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覚醒

 こんにちは! ワセリン太郎です! 現在進行中のレアさん奇行、天界奪還編ですが、実は……いつか来たる【終章】への伏線が微妙に見え隠れするよう、案外適当(毎度の如く雑ですが)にちりばめられております。

 100回記念の番外編で書いた様に、ちゃ~んとお話は完結する予定でおりますので、宜しければ最後までお付き合い頂けると幸いです! え!? 更新が遅い!? 大変申し訳ございません!!(土下寝)

 低い位置で腕を組んだまま、『どうせ勝負にもならない』とでも言いたげな表情でロキが吐き捨てる。


「さ、間抜けな戦乙女(ヴァルキリー)さん。早く封印解除薬(そのくすり)を使いなさい? まさかそのままアタシの相手をするつもりってワケじゃないでしょ?」


 メルクリウスから渡された”小瓶”をツナギのポケットからゴソゴソと取り出し、嬉しそうに答えるレア。


「うむ! 太郎がどうしても見たいというのでな! 仕方なく使ってやるのだ! 楽しみだな!」


「……バッカじゃないの? アンタ、自分の置かれてる状況全く理解してないわね?」


 天界へ来る前に預かった魔法の小瓶は二つ。レアは戦闘中にそれを落とさない様、残りの一つを俺へと手渡し預けてくる。


 レア……ロキに勝てるのか? いや、神様(カミサマ)の話を思い出すと、やはり可能性は低い。


 自然にゴクリと喉が鳴る。いつの間にか隣へ寄って来たロッタちゃんが、いつもの少し眠そうな瞳に不安の色を灯し、怯えた子供の様に俺の手を握り訴えてきた。


「太郎……レア本当にだいじょうぶ?」


 正直、これから一体どんな戦いが行われるのかはわからない。俺は彼女の問いに答える事ができず、その震える小さな手をグッと握り、再び対峙する二人へと視線を戻した。






「さあ、いつでもいいわよ? かかってらっしゃいお馬鹿さん」


「うむ! それでは正々堂々勝負だ! 私の聖剣エクスカリバーで頭をゴツンされて泣いても知らんぞ?」


 そう言い、小さなガラスの小瓶のフタを開けたレアは、それを口へ持っていき……!? 


 目を見開き慌てるロキ。


「ちょっと! アンタ一体何してんの!? それ飲むものじゃないから! 割るの! 地面で割るの! 死ぬわよ!? そんなモン飲んだら! 戦乙女(ヴァルキリー)の資格試験の基礎問題でも出るでしょ!? 何でアンタみたいのが隊員資格を持ってるワケ!?」


 驚いた様な顔のレア。


「……そうなのか? ああ、そうだ! わ、割るものだったな! 今思い出したぞ! ほ、本当だぞ! 知ってたもんね!!」


 ……絶対ウソだ。


 俺の隣で『わたしでも知ってる……』と項垂れるロッタちゃん。強ばっていた肩から一気に力が抜け、無意識に止まっていた呼吸が再開された。


 



 自分の足元へと小瓶を投げつけて叩き割るレア。


「で、ではゆくぞ! ……えっと、何だったっけ?」


 だぁーっとため息をつき、脱力するロキ。表情には呆れや脱力感が滲み出ている。そりゃそうだろう。


「”神気解放”……アンタ、いい加減にしてよね」


「あ、ああ! そ、そうだった! ゆくぞ! ──神気解放──!! で合ってるよな?」


 ──次の瞬間、レアの周囲に”虹色の光の帯”が大量に発生し、彼女の姿を覆い尽くしてゆく!! 次第にそれが収束し、その中央から天にも届かんばかりの巨大な光の柱が現れ……一気に膨れあがると、周囲から闇を奪い去って行った。


 荒れ狂う暴風の中、耳を押さえながら必死にロッタちゃんが訴えかけてくる。


「太郎! 何か講義で習ったのと……違う!」


 確かにそうだ。ヴェストラの街でヒルドが同じ状態になったが、どうもあの時の”黄金の神聖な光”とは何か様子が違う。

 何というかとにかく今回の輝きは、見た目が雑というか……どうも派手で品が無い。発生源の人間性を映し出しているとしか思えないのが非常に残念である。


 直後、光の柱の中から美しく舞い散る様に……ではなく、ポンポンポンポンと乱雑に周囲へまき散らされる虹色の飛沫。そしてその中から……のそり、輝く三対の翼を持ち、グレーのツナギの上に輝く武具を纏ったレアが現れたのだった。


 やはりその髪はいつもの金髪ではなく、ヒルドの時と同じ様に白金の光を放ち、瞳には紅い炎を讃えていた。そしてその右の手には……大きく長い赤紫色の”鎌”、左手には不気味な女性の顔の意匠の施された”盾”が握られている。


