ビニール傘と金属バット【外伝】~変人たちのクリスマス(その9)
こんにちは! ワセリン太郎です!
僕にしては珍しい(白目)3日連続投稿の真ん中です! エッ!? 「ワセリンが3日連続更新するなんて信じられない」ですか? 大丈夫! 何と今回は本当に珍しく、既に予約投稿済みであります!!
──十二月、二十四日、午後十一時、十八分。
先程まで賑やかに点滅していたクリスマスツリーの灯火も落ち、灯りの消えた薄暗い部屋の中……目元まで布団を被った鶴千代が、興奮を抑えられぬ様子でボソリと呟いた。
「のう太郎や、さたんくろうすの奴め、本当にウチの所へ来るであろうか?」
彼女の頭を撫でていたロキが、まるで我が子を慈しむ様に応える。
「大丈夫、心配ないわよ。サンタさんはきっと来るから。あっ、でも鶴千代がおりこうさんにして、ちゃんと眠ってないと……もしかすると来ないかもよ?」
スマホを覗き、友人へメッセージを送り終えた太郎も、笑いながら鶴千代に話し掛けた。
「そうだぞ鶴千代。ロキの言うとおり、ちゃーんと寝てないとサンタさん来ないからな?」
「うむ、承知しておる!」
「よしよし、えらいえらい」
「しかし家人が寝静まったところに侵入して来るとは、ほんに空き巣の如き輩じゃの! 太郎もウチのプレゼントと引き替えに家財の類いを盗まれぬ様、充分に気を付けるがよい!」
「お前、マジでサンタさんを何だと思ってんの……」
そこまで聞いた鶴千代は、布団の中でグルリとうつ伏せになり、ツリーから少し離れた太郎の枕元をジッと見つめた。
そこにあるのは……先程部屋に引き上げる際に借りてきた、大家の大きな靴下。ちなみにこれが“キチンと洗濯されたもの”なのか、はたまた“洗濯前のもの”なのかは定かではない。
夜目を効かせ、少し不安気に呟く鶴千代。
「しかし……この借りてきた大家の靴下、確かに大きくはあるのじゃが、誠にウチの所望した物品が入るであろうか? そこだけが気掛かりでならぬのじゃ」
因みに彼女がサンタさんにお願いした品は、“魚のアジ”。それを確認した太郎とロキは、暫く理解が追い付かずに首を捻って困惑する事となったのだが、いくら何度確認してもアジはアジ。良く見ると魚の様な絵まで書いてあり……やはり鶴千代の望むプレゼントは、アジの開きや丸干しといった水産加工品である様子。
で、あれば、当然それも用意しなくてはならない。でないと“クリスマスあるある”のひとつ、“コレジャナイ!”が発生してしまうのだ。
使い古したオッサンの靴下の中に詰め込まれる、魚の加工品。正直、あまり見たい絵面ではないが、それも本人からの希望であっては仕方がない。なのでそれに加えて一つ、何か年相応な別の物も添えてプレゼントにしよう……というのが太郎とロキの結論であった。
話しは戻るが、事前に友人のサトシ達から『靴下がでっかくないと、大きいプレゼントが入らない』などと聞いていた鶴千代は、己の知る限り一番足のデカイ人物……つまり大家に頼み込み、この洗ったかどうかもわからない、巨大でヨレた冬用靴下を借り受けて来たのだ。
だがこの件が、“太郎の部屋にサンタが来る”と、レア達だけでなく、大家達にまで察知されてしまうという、非常に重大な過失を起こすことになろうとは……この時の彼等が知る由もない。
太郎は枕元の大家の靴下から薄ら漂って来る微妙な異臭に顔をしかめ、それから興奮した鶴千代を落ち着かせようと、天井を見上げたまま優しく微笑む。
「大丈夫だよ。靴下ってのはさ、実際その中にプレゼントを押し込むワケじゃなくて……」
──ぴーーーぎゅるぎゅるるるるる──
突然、部屋に響き渡る大イビキ。
「鶴千代お前、人の話を最後まで聞けよ……まあいいけど。ロキ、間違いなく寝たか?」
そう問われ、大イビキをかく鶴千代の鼻を“むぎゅっ”と摘まみ、彼女が本当に寝たかを確認するロキ。
ふと、部屋が静寂に包まれる。無呼吸状態だ。
それから摘まんでいた手を放すと……
──ぶるるるるごぉぉぉぉぉおおお──!!
