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縄と亀と女神

 こんにちは! ワセリン太郎です! いやぁ、年度末から新年度にかけては忙しくて嫌なものです。ずっと『レアさん奇行』の最新話が投稿されなかった為、どうも友人達の間で【ワセリン死亡説】が浮上していたらしく……

 兎に角、いつも読んで下さる皆様、更新が滞って本当に申し訳御座いません。早く続きを書いていきたいのですが……何分忙しく、ご容赦頂けると幸いです。

 レアの大声を聞き、慌てて秘密の部屋を飛び出して来たアルヴィトの眼前には……凄惨な光景が広がっていた。トイレの個室には下半身丸出しで気を失った男女が二人。


「これは……シギュン!? いや、実に興味深い状況だね。一体何をどうしたらこうなったんだい? と、とりあえず二人共気絶している様だし、一旦研究室に運ぼうか」


「うわ……太郎、えんがちょ。何か変なのぶら下がってる……」


 顔をしかめるロッタちゃんへと鼻をつまんだままのレアが言う。


「ロッタ、良くわからんが太郎はウ○コまみれの様だ。ばっちいので触る時に気を付けた方がいいと思うぞ! 股からも”小さなウ○コみたいなの”もぶら下がってるしな! あと、そっちの邪神もお尻拭いてないそうだ。汚いな!」


「レア、ロッタ。とりあえず私が二人に浄化魔法を掛けて清掃するから……というか彼のズボンは何処へいったんだろうね? もしかして隣の個室か? あ、鍵が掛かってる、ここか」






 


 あれ……ここは? 失われていた視界がゆっくりと戻る。俺は気を失っていたのだろうか? 目を瞬かせて頭を振っていると、急に先程の記憶が蘇ってきた。


「そ、そうだ! シギュン! シギュンはどうなった!?」


 慌てた俺が隣を見ると、そこには座ってお菓子を食べるレアの姿が。


「あ、太郎やっと起きたか! 心配するな、シギュンとかいうのは私がぶちのめしてやったからな!」


 マジかよ。悪い人では無かったし何かちょっと可哀想な気もするが……


「つーことは俺は助かった……んだな?」


 背後からアルヴィトさんの声が掛かる。


「うん。でも君、便器に顔から突っ込んで大惨事だったけどね。あ、前歯が四、五本飛んでたから魔法で修復しておいたよ」


「ま、マジすか。あ、ありがとうございます……」


 全くレアのアホは加減というものを知らないのだろうか? いや、知るワケがない、その件については今更である。

 でもまあ、今回はそのお陰で助かったのだから良しとしておこう。俺はアルヴィトさんへと治療の礼を言いつつ、ふとある事に気がついた。


「そういえば、そのシギュンはどうなったんです?」


「ああ、彼女かい? どうも扉ごと蹴り飛ばされた勢いで、便座の後ろの貯水タンクに後頭部を打ち付けたらしくて現在も気絶中。とりあえず怪我は治してやったけどさ、魔法でも使われた日には私じゃ手も足も出ないからね。なので神気を封じ込める拘束具で、厳重に力を封印させて貰ったよ」


「そうですか、ならとりあえずは安心ですね。で、今どこに?」


 この部屋は狭くはないが、そう極端に広くもない。しかし何処にもシギュンの姿が見えないのだが……


 俺の不思議そうな顔に、ロッタちゃんが両手の人差し指でクイクイと天井を指さした。その先へと視線を移すと……


「あの……これ、亀〇縛りっスよね……?」


「うん、まあ」


「ちょ!? 何やってんすか!? 絶対これ個人的な趣味入ってますよね? 変な涎玉噛ませてるし!? あっ! 涎落ちてきた!?」


「一度やってみたかったんだよね。あ、ちなみにその涎玉には特に意味はないよ? 何より雰囲気を重視してみたのさ」


「いやいやいや! トイレに侵入した俺が言うのも何なんですけど、この人一応女神様でしょ!? 亀〇縛りにして涎玉噛ますとか! パンツ見えてるし……いや、俺も嫌いじゃないですけど! むしろありがとうございます!?」


 首を傾げるアルヴィトさん。暫くすると彼女は、『ああ、』といった様子でおもむろにポケットからスマホを取り出した。


 ──カシャッ!


