見えないのだ……。普段から空気を読まずにギャーギャー五月蠅い二人だが、先程から妙に静かだった事に早く気付くべきだった。


「みんな!アホの二人がいない!!」


――!ハッとするヒルドとアリシアさん。直後にのんびりとした口調でミストが声を掛けてきた。


「ああ、レア姉さんとゴリマッチョならさっき上に走っていったぜ??」


「いつ!?」


「アタシが”上の方で小屋見つけた”って言った後くらい??」


ジーザス!!嫌な予感しかしない。俺は荷物を背負うと必死で二人を追いかけた。



~トビラ山中腹の小屋の前~


ドンドンドン!!レアは勢いよく山小屋の扉を叩く。


「こんばんは!ここがドラゴンの家か!案外小さいな!あ、でも太郎の部屋(アパート)より広いし安心していいぞ!!」


隣には大家(マッチョ)


「おいレア。オメーよ、いきなり知らねーヤツが夜に訪ねて来たらドラゴンもソリャ怪しむってもんよ……ちょっとどいてろ、俺様が手本見せてやっから」


 納得して頷き下がるレア。大家(しげる)はドアに近づくと、軽くノックしてから小屋の奥へと声を掛けた。


「夜中にすみませんねぇ、あ、別に俺等怪しい者じゃねーんですわ……ちょいとお話しが。いやね、お宅の息子さん?麓の街道で借り物の馬車で人ハネちゃいましてね……いわゆる人身事故ってヤツなんですわ。幸い相手さんの命に別状はないんですがねぇ……まあ全治二週間ってカンジで……今街の病院に入院しちまってるんですよ。んで、息子さん本人が責任取れねぇって仰るもんで、こちらとしても……ねぇ」


隣で腕を組み、満足気にウンウンと頷くレア。しかし小屋の中から返事はない。


「居留守かよ、こりゃダメだな。とりあえず扉ブチ破るか……??」


「うむ、奇遇だな。私も今、大家(しげる)と同じ事を考えていた所だ」


 登山用リュックに縛り付けてあった、”ドラゴンより授かった魔斧”を手に取り感触を確かめる大家にツナギの胸元のジッパーを少し降ろして背中から聖剣様(キンゾクバット)を取り出すレア。二人は顔を見合わせ頷き合うと、得物を両手で振りかぶり ……


「ゆくぞ!!エクス!!カリ――!」


しかし、珍しく掛け声は途中で中断された。途中で割って入る声があったためだ。


「や!やめてください!!おうちを壊さないで!!」


武器を振りかぶったままのアホ二人が声のする方を振り返ると、玄関の隣にあった暗幕の窓を開け放ち……漆黒の美しい髪と紅い瞳を持つ少女が、恐怖に引き攣った顔で二人の方を見ていたのである。



~トビラ山中腹~


 暗い夜道を必死に急ぎ、ミストに先導してもらいつつ俺達は”ドラゴンの住む山小屋”が見える岩影へと到着した。案の定言うまでもないがアホ二人の姿はその周囲には無い。最悪のパターンを想定して俺はドラゴンの住むという小屋の入口へと生唾を飲み込みながら双眼鏡を向ける。

 これまでの経験からしてヒルドも全く同じ考えの様で……当然俺と同じ行動を取っているのだが、双眼鏡を覗き込んだまま固まる俺に、震える声でヒルドが問うたのだった。


「太郎……えっと……あの二人は一体何を……しているのでしょうか?」


夜間で薄暗くはあるが、山小屋の暗幕から漏れる光を拾うレンズの向こうにはアホが二人、全力で武器を玄関に向かって振りかぶる姿が見える。


「ヒルド……それが理解できてれば俺達は今まで苦労をしてこなかったと思う。あっ――!扉が開いた!?アレ何やってんだ!?嘘だろ……二人共、小屋の中に入って行ったぞ!?」


 小屋の扉は見守る俺達の側に開くので、ここからでは残念ながら家主の姿は確認できなかったが……どうやら山小屋の主に自宅内に招き入れられた様だ。ヒルドと顔を見合わせて頷き合って建物へと近付こうとした俺だったが……移動しようと立ち上がった瞬間、遅れて登って来たアリシアさんから呼び止められた。