 現れたレアの姿を見、何事か驚いた様子のロキ。


「三対の翼……こいつ一体何者なの?」


 それが何だと言うのだろう? 良くわからない俺は、同じく隣で目をパチパチさせているロッタちゃんへと説明を求めた。


「ロッタちゃん、ロキは何を驚いてるの? 俺には良くわからんのだけど」


「わからない……でも強い力を持った戦乙女(ヴァルキリー)が拘束を解かれると、翼が二対、左右で四枚になる。ヒルド姉様や隊長達がそう。でもレアは三対で六枚……そんな話聞いた事ない……」


 翼の数が多い程、力が強い……みたいなハナシなのか? いや、でも神であるロキには翼がないし……やはり人間の俺にはよくわからない。そうこうしていると、暫く己の姿をジロジロと確認していたレアが、ロキの方を……ギロリと見据えた。


 あれ? その目つきは鋭く、いつもと雰囲気が違うような……? 何かこう、普段の滲み出るアホっぽさが足りないというか、レアという存在の大半を占めている筈のバカっぽさが不足している様な違和感が。ロキもこれまでのやりとりから気付いたのか、怪訝な顔をし、レアへと声をかけた。


「アンタ……ホントにさっきのヤツと同じ人格? 中身入れ替わったみたいでなんかキモイんですけど」


 しかしレアの返答は意外なものだった。


「敵対行動の可能性を認識。貴殿にその意思はあるか?」


 更に怪訝な顔をするロキ。


「はぁ? だから”()る”って言ってんでしょ? やっぱりアンタ、何かおかしいわね。どーなってんのよこれ」


 ──次の瞬間。


「……排除する」


 突然、恐ろしい勢いで右手の鎌を振りかぶり、ロキへと襲いかかるレア。


「──つっ!? いきなりねっ!」


 すんでのところで上体を捻ってそれを躱し、何も存在しなかった空中から突如、長めの片手剣を取り出したロキは意趣返しとばかりにレアの身体を斬り付ける。しかし……




「うそ!? ミスリルを簡単に斬り裂くなんて……アンタその鎌、一体何なのよ……?」


 ロキの振るったはずの剣がレアの鎌の一撃により、バターでも斬り飛ばすかの様に、接触した部分から無くなってしまったのだ。それは折れたというより、”溶かされた”と表現する方が正しいのかも知れない。問いかけを無視し、依然無言のまま睨むレアを見て、何かを呟くロキ。


「……アダマスの大鎌。いや違う、不完全か?」


 空中へ逃れて距離を取り、早口で呪文を詠唱する彼女。周囲には細い光の矢が無数に現れ、それがロキの合図で一斉にレアへと襲いかかる。一歩も退かず、鎌を高速で回転させて全てを撃ち落とすレア。


 次はレアが早口で何かを詠唱し始める。いや、やはりこれはおかしい。アイツは本来初歩的な回復魔法のスペルすら三歩歩けば忘れてしまう、ニワトリと同等の頭脳の持ち主だ。いや、逆にニワトリに対して失礼かも知れない。

 それが今はどうだ? 俺には内容こそ理解できないが、高速で長い文節の呪文を詠唱し、何らかの魔法を放とうとしており、これを異常事態と言わずして何と表現すれば良いのだろうか?


 ──そして次の瞬間。


「──Artemisアルテミス──」


 

 レアの周囲に実態化したおびただしい数の銀色に光輝く矢が、天高く舞い上がり敵へと向かって降り注ぐ。それは恐ろしい密度と広い範囲であり、恐らく変幻自在のロキでなければこの一撃をもって決着がついていたかも知れない。


 身体を一瞬、紫色の霧へと変えてやり過ごしたロキが叫ぶ!


「ちょっと何こいつ!? 女神を概念武装として使うなんて!? ふざけてんじゃないわよ!」


 よくわからないが、随分とロキが慌てている。もしかしたらこのまま勝てる!? 通常であればそう考えたかも知れない。しかし今の俺は、何故だかそんな気分にはならなかったのだ。事実それより気になる事がある。


 そう、レアが人に……いや、人じゃなくて神ではあるのだけれど、ややこしいのでそこはこの際どうでもいい。

 レアが人間に”やいば”を向けているのだ。いつものアイツならば小汚い拾い物の金属バットを振り回し、何も考えずにドツキに行っただろう。しかし今は違う。今のアイツの手に握られているのは”(やいば)”。人の生命を奪い取る刃だ。何故だか俺はその事がたまらなく嫌なのだ。


 目の前で行われているのはいつもの”バカバカしいドツキ合い”ではなく、人同士の殺し合い。


 (やめろ……もうやめろ)


 激しく撃ち合う応酬の中、声は二人に届かない。しかし俺は心の中でそう何度も呟いたのだった。

 

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