「太郎君、やるね。写真撮っておいて後で”強請ゆすり”に使おうだなんて。あ、全裸に剥いてからにすれば良かったかね? レア、ちょっとヤッちゃいな」


「やめたげて! この人、何か苦労人っぽいしそこまでにしてあげて!?」


 そうして俺達が騒いでいると……


「うぅ……」


 どうやらシギュンが目を覚ました様だ。


 彼女は暫くぼーっと周囲を眺めていたが……ようやく自分の置かれた状況に気付いたのか、必死で『ん~! んん~ッ!?』と叫んでいる。そりゃそうだろう、気が付くと卑猥な形で縛り上げられ、目の前にはフルチンでトイレの個室に侵入してきた不審者オレの姿。恐らく魔法が使えなくなっている事にも既に気付いているのだろう、そりゃ身の危険を感じない筈がない。


「あ、あの……大丈夫だから! 何もしないから! 一旦落ち着こうぜ? な?」


 まあまあ、と落ち着かせる俺の姿に少し安心したのか、頷いて静かになる彼女。少し涙目で可哀想ではある。俺はアルヴィトさんに確認を取ると……近くにあった脚立を使い、吊られている天井からシギュンを降ろしてあげた。


 そして噛まされていた涎玉を外すと……


「あ、あの! 今、今何時ですか!? 私、バイトに行かないと!」


「……えっ?」


 彼女は場に似つかわしくない、生活感溢れる第一声をあげたのだった。そういやトイレの個室でバイトがどうこうと独り言を呟いてたな。顔をしかめて『はぁ?』といった表情のアルヴィトさんが、机の上に置いてあった”妙な機械”を手に取り、それを彼女に向けつつ問うた。


「バイト? 君ら天界を占拠しといて何言ってんの?」


 困った様に目をパチパチさせるシギュン。


「あの、あれはロキ姉様が勝手にやってしまって……私も困り果てているんです」


「君は関与してないってのかい? じゃあ、天界に何をしに来たのさ。言ってみなよ」


 素直に頷くシギュン。


「はぁ、ロキ姉様の着替えを持って来ただけなんです。『着替えを忘れたから急いで持って来て』って言われて。あと、お菓子とか……」


「君、我々に対して攻撃の意思は?」


「そ、そんな事しません!」


 暫く、手に持った機械と彼女を交互に見ていたアルヴィトさんだったが、何か納得したように頷くと、それを再び机の上に置いた。どうやら雰囲気から察するに”嘘発見機”の類だったらしい。あれ!? これって……何もしてない彼女に酷い事をしたのは俺達の方じゃね!?


「嘘は……言っていないようだね。では別の質問、どうやって天界ここへ来た?」


「はい……自宅の……といっても借りているアパートなんですけど、そこの自転車置き場兼、物置に設置した移動用魔法門(ゲート)を使ってです……」


「その移動用魔法門(ゲート)を私達が使う事は可能かい?」


 首を横に振るシギュン。


「いえ、ロキ姉様が私達専用に調整してしまったそうです。なので多分無理じゃないでしょうか? あの、そろそろバイトに……ダメですか?」


 ニヤリと笑うアルヴィトさん。


「君は現在、こちらの切り札(ひとじち)なんだよね。悪いけどもう少し付き合って貰うよ?」


「うう、クビになったらどうしよう。それに無断欠勤とか他の人達に迷惑かけちゃう……」


 そう言うと、哀れシギュンはガックリと肩を落とす。気持ちはわからんでもない。というか本当に彼女は”邪神”なのだろうか? その発言は常識的で、どうも何か違う気がしてならない。そう、”よこしま”と言えば、レアの方が余程”邪神”と呼ぶに相応しいと思われ……


「まあ、細かい事は気にするな! 禿げるぞ?」


 そうレアが言い、シギュンの肩を叩いた直後だった。俺達の背後にある移動用魔法門(ゲート)がほのかに輝き、そこを通って小柄な少女が研究室内へと入って来る。そちらを見たロッタちゃんが彼女へと声を掛けた。


「ん……おかえり、フリスト」


「ただいまロッタ。主任、偵察完了です。今のところ、敵に目立った動きはありませんでした」


 初めて見る顔だ。ロッタちゃんより少し年上だろうか? 彼女へ向かって会釈をする俺に、アルヴィトさんが紹介してくれる。


「彼女はフリスト。ロッタと同じく戦乙女(ヴァルキリー)候補生さ」


 そうか、彼女も捕縛を逃れた一人という訳だ。


「山田太郎です。よろしくね?」


「はじめまして、自分は候補生のフリストと申します」


 そうして彼女は表情を崩さず、俺達に堅苦しい雰囲気で挨拶をしてきたのだった。

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