再び芝刈り機の様な轟音が部屋へと響き始めた。更に念入りに鼻を摘まみ、確認を繰り返す金髪の女神。
「……寝たわ、これ間違いなく寝てるはず。ちょっと待って、アタシいいもの持って来たの」
そう言うとロキは、枕元の豆球を点け、枕の下から絆創膏の様な物を取り出した。そしてそれを……大イビキをかく鶴千代の口元へと貼り付けたのだ。
「これで準備オッケーよ、太郎」
忽然と消える大イビキ。
「ちょっと待て、おま、それ鶴千代に何したんだ!?」
ニヤリと笑うロキ。
「これね、ドラッグストアで試供品を貰ったの。えっと、商品名は安らかテープ……じゃなくて、いびき止めの“すこやかテープ”だったかしら??」
「ちょ、おま、“安らか”って殺すなよ!? ホントに大丈夫なのか? それ」
「大丈夫、ちゃんと息してるわよ。それより太郎、レア達が妙な事をし始める前に……急いで」
「おし、わかった。それじゃ俺、ちょっと行ってくるわ。“彼”も寒い中待機してくれてる筈だし、手早く終わらせないと」
「うん、こっちは任せて。それより気を付けてね? “アイツら”絶対何か仕掛けてくるから」
「わかってるよ、それじゃあロキも手筈通りによろしく……」
そう言うと太郎は素早くジャージに着替え、物音を立てないようにと忍び足で玄関から出て行く。
それを見送ったロキも布団から抜け出し、太郎のパーカーをパジャマの上にサッと羽織ると…… 何故か居間の窓をそっと開け放ち、手に持った懐中電灯を隣の民家の屋根に目掛けてパカパカと点滅させたのだった。
──カン、カン、カン。
寒空の下、ジャージ姿で外に出た太郎はアパートの鉄階段を静かに下り、そそくさと大家宅のガレージへと忍び込む。そして蒼くぼんやりと輝く移動用魔法門の光を頼りに……家主にも内緒で隠しておいた、白い大きな袋を棚の上から引き摺り下ろす。
彼が覗き込むと、袋の中には赤と白で彩られたサンタクロースの衣装、更にガムテープと分厚い少年漫画雑誌が数冊。
「良かった、勝手に隠してたのが大家さんにバレてない。よし、変装セットは無事だ、それじゃあコイツに着替えるとしますか。ああでも、これから先の事を考えると……胃が痛いぞ」
彼はそう呟きながら己の腹へ雑誌を押し当て、それを念入りにガムテープで巻いてゆく。それから背中にも……
そうして暫くの後、大家宅のガレージから……恰幅の良い白髭のサンタクロースが現れたのだ。
彼は、内側に分厚い段ボールの鎧が詰まった己の身体をバシバシと叩き、再び不安気に呟いた。
「殴られてもいいように腹に雑誌は入れたし、その他の部分には段ボールで出来た装甲を詰め込んだ。正直、これ以上にない重装備だぞ? 流石にここまですれば……うわぁぁぁぁ、何だろう、死ぬほど不安だ!!」
サンタはそうして暫く頭を掻きむしっていたのだが、意を決した様に両手で頬を叩き、無理矢理に己を鼓舞してプレゼントの袋を掴むと……一歩ずつアパートの鉄階段を登り始めた。
──カンッ、カンッ……
深夜の木造アパートに、サンタが現れた事を知らせる足音が響く。
高鳴る鼓動を押さえて寒空に伝う汗を拭い、周囲を警戒する太郎は……とうとう最後の一段を踏み越え、二階の踊り場へと到達した。
(あっれぇ? 俺の予想では、ここでレアとミストの奴が待ち構えている筈だったんだけど。もしかしてアイツら、もう寝ちゃってるとか……だといいな)
ある種の嬉しい肩すかしを食らい、少しだけ安堵するサンタクロース。それから彼は再び慎重に歩を進め、二階の一番奥にある自室の玄関のドアを目掛けて……ゆっくりと進行を開始したのである。
一方、こちらも寒空の下、太郎宅の屋根の上に待機する人影が一つ。
彼は先程から冷え切った己の肩をさすり、寒さに耐えながら“その時”が来るのを今か今かと待ちわびていた。そう、彼こそは真なる神の息子、メルクリウスである。
