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八方塞がる

こんにちは! ワセリン太郎です! ようやく更新する事ができました! ごめんなさい!

「さて、シギュンをこちら側の人質としたのは良いとして……これからどうしたもんかねぇ。私は研究開発に関しては得意ではあるのだけれど、こういったはかりごとの類に関してはさっぱりでね。ねえ、太郎君、どうしよっか?」


 俺の方を向き、困ったような顔で両手を軽く上げて”お手上げだ”と言わんばかりのポーズを見せるアルヴィトさん。


 先程から俺も、無い頭を捻って色々と考えてはいるのだが……どうも打開策と言えるものを発案するには至っていない。まあいくら考えようと、要するに俺達だけでロキを相手にするには戦力が足りないのだ。


 実際のところ、ロキの実力とは如何なものか? と、亀甲縛りにされたままのシギュンに訪ねてもみたが、やはり帰ってきた返答は俺の予想と似たようなものだった。とにかく幻術に長け、また別格の神気を持ち、絶大な力を誇る女神を相手に戦うには……かなりの危険を伴うそうだ。勝算はない。


「アルヴィトさん、やはり援軍が必要ですよ。どうも俺達だけでどうにか出来そうな相手には到底思えませんし」


「う~ん、やっぱりそうだよね。でも移動用魔法門(ゲート)を再び解放して神様(おじいさま)達をこちらへ呼び込むとなると、門の設定を変える為に、魔導具の管理開発室に行かないといけない。恐らくはロキはそれを狙って”待ちに入ってる”んじゃないかなぁ? 私達が”のこのこ出て来る”のをね」


「そんで一網打尽……ってワケですね」


 確かにロキが慌てる必要も無い。彼女はこちらがしびれを切らし、打って出るのをゆったりと待てば良いのだ。あれ? そうなると少し気になる事が出てきた。


「アルヴィトさん、良く考えたら俺達なんて放置しておいても、ロキには何のデメリットもないのでは? もしかして既に無視して放置されてる可能性も……」


 これには隣で話を聞いてきたロッタちゃんが首を横に振り、答えた。


「ん……そうじゃないと思う。私達には移動用魔法門(ゲート)の設定を変える為の”切り札”があるから。もし設定の上書きが出来たら、ロキは一気に不利になる」


 ああ、神様(カミサマ)が言ってた”緊急時用の神気の結晶”ってヤツか? 以前、魔法門の制御は”神様レベルの膨大な神気を持った者だけが行える”と聞いた気がする。それを代行して誰でも行えるのが”神気の結晶”だ。

 つまりロキはその切り札を怖れ、逃げ隠れする行先のわからない残党達を燻り出そうとしている訳か。俺がそう納得していると、アルヴィトさんがふと何かを思い出したようにレアへと問うた。


「そうだレア。君さ、以前”自力で勝手に日本へ顕現した”とかいう噂を聞いたんだけど。あれって本当かい? もしそうなら一体どうやったんだい?」


 不思議そうに首を傾げるレア。


「えっと……う~む。あれは……そうだ、思い出したぞ! まず英雄を召還しようとして、ビビッとなって、ズドン! となったのだ! あと、茶色かったな! それでピポンピポーンと音がしたのがコンビニで……」


「うん、何言ってるのか良くわからないや、聞いた私が馬鹿だったよ。でも例えそれで日本へ行けるとしても……最終手段だね。もし私達が天界を脱出してしまうと、移動用魔法門(ゲート)を再度解放する手段が失われてしまう事になる」


 確かに、それこそロキの思う壺となるだろう。などと考えていた俺はふと、隣でじっとしている”先程現れた人物”が少し気になった。フリストと名乗る少女だ。この状況のプレッシャーに耐えているのだろうか? どうも顔色が良くない。これにはレアも気がついたようだった。大丈夫だろうか?


「おい、フリスト。大丈夫か? 顔色が悪いぞ? ポンポン痛いのか? お医者さん行くか?」


 レアの問いに、額に少し汗を滲ませたまま答える彼女。


「……いえ、自分は……大丈夫……です」


 しかし表情は暗く、どうもその様には見えない。随分と体調が悪そうだ。アルヴィトさんが皆のやりとりを見て、フリストへと指示を出す。


「慣れない事で疲れてるんだよ。フリスト、暫く休んでいなさい。そこの私の昼寝用のベッドを使っていいからさ。休息も戦いの内だからね? これは命令だよ」


「い、いえ……自分は……大丈夫です!」


「だーめ。ロッタ、彼女を少し休ませて」


「ん……わかった。フリスト、こっち来て少し休んで」


「ああ、それと寝る前にこれを飲むと良いよ、ハーブティーさ、リラックスできる。今淹れるからね」


 そう言ってアルヴィトさんが棚から茶葉を取り出そうとした瞬間、何かが急に室内を走った。

 

 ──ドスッ


「……えっ?」


 妙な感覚を覚え、その”何か”が走った先を見る。こちらへ顔だけ向け、背中を見せているアルヴィトさんに……何故かフリストが体当たりをしているのだ。そして二人ともじっと動かない。


 ……何だ? 何をしている?


「フ、フリスト……な、んで……?」 


 みるみる内にアルヴィトさんの表情が苦悶に歪み……そのまま彼女は床へと倒れ込む! えっ!?


 ──咄嗟に走るレア。


「フリスト! お前何をしている!? ア、アルヴィト姉さん!? た、太郎! 血だ! 血がたくさん出てる!」


 俺も慌てて近寄ると、そこには着ていた白衣を真っ赤に染めて呻くアルヴィトさん。振り向くと……ダガーというやつだろうか? 刀身のうねる短剣を両手で握りしめ、震えたままのフリストが。


 彼女が刺したのか!? 一体何故!? 俺が驚いていると、暫くしてフリストは短剣を床へと落とした。


 そして……


「そ、その女はアルヴィト姉様なんかじゃありません! ロキです!!」


 と、そう叫んだのだった。 

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