Allow use of weapons?
こんにちは!ワセリン太郎です!
週末で少々遊び疲れておりますが、ぼちぼち更新していきたいとおもいます!
「敵将、討ち取ったり~!!」
奪い取ったスカートを頭から被り、勝ちどきを上げる俺達。フッ、彼女いない歴がイコール年齢の俺を甘く見たな。“これから戦う”と考えると当然腰が引けるが、逆転の発想で“今から女の子のスカート剥ぎ取りパンツを拝みに行く”と思うと、急に戦意が高揚するのが男の子というものだ。
当然、戦乙女達は強い。真っ向から勝負を挑んだのではお話にならないだろう。しかし如何に強かろうと、俺達を捕らえるには一度組み付く必要がある。その抑えられた際、スカートだけを狙う前提なら、ほぼどの体勢からでも掴む事は可能だ。あとは全力で引っ張るのみ――!!
振り返ると、廊下にへたり込んで下半身を隠しつつ、俺達に罵声を浴びせる銀髪ヴァルキリーのお姉さん。
ああ、もはや立ち上がれまい。もし勇気を奮い、立ち上がりでもすれば……俺達から執拗に、今はいてるパンツの感想を聞かされる事となるのは目に見えている。もし、なりふり構わず襲って来たとしても……次は“パンツ”が標的となるだけだ――!!
フッ、恨むなら下半身には殆ど甲冑のない、スカート剥き出しの制服のデザインを恨むが良い。
因みにこの作戦が上手く行ったのは偶然ではない。
連休初日、レアが変装の為にと突然スッポンポンになり、俺の職場のツナギをかっぱらって出て行ったのを思い出して欲しい。
あの時、レアは脱ぎ散らかしたヴァルキリーの制服を『バーカ! バーカ! ハゲ!! あと、それ洗濯しといて!』と俺に押しつけて飛び出していった。
その後、慌てて追いかけたのだが……年頃の女性の衣服へ触れた事など、生まれてこの方一度もない俺は……
とにかくその際、俺はあくまで“学術的視点”から、衣服の構造を確かめる為にと……震える手で素早く構造をチェックしたのである。
探究心とは、本当に尊いものだ。それは決して、やましい気持ちから生まれる様なものではない。
待て。俺は一体何故、こんなにも己へ言い訳しているのだろう? いや、まあそれはいい、とにかく違う、違うのだ。そしてその結果、ヴァルキリー達のスカートが片側全てボタン留めになっているのを知る事となり、それによってこの高度な作戦が立案されたのだ。ああ、知の勝利。
世の中、全ての事象には“意味がある”と聞く。そうだ、思えばあの日の俺の行動は……きっと今、この時の為に行われたに違いない。そう、ちゃんと意味があったのだ! 決して無意味なんかじゃない。
だがもし、仮に彼女達の制服が筒状のジッパーで留めるようなスカート、もしくはズボン等であったとしたならば、俺達は今頃ボッコボコにされた挙句、簀巻き状態で牢屋へ逆戻りだったに違いない。ビバ! 知的好奇心!!