(ははは、サンタの服の下に随分着込んできたけれど、流石に十二月は寒いや。貼るホッカイロ買っておけば良かったな。それよりそろそろかな? 太郎君達からのサインは……)
それから彼は、派手な付けひげのゴム紐をひっぱって顎下へと掛けると、胸元からスマホを取り出し、太郎から送られてきたメッセージを手早く確認した。
(うん。部屋の灯りも消えた様だし、『鶴千代、もうすぐ寝ると思う』……か。鶴千代ちゃん、早めに寝てくれると助かるんだけどなぁ。でも小さな子って大概、こういう日に限ってなかなか寝てくれないんだよね)
そう考えながら、己の子供時代を思い出すメルクリウス。鶴千代だけではない。そう、幼少の彼だってクリスマスの夜は眠れずに……いや、それは誰にとっても同じ事だろう。
(天界は子供達も多くて僕だけの事ではないし、さぞや父上も大変だったんだろうなぁ……)
その時、向かいの住宅の屋根にパカパカと輝く光。そう、これはロキからの“合図”である。
メルクリウスはサッと白髭を顔へと戻し、慎重に屋根から二階の窓を覗き込んだ。
(メルクリウス、急いで!)
手招きするロキを確認し、クリスマスの夜空に舞う赤い影。彼は魔力で作った足場を蹴り、フワリと太郎の部屋へと侵入した。マナ要らずの魔法の行使、まさに神の息子の特権である。
「寒かったんじゃない?」
「いや、僕は大丈夫だよ。それより……」
そう言うと彼は、少しだけ鶴千代の肩を揺すり……暫くそうしてから、諦めた。
「あはは、ダメだね。鶴千代ちゃん、全然起きる様子がないよ。寝ぼけたまま、少しだけサンタさんと出会う作戦は……残念だけど中止かな」
もし可能であれば、そういうサプライズの予定であったのだが……窓枠に腰掛けたまま、肩をすくめて見せるロキ。
「ふふふ、アンタも折角仮装してきたのに残念ね」
「こればかりは仕方がないよ。無理な押しつけは大人のエゴだしね」
彼はそう言うと大家の靴下を手に取り……臭いに一瞬顔をしかめた後、『鶴千代ちゃん、メリークリスマス』と書かれたメッセージカードと共に、袋から取り出したプレゼントの上へ、そっと設置した。
顔をしかめるロキ。
「てかさ、その靴下ホントに洗ってんのかしら? 何か臭うわよね、マジ最悪。水虫とか移りそうだし、アタシそれ絶対触んない様にしてたんですけど……」
「まあまあロキ。大体、我々天界人にはそういった病は関係ないだろう?」
「アンタ甘いわよ。机上論ではそうだけどね、最近自信がなくなってきたわ。そう、アタシはこの目で何度も見たのよ。拾い食いして下痢をしたり、頭の病気を患って回復の見込みがない天界の人間ってやつをね」
「ははは……それじゃあ僕はこれで失礼するよ。そうだ、太郎君にも宜しく伝えておいて? というか、状況的に僕らより彼の方が心配なんだけど……」
再び場面は二階の踊り場へ。
「うぐぐ……や、やめろ」
その頃、太郎扮するフルアーマーサンタは、お約束というか何というべきか……馬鹿娘共に捕縛されたうえ、レアから見事なネック・ハンギング・ツリーを食らって空中へと吊し上げられていた。
しかし、これは予想の範疇。
実は最初から、太郎はデコイだったのだ。
それで本来なら捕まった時点で『俺、サンタじゃなくて太郎だから』とネタバレし、今頃レア達が残念な表情を見せている筈だったのだが……どんな事にもアクシデントというものは付きものらしく、事態は予想もせぬ方向へ。
太郎は、地に足の付かぬまま思い返す。一体何故、この様な状況になってしまったのかを。
事件は……彼が二階の踊り場を自室に向けて進み、丁度ミストの部屋の玄関の前を通り過ぎようとした瞬間に起こった。
(あれ……? 俺の予想では、ここでレアとミストの奴が待ち構えている筈だったんだけど)
そう考えた刹那──
踊り場の屋根の鉄柵へ逆さまにぶら下がったミストが、まるで振り子の様に現れ……それに驚いて気を取られる太郎の背後から、『はい、どーーーーんっ!!』と、玄関扉が思い切り蹴り開けられる。
