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敗北

こんにちは! ワセリン太郎です! 一時間おきの連続更新の二回目です! あと一回更新しちゃいます!

「それじゃ……いくわよ? 覚悟はいいかしら?」


 そう言うと突然建物の屋根から、霧の様に姿を変えて消え去るロキ。レアも何かを察知したのか、己の背後の空間へと鎌を向けて斬り付ける!


 しかし捉えたのはロキの残像で……再び周囲の様子を伺うレア。しかし次の瞬間、初めてレアの表情に焦りが見えたのだ!


「レア、危ない!」


「──!?」


 突如レアの周囲に現れた多数のロキ! その数、六人以上はいるだろうか? それが一気に様々な角度から、レアを目掛け、手に持ったつるぎで斬り付ける!


 刹那、垂直に空中へ飛翔して、斬撃を回避するレア……しかし、上空にはもう一人の別のロキが待ち構えており、飛び上がってきたレアを踏みつけ、地面へと叩きつけたのだ。


「──グッ!?」


 衝撃で盾を取り落とすレア。すかさず至近距離に現れた”ロキの分身”がそれを遠くへ蹴り飛ばす。レアも大鎌を振るうが……その”分身”は、斬られる前に笑いながらスウッと消えて行った……


「おいロキ! 汚いぞ! 一対一で正々堂々と戦えよ!」


 俺の野次に、こちらを振り向く”分身の中の一体”。


「はぁ!? これがアタシの能力なんだし、しょうがないじゃない!」


「ロキずっこい……」


 呆れた様にロキを見る、ロッタちゃんの視線に耐えかねたのか……


「わかったわよもう! 分身しなければいいんでしょ!? ホントうっさい外野ね!」


 案外素直に応じるロキ。俺はこの時、少しだけ”ある事”が心の隅に引っかかり始めていた。そう、この女……確かに強く、恐ろしい存在ではあるが、”どことなくポンコツの香り”がするのだ。

 いや、しかし”悪神ロキ”は人を欺く事に秀でていると聞く……甘く見て油断してはいけないのかも知れない。


 再び鎌を振り回し、一人へ戻ったロキへと襲いかかるレア。しかし……先程の分身とは違い、明らかにロキの身のこなしが速く、随分と空振りが目立っている。


 連続する鎌の一撃を、軽く剣でいなし(・・・)つつ、少し飽きてきたような様子の悪神。


「まあ……こんなもんよね? 少し力を見誤ったわ。さっきの言葉は訂正しないとね、残念だけどアンタじゃクソジジイやフリッグのババアには……及ばない。戦乙女(ヴァルキリー)としては……最高クラスに近い(・・)のは認めてあげるけどね」


 そう言うと彼女は……急に手に持った神器レヴァンティンを何処かへ仕舞ってしまう。


「ホント戦乙女(ヴァルキリー)にしては面白い相手ではあったし、そこそこ楽しかったわよ? でも、もうおしまい。あーあ、レヴァンティン(こんなもの)まで出すなんて……何やってんだろ? アタシ」


 会話に全く応じる事無く、ロキに斬り付けるレア。



 しかし次の瞬間。突然レアの背後にロキが現れ、詠唱もなしに……



「まあまあ楽しめたわ。でも、これで終わりよ!」


 

 ──ドッ!!


 光の槍が……レアの身体を貫いたのだった。


 直後に爆風が起き、立ちこめる土煙でレアの姿が見えなくなる。


「──レア!?」


「つっ!? ──武装展開──!!」


 表情に怒りを露わにして武具を召喚し、ロキに襲いかかるロッタちゃん!


「子供は寝てなさいな?」


 しかしロキに額を軽く触れられ、突然気を失ってしまう彼女ロッタ。俺は倒れて動かなくなったレアへと駆け寄るが……その姿は先程までと違い、一対のみの翼を生やしたいつものツナギ姿へと戻っていた。外傷はない。しかし……


「おい! レア! 返事をしろ!」


 返事はなく、倒れたまま全く動かないレア。目の前の事態に動悸が起きそうになり、手や足の震えが止まらない。


「おい! おいってば! 何寝てんだよ! 起きろよレア! 返事しろよ!? ……頼むから返事してくれよ!?」


 

 倒れたレアを必死で揺する俺へ、ロッタちゃんを抱きかかえたままのロキが近寄り、呆れたように声を掛けてくる。


「ちょっとアンタ、何泣いてんの!?……まさかアタシがそいつを”殺した”とか思ってないでしょうね? 嫌よ、そんなの気持ち悪い。ちゃんと加減はしておいてあげたんだから、死んでないわよ!」