その後も、俺達は破竹の勢いで勝ち続ける。中でも兄貴の放った“まるで龍が滝を昇る様な、下からスカートを剥ぎ取るアッパーカット”は見事としか言いようが無かった。それは一瞬、兄貴の背中に龍の紋様が浮かんだかと目を疑う程であり、俺は心が震えた。因みに後で聞くと、シャツの下の素肌には本当に龍が描いてあるらしく、俺は再び戦慄する。そういやこの人等ヤクザだってすっかり忘れてたぜ。
それはそうと、ヴァルキリー達に“年配の女性”がいなくて本当に良かった。彼女達は多種多用な見た目ではあるが、皆若く美しい。
もしあの中に年老いたオバちゃんが混ざっていたとしたら……スカートを剥ぎ取った瞬間に俺達は天◯宝輪。皆、五感を奪われ、いや、特に“視覚”へのダメージは筆舌に尽くしがたく、確実に失明していた事であろう。そうなるともう、阿頼耶識に目覚め、心の宇宙を頼りに戦わざるをえない。それは実に恐ろしい事だ。
そんなこんなで俺達一味は隠れるという事すら放棄し、堂々とパンツハンティングを開始したのだ。追う者と追われる者が逆転する。実践経験を積み、高みへと登り詰めた俺達を阻む者など何処にもいない。必死に逃げる戦乙女達、これはいい気味だ。
そう思っていた矢先、再び俺達を悪夢が襲った。
カーン、カーン、カーン、鐘の音が響く。合戦の始まりを告げる様に鳴り響く勇壮な角笛。何かが変わった。その音はそう俺達に確信させた。
サブローさんが、慌てた様子で騒ぐ。
「おい兄弟! 何かコレ、やべー雰囲気じゃねーか!?」
兄貴とキンジも頷いた。確かに胸騒ぎがする。恐る恐る、周囲を警戒する俺達。だがその直後……
ヒュッ――!! と、キンジの足元の地面に何かが刺さったのだ。
驚くキンジ。
「うわっ!? アッブねぇ――!!」
矢だ。そこには太陽を浴び、銀色に輝く矢が大地からスパッと生えていた。
頭上から響く声。
「うふふっ、驚いちゃったかしら? 今のは警告よぉ? もぅ君達、オイタが過ぎちゃったんだから」
一斉に階段を見上げる。
やべぇ。そこにはあの戦乙女狙撃部隊の隊長さんがメガネを掛け、愛らしい笑みを浮かべて立っていたのだ。
直後、近くの塔の上にある楽器の様な形をした拡声器から、別の声で伝令が伝えられる。
「戦乙女隊に告ぐ! 侵入者に対して限定的な武器の使用を認める! 繰り返す! 侵入者に対して限定的な武器の使用を認めます! 限定の許可は第三種! 繰り返す、限定の許可は第三種!」
俺は、大声で可愛い隊長さんに向かって叫んだ。
「おい! 武器使用許可の第三種って何だよ!? あと、アンタ! 許可降りる前に撃ちやがったな!?」
笑いながら答える隊長さん。
「えーっ、誤差よ誤差。ねっ? それに今、許可が降りたからだいじょーぶっ! あと第三種許可って言うのはね、最悪でも『殺しちゃダメよ?』って事なのよ~」
マジかよ。
「えっと、因みに“殺しちゃダメよ?”って、具体的にどう言う状態なんでしょうか……」
「そうねぇ……呼吸さえしとけばいいんじゃないのかしら?」
「……ダルマでも??」
「うーん……まぁ」
「……」
本格的にヤバいなこれは。脚でも撃たれたら逃げられなくなる。
それにこの場から逃げ出すにせよ、相手は隊長格だ。べらぼうにハイスペックの可能性が高いし、今、俺達が居る場所の近くには、飛び道具から身を隠す物陰すらない。
どうする……??
こうしている間にも、他のヴァルキリー達が反撃だとばかりに俺らの居場所を探し回っているに違いない。連中に囲まれれば袋叩き不可避。
ふと、隊長さんの立っている、城壁に登る為の階段が目に留まる。
ああ、あれしかない。俺は後ろを振り向き仲間達に小声で一言だけ伝えた。
「……パンツ」
ハッとし、無言で頷く彼等。
堅い信頼で結ばれた今の俺達には、これだけで充分だ。俺も頷き返し、もう一度隊長さんに向き直る。そして一言。
「あっ!! 隊長さん、ピンクのどエロいパンツが下から丸見えですよ?」
咄嗟に『あらヤダ!』とばかりに、弓を持っていない方の手でスカートの裾を押さえる彼女。まだだ、まだ階段を駆け上がるには時間稼ぎが足りない! そこに仲間たちから援護射撃が入る!