「太郎さん!下から松明を持った人達が沢山登って来てるの!何かを運んでる様に見えなくもないんだけれど……双眼鏡貸して貰えるかしら??」


アリシアさんは俺から受け取った双眼鏡を手に、小高い岩の上によいしょと登ると暫く遠くを見つめ、そして震える声で状況を伝えてきた。


「まずいわ。麓の軍隊が全兵力で登って来てる……私達が登って来たルートとは別の道を行くみたいだけど、三人一組みたいな感じで(たる)みたいな物を抱えてるの。えっと、あれってもしかして……爆薬!?あっ!今松明を樽に近付けた人が怒られたように見えたから……間違いなさそう。だとしたらすごい量だと思うの」


 おいおい爆薬でドラゴンを吹き飛ばすか生き埋めにするつもりか??確かに効果があるならそれでも良しだけど……しかし俺達の今の状況を考えるとよろしくない。

 目の前の山小屋にはドラゴン、下からは大量の爆薬とか冗談じゃない……あれ、でも待てよ??軍の連中はどこまで爆薬を運ぶつもりなんだろう?俺は徐々に下から登って来る巨大な松明の大蛇を眺めつつ、ヒルドに尋ねてみた。


「なあヒルド、軍の連中はドラゴンの住処は何処だと思ってるんだろう?」


「私も今朝マッピングした際に気になって、出立前にミカに聞いてみたのですが……現在あまり状況が良いとは言えない、まずドラゴンは山の中腹の洞穴に住み着いているとの認識が一般的でした。実際に出入りしているのを見たとか。竜族も目立つ巨体で直接自宅付近に降り立つような間抜けな真似はしないでしょうし……つまり洞穴に爆薬を設置して点火されると、恐らく洞穴の直下辺りに位置するであろうこの場所は、相当な危険地帯になるかと」


 双眼鏡を覗いたままのアリシアさんも頷く。


「でもまだ軍隊が爆薬を設置し終えてないのが幸いかも?流石に全員が山を降りてから爆発させると思うし、時間はもう少しあると思うわ 」


 その時、ジッと黙って山小屋の方を監視していたミストが俺の上着を引っ張りながら言った。


「なあなあ太郎、レア姉さんとマッチョがこっち走って来てんだけどさー。あれって何を抱えてんだろうなー??」


 しまった――!圧倒的な量の爆薬に目を奪われてしまい、”圧倒的なバカ共”の存在が頭から抜け落ちていた。嫌な予感に踊る心臓をなだめつつ、山小屋を振り返る。ミストの言うように小屋から出てこちらに走ってくるレアと大家。

 手には……アレは何だ??あれは日本で買ったレアの寝袋じゃん??何故寝袋を大家(マッチョ)と二人で抱えているんだろう?随分距離が縮まり、何か掛け声が聞こえてきた。


「……す!……い……す!……いえーす!」


 二人の掛け声はどんどんこちらへ近付いてくる。


「はい○ーす!!はい○ーす!!はい○ーす!!はい○ーす!!」


 嫌な予感しかしない。二人は俺達の前に到着した。一仕事終えたような爽やかな笑顔でサムズアップし、闇夜に輝く白い歯を見せた大家(マッチョ)が一言。


「おう!おめーら。さっさとこの()に例の”拉致監禁魔法”とかいうヤツ掛けろや!」


 睡眠魔法だろ……?何言ってんのこのオッサンは。一度深呼吸をし、ゆっくりと地面に降ろされた寝袋の顔の部分を覗き込むと……何やら見覚えのある光景が。

 あれはいつの事だっただろうか?ああ、思い出したぞ!最初にミストに出会った時だ。それはズボンを脱ぎ棄てミストの顔面に象さん(小サイズ)アタックを決め、彼女を完全に失神させた時の表情に酷似していた。

 そう、寝袋の中から見えたのは……燃えるような紅い瞳で白目を剥いて一筋の鼻血を流し、口を半開きにしつつ涎を垂らした見目麗しい竜族と思わしき少女の顔だったのだ。

この小説の作者の人はバカなんじゃないかと思いました!!

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