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紳士の条件

こんにちは! ワセリン太郎です! 更新が滞っておりましたので、連投してみます! 連投!!

 ──ザッ。


 外で何かが動く音がする。足音か!? 突然の事に俺の背筋を嫌な汗が伝った。


 今の音は一体何だ? また巡回中の異形の怪物達だろうか? そう考え耳を澄ますが……どうやら足音は一つだけの様だ。とにかく物音を立てない様にじっと息を潜め、見えない周囲の様子を伺う。


 すると足音の主は小走りに俺の隣の個室の前まで来て……ガチャン。扉の閉まる音。どうやらトイレに用事があった模様、これは良くない状況だ。つーかヤバい。


 この突然現れた隣人の正体は……? 敵である可能性が高いし、とにかく今は下手に感付かれない方が得策だ。俺は着ているパーカーの袖を口に押し当て、必死に呼吸音を殺して潜伏した。


 しかし、ここの個室の扉が”空室時も閉まっているタイプ”で助かったぜ……でなければとっくにバレていた所だ。

 もし外から一つだけ扉が閉まっているのが見えると、当然”中に誰かがいる”のがまるわかり。俺はズボンを上げる事もままならず聞き耳を立て、急な来訪者が誰なのかを探る事にする。間もなく女性の独り言が聞こえて来た。


「あぶなかったぁ、トイレに間に合って……こんな事ならアルバイト先でまかないを沢山食べなければ良かったよ。でも仕事してたらお腹空くしなぁ……ああ、また夜から居酒屋のシフト入ってるから急がなきゃ」


 バイト……? どうもこの天界に似つかわしくない、生活臭溢れる独り言である。相手は人間か? いやしかし流石に場所が場所だ、それはあるまい。再び耳を傾ける。

 少ししてほのかに漂ってくる異臭、どうやらお隣さんも”大”の方だった様だ。そういえば隣の個室には紙が無かったな……彼女はまだその件に気が付いていないようだが。


「うう、来週から夕方の新聞配達も始まるし……ロキ姉様、いい加減働いてくれないかなぁ……?」


 ──ロキ!? 今、ロキと言ったのか!? 俺は目を見開き、妙な声が出そうになるのを必死で押さえた。『ロキ姉様』、そう呼ぶ人物には当然心当たりがある。そう、姉妹神であるシギュンという女神だ。


 ……まずい。隣で冷や汗をダラダラと流す俺には一切気付かないまま、彼女は独り言を続けた。


「だめだめ! 私が頑張って生活費を稼がなきゃ! ああ、でも大変な事になっちゃったなぁ。姉様いつも『いつか天界を我が物としてやるわ!』とか言ってたけど、まさか本当にこんな事をするなんて……すごい大事になっちゃってるしどうしよう? うう、考えただけでお腹痛くなってきちゃった」


 あれ、何かイメージと違って苦労人っぽいぞ? どうも彼女の独り言を聞く限り、働かない姉の為に必死に身を粉にしている、薄幸で真面目な女性という人物像が浮かんできた。何故か親近感を覚える……いかんいかん、同情している場合ではない。ここで下手をしたら俺なんて”簡単に始末されてしまう”相手であるのには違いないのだ。


 そう考えていると、ようやくシギュンらしき女性は”ある事態”に気が付いた様だ。しかしそれは……彼女には可哀想だが、俺にとって強力なアドバンテージとなる。いや、もう生き残るにはこれしかない。


「あっ!? えっ!? ど、どうしよう、トイレットペーパーがない……流石にお尻拭かないと」


 ほれきた。しかしこれにより、俺もジッと息を潜めているワケにはいかなくなる。恐らく彼女は暫く考えた後、コッソリと個室を出て隣の個室へ紙を探しに来るだろう。ヤバイ、時間が無い!


 そう思った俺は音を立てないよう、便座に座ったままそっと靴を脱ぎ、ついでにズボンとパンツもその場に脱ぎ捨てた。何故か? それは立ち上がってズボンを履くと、金属の付いたベルトがカチャカチャと音を立てそうに思えたからだ。不本意だがこのまま行くしかない、事態は急を要する。鉢合わせは避けられそうにないので何とか主導権を握らねば……


 俺は座っていた便座の上にそっとよじ登り、隣の個室の上の空間へと少し顔を出してみる……薄桃色の長い髪の女性が洋式便器に座ったまま、あたふたとしているのが見えた。通常であれば、現在俺の取っている行動は”変質者”以外の何者でもないのだが……この際仕方ないと思います!! こんな素敵な光景、エッチなビデオでしか見たことないぜひゃっほう!!


 ……ではなくて。どちらにせよこのまま待っていると不利になる一方だ。そう考えた俺は覚悟を決め、貯水タンクの上に置いてあった予備のトイレットペーパーを掴むと……隣の個室との壁によじ登って──飛び越える!!