「おお! 今度はケツが丸見えじゃい! ええのう!」
実際には見えないのだが、塔内の螺旋階段でガッツリと覗き込んだ俺達は……彼女が“穿いているモノ”とは、とうの昔に顔見知りだ!!
「おいあれ、ティーバックじゃねーか!? エロス! 何というエロス!!」
「ピンク! ピンク! ピンクストリッパー!?」
「ち、ちょっと――!!」
彼女はたまらず弓を落とし、城壁の上で両手を使ってスカートを押さえ、しゃがみ込む。
好機。今だ! 今しかねぇ!
次々と卑猥な言葉を投げ掛ける俺達は、タコ踊りしながら全力で階段を駆け上がる!
辿り着くと、そこには耳を真っ赤に染めてスカートを抑え、こちらに背を向けしゃがみ込む小さな背中が。
そして……
~数分後~
「えっと、みんなごめんね。捕まっちゃいました……」
各々、武器を手に現場へ駆けつけた戦乙女隊の目の前には……ロズウェル事件のリトルグレイよろしく、スカートの前後左右の四ヶ所を俺達四人に持ち上げられ、それを両手で必死に抑える……人質となった隊長さんの姿が。
それを見た隊員の誰かが、驚きの声を漏らす。
「まさか……遠隔攻撃のスペシャリストである彼女を無力化したというのか!? 我々、近接戦闘専門の戦乙女ですら、遠距離戦では極端に不利になる相手を、一体どうやって……??」
真っ赤な顔で困った様な笑みを浮かべる隊長さん。当然彼女の力を持ってすれば、力任せに俺達を振り切る事も不可能ではないだろう。しかし、無理に抵抗すれば、『次はパンツを頂きますよ?』と伝えてある。
「えっと……色々あったの……色々と。それより、みんなごめんね~」
直後、周囲に響く声。
「射撃隊、前へ! ヤツ等の脚を狙え!」
当然、そんな事は俺達には想定済みだ。飛び道具対策に、隊長さんのスカートの端を持ったまま、皆でメリーゴーラウンドの様に彼女の周囲をクルクルと回りだす。当然、隊長さんも一緒に回る。
「ひ、卑怯者!! これでは隊長に当る危険性が……」
フッ、何とでも言うがいい! 卑怯など、今の俺達には褒め言葉でしかない。最早、ご褒美なのである。
しかし、この包囲されたままの状況は良くないな。気を抜いた瞬間、一気に取り押さえられる危険性がある。その後に待つのは集団リンチだ。とにかく今は足を止めない事。小声で互いにコミュニケーションを取りつつ、城壁伝いに移動を開始する、俺達四人と人質一名。
隊長さんが呟いた。
「もう、こんな事しててもいずれ捕まるわよ?」
周囲を警戒しつつ、答える。
「問題ないよ。時間さえ稼げれば、俺たちには秘策があるんだ。アンタには悪いけど、もう少し付き合ってもらうぜ」
溜息をつき、”はいはい、わかりました”とばかりにジェスチャーする隊長さん。
後方から追ってくる戦乙女隊に細心の注意を払いつつ、ゆっくりと進んでいた俺達であったのだが……サブローさんがある事に気が付き、焦りを表情に浮かべて耳打ちした。
「おい兄弟どうする? 道が二手に分かれてんぞ、どっちに行く?」
双方共に城壁が微妙にカーブしており、その行き着く先は……全く視認出来ない。
マズイなどうする……? 戸惑う俺達に、隊長さんから声が掛けられた。
これには、しまった……! と思うが、もう遅い。
「左よ左。右は先が崖だから、左がいいわ。そもそもあなた達、空を飛べないでしょう?」
心理的に揺さぶりを掛けられた。こういう状況でこれをやられると、地味に精神に圧し掛かってくるな。くそっ、と思い、意趣返しに隊長さんのパンツの紐を掴み、グイッと強めに引き上げる。これがまた間違いだった。
「あん! ごめんなさい! 本当は右よ。実は左側が崖なの」
いたずらっ子の様な顔で、ウインクしながら舌を出す彼女。
くそっ! 正解はどっちだ……!?