「ぐぅえっ──!?」
無防備なまま背中を強打された太郎は吹き飛び、勢い余って手摺りから落ちそうになるところを……連携するミストにキャッチされ、素早く首を締め上げられた。
「ギ、ギギギ……な、何をする……?」
「へへへ。サンタの野郎、やっと捕まえた! 今年こそはアタシらにプレゼントを置いていって貰うぜ!!」
要は彼女達、最初から追いはぎ強盗をする気でサンタが現れるのを待ち構えていたのだ。『ここまでか』と観念し、己の正体を明かすサンタクロース。
「お、俺はサンダじゃだくで太郎だっで……」
笑う緑のジャージ。
「太郎? へへ、んな事言って誰が騙されるかよ! サンタのおっさん、アンタと太郎がグルだって、アタシらとっくにお見通しなんだぜっ! って事でプレゼント全部置いていって貰うし! さあ、諦めてアタシにカイエンと青山の土地を寄越せ……」
予想外の展開。
太郎はようやくここで、ある重大な要因を見落としていた事に気が付いた。そう、それはこの二人が……なんと未だにサンタクロースの存在を疑う事なく信じているという事だ。
(な、何てこった!? マズイ、これは想像していたより遙かにマズイぞ……)
当初、太郎はこういう前提で準備を進めていた。
まずレアにせよミストにせよ、彼女達が大概にアホなのは既に周知である。しかし流石に良い歳こいてサンタさんなぞ信じてはいまい……そう考えていたのだ。つまりあくまで“太郎の持ってるプレゼントを奪え”という動機で彼女達が行動を起こして来る。そう予想していたのだ。
なので自分が囮となってレア達の襲撃を引き受け、その間にメルクリウスが自宅に入り鶴千代へプレゼントの引き渡しを完了。それからプレゼント袋に入れてあるお菓子の類いをレア達に与えて……というか、強奪させてミッション終了。と、そうなる筈だった。
しかし、現実は違った。
なんとこのアホ共、心清らかな幼児よろしく、未だにサンタさんの存在を心から信じ切っているのである。そうなると太郎の描いたシナリオは根底から崩れ去ってしまう。
そしてその結果、彼女達の行動はこういう形として現れる事となったのだ。
“サンタを襲い、全てのプレゼントを奪い取れ”と。
「ぐえぇぇぇぇぇっ──!?」
〆られる、サンタのオッサン。
「へへへ。オッサン、そろそろ酸欠で意識が持たないんじゃね? ほら、諦めてさっさと“世界中に配るはずだったプレゼント”を全部アタシらによこしな!」
ミストの発言を聞き、遠くなる意識の中でギョッとする太郎。
(な、何てやつらだ──!? 神丘市の子供の分を全部というならまだ理解できなくもないが、世界中の分を全て寄越せだと……? コイツら、ここまでアホだったのか!? いかん、甘く見た俺の読み違いだ、このままじゃあサンタとして殺される! なんとか反撃して隙を作り、変装を解かないと)
太郎は必死に頭上のミストを見上げるが、彼女は膝裏を天井の金属ポールへ引っ掛け、まるでコウモリの如くぶら下がったまま、彼の首をギリギリと締め続ける。
(こ、このままじゃマジで落とされる……)
彼は必死にミストの腕を振り払おうとするが、当然、一般的な男の膂力が戦乙女のそれに遠く及ぶ筈もなく。
「お、おのれ……」
(力じゃ敵わない。だが手足の長さだけは俺の方が上だ──!!)
意を決し、その手に嵌めた手袋を投げ捨てるサンタさん。それから彼は……
大きく万歳して上空へ手を伸ばし、逆さまにぶら下がったまま首を絞めてくるミストの両胸を、むんずと掴んで揉みしだいたのだ──!!
「いちにぃさんしっ! いちにぃさんしッツ――!!」
「ぎゃあああぁっ!? ちょ、コイツきもっ──!!」
叫び声を上げる緑のジャージ娘。直後、太郎の首を締めていた指から力が抜け落ち……
(っっつしゃあっ──!!)