 


 ──しゅたっ。


 便座へ座るシギュンの目の前に降り立つ俺。そう、現在俺はフリチンであり、彼女の目の前には自慢の”粗末なマイ、リトルサン”がゆらゆらと揺れている。当然用を足している最中の彼女も、スカートとパンツは下ろしたままだ。


「──へ、変態!?」


 突然の事に口に両手を当て、言葉を失うシギュン。俺は動転している彼女を刺激しないよう、極めて紳士的に挨拶をする。


「どうぞご心配なく。いつもお世話になっております、わたくし山田太郎と申します、ナイストゥーミーチュー?」


「──えっ!? はっ!? い、いやぁ……あ、あの……お、お世話になります?」


 彼女の目の前には揺れるリトルエレファント。シギュンと思しき女性は当然ながら一切の平常心を失い、どう対応して良いのかわからなくなってしまっている様子だ。


「外は良い天気ですね。少しだけ、ご一緒しても? そういえばお嬢さん、紙を……紙をお探しですね?」


 敵意を見せてはいけない。あくまで紳士的に振る舞う。


「えっ……? あっ、ハイ……えっと……そ、そうだったと思い……ます」


「良かった。わたくしが馳せ参じたからには……もう心配ありません。どうぞ、こちらをお使い下さい」


 そっと紙を、優しくシギュンへと手渡す。震える手でそれを受け取った彼女は……何故かそのロールで必死に股間を隠す体勢となったのだった。まだ状況が飲み込めていない模様。主導権は……取った!


「さあ! どうぞ、それをお使いください!」


「えっ……? あっ、ハイ……」


「どうされました?」


「い、いえ……その、出て行っていただけると……だ、男性と二人でこの状況はちょっと……」


「……お嫌いですか?」


「えっ!? い、いえ……好きとか嫌いとかではなく……」


「よろしければ、お拭き致しましょうか? わたくし、それにつきましては少々腕に覚えがありまして、有り体に言うと……自信がございます」


「あっ、いえ……け、結構です……そ、それより出ていって……」


「お構いなく」


 いかん、少し平常心を取り戻しつつある。これではいけない。そう考えた俺は……便座へ座るシギュンの前へとうやうやしく膝をつき、あくまで紳士的な立ち振る舞いをもって、膝辺りに留まっていた彼女のスカートとパンツへと手を掛けロックした。これで立ち上がれまい。


「お拭きいたしましょう。さあ! ご遠慮なさらず! ”尻拭き合うも何かの縁”とも申します! レッツゴーカモンベイベー!!」


「え、ええっ!? け、結構です……」


 再び焦点を失うシギュンの瞳。いいぞ! へいへいピッチャーびびってる! つーか俺もこの後どうすればいいのかわからないんだけどね!? 助けてお母さん!!


 その時、俺達のいる個室の外から聞き慣れた大声が響いてきた。


「太郎! まだウ○コしてるのか? 何か臭いぞ、下痢か?」


 レアのアホだ。


 ふとシギュンへと視線を戻すと……パニックから抜け出せていない彼女は、何故か必死で口の前に人差し指を当て、俺へと静かにするようにジェスチャーしてくる。人というのは己の理解を超えた状況に置かれると、こうもおかしな行動に出るものか……今の俺も似たようなものなのだろうが。そう、似たもの同士でお互いに不幸な出会いだったのだ。


(こ、こんな所誰かに見られたら、お嫁に行けなくなっちゃう!?)


 お嫁に行く予定でもあるのか? 努めて平静を装う俺。


(大丈夫ですお嬢さん、ご心配なく)


(は、はい……?)


 しかしこれはチャンスだ、シギュンはスカートとパンツを俺に掴まれたまま、立ち上がれない。今なら絶対的有利な状況で事に当たれる気がする! いや今しかない! 俺は目の前で震える哀れな彼女を一旦落ち着かせ……それから大きく息を吸い込んだ!


「レア! ここだ! 真ん中の個室だ! 中に俺とシギュンがいる! 今身動き取れないからチャンスだ! まだシギュンはウ〇コを拭いてない! いけ、やっちまえ!!」


「──えっ、ええっ!? ひ、ひどい!」


 突然の俺の裏切りに目を瞬かせるシギュン。そりゃそうだろう、人間であろうと神であろうと等しく、”下半身まるだし”の状況には弱いのだ。しかもウ〇コを拭いていない状態ときている。


 俺の声に呼応し、叫ぶレア。


「なに! 太郎とシギュンは一緒にウ○コをしてたのか!? 連れフンか!? まだお尻に付いてるのか? よし、よくわからんが私に任せておけ! おのれ”連れフン邪神”め、このレア様が成敗してくれる!」


「ち、ちがうの! これは紙が無くて、それと、私よくわからなくて!?」


 もはや何を言っているのか、これがどういう状況なのか、俺にもわからない。とにかく、必死でシギュンのスカートとパンツを掴み、運を天へと任せた……刹那、レアの大声が再び木霊する!


「ゆくぞ! お尻拭いてない邪神! くらえ! えくす! かりばーーっ!!」


「や、やめて!? い、いやあぁぁぁぁ!?」 


 ──ズドオン!!


 俺の背後から、とんでもない勢いで蹴り開けられるトイレの扉! 


 恐るべき威力でもがれたであろう扉に背中を押され、中腰でしゃがんでいた俺の顔面は……座るシギュンの股間部へと砲弾の如く飛んで行き、慌てて開かれた彼女の股ぐらを通り過ぎ……未だ”大事な落とし物”が残る便器へと一直線に突っ込んだのだった。──ジーザス。

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