「ほ、本当か……?」


「それにそいつ……背中に何か変なもの入れてない? ”異常に硬くて”魔法が拡散してまともに通らなかったんですけど!」


 しかし、レアはピクリともしない。俺はロキを睨み付けながら声を荒げた。


「でも全く動かないぞ! 本当に死んでないんだろうな!?」


「だからそう言ってんでしょ! そいつ、アンタが思ってるより遙かに頑丈なんだから!」



 直後……


『んごぉぉぉぉ……』


「あ……」


 突然周囲に響き渡る”聞き慣れた轟音”。それは俺とパッ君が毎朝アパートで、隣の部屋との壁ごしに被害に合っている”あの音”だった。そう、レアのイビキである。


「よ、よかった! い、生きてる!」


 ──ブッ!


 突然のイビキに加えて寝たまま”屁”までこく、アホの子。


 オナラの臭いに鼻をつまみつつ喜ぶ俺の姿に、”やれやれ”といった表情のロキ。


「うわ、臭っ!? だからもう……さっきからそう言ってんでしょ? 早とちりして馬鹿みたい。それにそいつ、もしかしてだけど、初めて”神気を解放”したんじゃない? アタシの想像が当たっているなら……慣れない事をしてすごく消耗してる筈よ? 最後の方はかなり力も落ちていたしね。まあ、どちらにせよアタシには及ばないけど」


 気を失ったロッタちゃんを、そっと地面へと寝かせるロキ。そういえばレアが敗北した今、俺達はどうなってしまうのだろう? 身動きのとれるのは俺一人……だが流石にこのまま”神”へと戦いを挑むのは愚かな行為だ。とりあえず一旦、ロキの出方を伺う事にした。


「それじゃアタシは約束通り、この”神気の結晶”と”万能薬”を両方貰って行くわね?」


 まずい。”神気の結晶”はともかく、万能薬が無いと……アルヴィトさんの命に関わる。少し考え、俺にしか出来ない事を模索した。


「なあ、ロキ。最初、万能薬はくれるって言って……俺に一度、渡したよな?」


「はぁ? その後、決闘の際に契約したでしょ? 神の約束は絶対よ。ダメ、二言はないわ」


 だが食い下がる俺。


「頼むよ、それが無いとアルヴィトさんが死んでしまうんだ。誰かが死ぬのは嫌なもんだろ?」


「アタシがやったんじゃないし……」


「でも、”結晶”の在処を知る為、フリストに”幻覚”見せて彼女を刺させるように仕向けたのはロキじゃん? 原因はお前って言っても……過言じゃないよなぁ? 流石に目の前でアルヴィトさんが死んだりしたら、手当をしてくれてるシギュンも……ショックでバイトとか行けなくなるかもなぁ? 可哀想に。そうなったら生活費とかどうするんだろうなぁ? ねえ、どうするのさロキお姉ちゃん」


「うっ! そ、それは……」


 たじろぐ悪神。俺は彼女を暫く観察していて”ある事”に気付いたのだ。まあ、ロキの力は確かに強大かも知れない。あれだけの力を発揮した”暴走レア”を最終的には容易に撃破し、無力化した。その力は流石”神”とも言える。


 しかし、同時にコイツは……”貧乏神”でもあるのだ。同じく現在、貧乏真っ只中である俺の目は誤魔化せはしない。同族の臭いというヤツだ。いや、恐らく俺よりひどい状況だろう。神同士にしか理解し得ない次元があるとすれば……当然、文無し同士にしかわかり合えない金銭に対する感覚というものも存在するのだ。

 

 恐らく日中引きこもりで部屋着と化している着古したパジャマ。”すごく安いから”という理由だけで購入したであろうゴムスリッパ。俺も二つ買ったし。


 着る物に無頓着な可能性も考えた。だが最初に逢ったとき、”外でパジャマ着てる”と指摘され、顔を真っ赤にして憤慨していた事を思い出す。要は”年頃の女の子”よろしく恥ずかしかったのだ。俺は……その辺りに交渉の余地を見いだす。


「ロキ、では俺と”別の交渉”をしないか? さっきのはレアとの契約だろ? それとは別のものと思ってくれていい」


 レアもロッタちゃんも動けない。何とかこの不利な状況を脱した上で、アルヴィトさんの為に”万能薬”だけでも取り返さねば。そう考えた俺は、目の前の”悪神”相手に”ある交渉”を持ち掛けたのだった。

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