仲間達の顔にも、強い焦燥の色が浮かぶ。後ろからは、ジワジワと距離を詰めて来る多数の気配。
「おい兄弟! どうする!?」
殆ど猶予のない中、必死に考えた。
見たところ、右手には高い城壁が配置されているが……現在地は、浮島の様な姿を取る天界の外周壁の可能性が高いのか? 何だか風の流れも強い気がするし。もしそれが正しければ、左の道がそのまま中心地へ続く通路の可能性が高い。いや、そもそも”行き先が崖”というのも嘘の可能性がある。
「左へ行こう」
頷く仲間達。再び歩き出す。隊長さんがまた何か言おうとしたが、再び紐を持ち上げ黙って頂いた。嫌な予感がする。ヴァルキリー隊の隊員が数名、右の道へ別れて行ったのも気になるが。そのままジワジワ進むこと数分。
クソ、悪い予感が当たった。俺達の眼下には、完全に底の見えない谷が広がっていたのである。一応、隊長さんに尋ねてみた。
「あの、隊長さん。ちなみに右が正解だったんで……?」
申し訳なさそうに両手を合わせ、舌を出しつつ答える彼女。
「えっと……ごめんね。右も左もどちらにしろ行き先は崖だったの。嘘は言ってないんだけど……その、ごめんネ」
「あ……そっすか」
その時、背後から聞いた事のある音がする。
――バサッ、バサッ、バサッ――
それも複数だ。まずい、囲まれた。
来た道は徒歩のヴァルキリー隊に塞がれ、背後には、崖の上に浮遊する数名の弓兵達。
隊長さんが、俺達にこう言った。
「チェックメイト……ね。悪戯っ子さん達、短い間だったけど、少しだけ楽しかったわよ? さあ、もう諦めて投降なさい」
そう、俺達は負けたのだ。
次々に放心する仲間達……などと言うとでも思ったか!
なに、まだ策はある。最後の手段が俺達には残されている。
その時、ポケットの中のスマホが着信ありと告げた。一体誰だ? こんな時に。気になってゆっくりと取り出すと、隊長さんがメガネをずり上げ、瞳を大きく見開いた。
「あっ! それスマートフォン? いいなぁ! 地球に行った娘しか買えないの。私も欲しいのに。ねえ、後で見せて見せて見せて! あ、良ければ私とカップル割しない? 君、どうせ彼女とかいないんでしょ??」
余計なお世話だ! 当たってるけど……
隊の女性の中からも『ああ、スマホだ! いいなぁ……』等と次々に聞こえてくる。しかしここは天界だぞ? 何故携帯が繋がってるんだ?? そう思いながら画面を見るが……知らない番号。とにかく出てみるか。
携帯の向こうから、聞き覚えのある声が響く。
「あー、もしもし、太郎ですか? あの、私です、ヒルドです。いや、実は私も携帯電話というものを買いまして。そういえば太郎、君は今何処にいるのですか? レアも一緒なのですよね? 今から私達は貴方のアパートに戻って……って太郎、聞いているのですか??」
ヒルド? ヒルドなのか!?
アパートに戻るって事は、まだ日本にいるって事だよな?? 返事をしていない事に気付き、慌てて言葉を吐く。いやこれは最大のチャンスだ!
「ヒルド!? 何でコレ電話通じてんの!? あ、それより携帯買ったんだ……レアはここにいないよ。日本に置いて来たんで。じゃなくて!! えっと実は今、俺、いや俺達はですね……天界にいて、怒り狂ったヴァルキリー隊に崖の突端に追い詰められてる真っ最中でして……神様に連絡つかない? このままじゃ捕まって処刑されそうなんで助けて欲しいんだけど……」
俺達の天界での騒ぎも、遂に終局を迎えようとしていた。