彼は大きく息を吸い込んでミストの腕を振り払い、これまでに失われた時間を取り返すかの如く過呼吸を繰り返した。
「あっ!?」
驚いてバランスを失い、ぶら下がっていた天井のポールからスルリと落下するミスト……だが彼女は、突如空中でダンゴムシの様に丸まって、怒りの表情を露わにした──!!
「てめサンタ、死ねやこらぁああああっ!!」
落下するミストから繰り出される、強烈な両脚蹴。それは彼女がアパート一階の敷地へと着地する前に、稲妻の如き勢いで太郎の背中へと吸い込まれてゆく。
──ウェイぶうふぅぇッツ──!?
奇妙な声を上げ、肺の中の空気を押し出されつつ、アパートの壁へと叩きつけられる太郎。
それから一階へ滑り落ちたミストが怒りの表情で階段を上ろうとした時……ノソリ、先程太郎を手摺りに叩きつけた扉が開き、とうとう彼女が現れたのである。
そう、レアだ。
「で、出やがったな!」
太郎は慌てて白髭とサンタ帽を取り払い、己がサンタではないと証明しようとしたのだが……刹那、レアが恐るべき速度で距離を詰め、彼の身体の自由を一瞬で奪い去ったのだ。
太郎の視界がブレ、自然と両手が絞首台を掴む。
ネック・ハンギング・ツリー。
太郎の足が踊り場の地面と別れを告げ、バタバタと宙を蹴った。
「うぐぐ……や、やめろ! 俺は太郎だ!」
「ふん。サンタ貴様、随分と私のところにプレゼントを持って来なかったな! ここで会ったが百年目、貴様の所有するプレゼントを根こそぎ奪ってくれる!!」
「だから俺はサンタじゃなくて太郎だってば!」
そう言われたレアは一瞬彼の顔を見上げ、不思議そうな顔をした。
「太郎は髭生えてないぞ?」
「こ……これは付け髭なの! 大体お前、どう考えても声が俺だろーが!!」
暫く首を傾げていたレアだが、再び自信に満ちたアホ面でこう言い放つ。
「ふふふ、アホめ。何が声だ! そう易々とこのレア様が騙されるものか! そもそも太郎はチンコが小さいのだ。それでもと言うなら己のチンコを見てからものを言うが良い!!」
「ち、ちがう! 俺はチンコ小さい! チンコ小さいの!!」
事実、過剰に盛り上がるサンタの股間。しかし残念ながらそれはチンコではなく、詰め物の段ボールである。太郎はこの時、予め股間を強打しない様にとその辺りを重点的に段ボールで“強化”していた事を真剣に悔やんだ。ちなみにここだけの話、少し……いや、多分に見栄も入っている。
(ダメだ。ミストもそうだが、特にコイツは話し合いで解決出来る相手ではない!)
そう思った太郎は先程と同じく、レアの腕を掴んでいた両手を離し……彼女の両胸をがっしりと掴む──!!
「食らえ――!!」
だがしかし……
「……ん? 貴様、一体何をしている? このエッチマンめ!!」
そう、取り分けこの女に羞恥の心は……まあ、さほども存在しない。とにかく彼女は、昼間から河川敷の土手で平然と、いや悠然と野グソをやってのける程度には、羞恥心と縁の無い人生を歩んで来たのだ。
レア曰く、河川敷の堤防でウンコをする際は斜面に向かってしゃがみ、下から徐々に登りつつ脱糞すると良いらしい。そうすればウンコを踏まずに済む。
その点についてはまさに熟練の手練と呼んでも差し支えない様に思えるが、日頃ポケットティシュを持ち歩かぬ彼女。それが“事を済ませた”後、一体どうやって尻に付着したモノを処理しているのかは……この世には神ですら知り得ぬ事象が存在するのだという、良き事例であるのだろう。
太郎は慌てて懸命に胸を揉むが、レアは表情一つ変えずにギリギリと首を締め上げてくる。
(き、効かない……だと!? なんてこった、こいつに羞恥心はないのか……? てか、デケエ!!)
己の不運を嘆く太郎。そうこうしている内に、目の前のあんぽんたんに加えて別の気配も感じ、吊り上げられたまま視線を横に這わせると……そこには怒りの形相で、指をボキボキと鳴らしつつ階段を上ってくるミストの姿が。
(あっ……俺、終わった)
遠のく意識の中……僅かでも彼に希望は残されているのだろうか?




