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秘密の部屋へ

こんにちは! 遊び呆けていて更新が滞っているワセリン太郎です! しかし遊び呆けると色々と充電されて良いのです。ではぼちぼち行きたいと思います!

「えくす! かりばーっ!!」


 阿呆レアの大声が周囲に木霊する。そう、先程コソコソと隠密行動を開始した俺達であったが……案の定この女が素直に言うことを聞く筈もなく、というか人の話を聞いておらず、すぐに巡回中の異形の怪物達に見つかり追われる羽目となってしまった。


「おまっ! あれほど静かにしろって言ったろ!?」


 ブチのめした怪物達に足を乗せたまま、俺の方を向いて不思議そうな顔をするアホの子。


「うん……? ちゃんと言われた通りに静かに移動しているではないか。太郎は何を怒っているのだ?」


「お前が静かにしてるのは”移動中”だけだろ!? 見つかる! マジでロキ達に見つかるから!」


「心配するな! そのロキとかいうのが出てきたら、私のこのエクスカリバーで云々……」 


 やはりダメだコイツは。


 まあ最初からわかりきっていた事ではあるが、とにかく先を急いでアルヴィトさんという人の所在を掴まないと……俺がそう考えていた時だった、遠くから再びバタバタと怪物達の足音が聞こえて来る。気配を探ると……今度は随分と数が多そうに思えた。まあ今のレアの力なら、奴等が集団で掛かっても相手にはならないのだが、とりあえず見つからないに越したことは無い。


「おいレア、一旦隠れるぞ。持ってきたチョコバーやるから言うこと聞け!」


「うむ、了解した! 早くください!」


 二人でコソコソと建物の陰に隠れる。しゃがんで追跡者達の様子を伺うと……その数八体。まあ二人で立ち回れば何とかなるのだが、今は少しでも体力も温存しておきたい所だ、ここはやり過ごそう。


 俺はアホが騒ぎ出す前に、リュックから取り出したチョコバーを手渡し、静かにするようジェスチャーで促す。レアはそれを受け取ると、地べたに座り込んで嬉しそうに開封し、ムシャムシャと頬張りだした。


(太郎、おいしいな!)


(お前、頼むからちょっと静かにしてて!?)


 怪物達は俺達の隠れる建屋の近くで立ち止まり、やられた仲間達の状況確認をしている様だ。このまま何事も無く立ち去ってくれると良いのだが……


 ──コツン。


 後頭部に何かが当たる、それはどうも小石の様だ。慌てて背後を見ると……そこには、こちらへと手招きする見知った顔があった。


(──ロッタちゃん!?)


 彼女はヒルドの実の妹だ。良かった、まだロキ達の人質にはなっていなかった様だ。


(……ん。タロウ、こっち)


 チョコバーを美味そうにかじるレアの手を引き、彼女が誘導する方へと慌てず、静かに移動する。そしてコソコソと先を行くロッタちゃんの視線の先を見ると……あれは恐らくトイレではないだろうか? 少々高級そうに見える公衆便所のような建物が建っていた。


 そしてその前まで来たロッタちゃんは……一旦周囲を警戒し、ササッと建物内へと入って行く。俺達も急いで後へと続いた。


「ここって……トイレだよな?」


 中へ入ると……やはりトイレの様だ、しかしそこに小便器は無い。あれ!? 俺今、女子トイレという聖域に侵入してしまっているのでは!?


「どうした太郎? 鼻息が荒いぞ? あと顔が気持ち悪いな! すまん、いつもの事だったな!」


「やかましいわ、つーか何で天界にトイレがあるんだ? 天界人はこっちではウ〇コしないんじゃなかったっけ?」


 何故か胸を張り、威張って答えるレア。


「うむ、食物を食べなければトイレは必要ないのだ。しかし食べたらウ○コが出るに決まっているだろう?」


「ああ、そういう事ね……じゃなくて! ロッタちゃん、無事だったのか! 心配したよ」


 俺の言葉に少し嬉しそうに頷いたロッタちゃんはトイレの一番奥へ行き、掃除用具入れの扉に手を掛けた。そして何か”合い言葉”の様な物を呟く。


 暫くすると……扉がうっすらと光り、数秒もしない内にその輝きは薄れていった。


 ──ガチャン。


 恐らくこれは移動用魔法門(ゲート)だ。そしてその先には……


「おお、すげーな。何ここ? 何か研究室っぽいけど」


 振り向きつつ答えるロッタちゃん。


「ここ、アルヴィト姉様が勝手に作った個人の研究室。神様(おじいさま)も知らないから、ロキ達にも見つからない」


 部屋の奥には壁一面の機械やモニター類があり、その前にある椅子には誰かが座っている。そして、その白衣を来た女性がゆっくりとこちらへ振り返った。


「やあレア。それと太郎君だったかな? 初めまして。私は魔導具管理部門の主任をしているアルヴィトだ。以後よろしくね」


 彼女がアルヴィトさんか。確かにどことなく曲者っぽい印象を受ける。


「どうも初めまして。山田太郎です」


 彼女に手を上げ、笑顔で応えるレア。


「アルヴィト姉さん! 先日借りた魔法のリングは凄かったぞ! ウ〇コとパンツがいっぱい増えたのだ! あれのお陰でヴェストラの街がメチャクチャになったぞ!」


 あれはお前とミストの仕業だろうが!? 滅茶苦茶になったのは断じて道具のせいではない。はしゃぐレアに笑って答える彼女。


「そりゃ良かった良かった。では、次回は”もっと面白い物”を貸してやろうかね」


 やめてくれ。何かこの人は危ない臭いがする。彼女はそうして一頻り笑うと、急に真顔で俺達へと向き直った。


「さて、一つ聞きたいんだけど。レア、太郎君……君達、一体どうやって天界に入って来たんだい? 移動用魔法門(ゲート)は封鎖、その他に通路があるとも考えにくい。先ずはそこから教えてもらえるかな?」


 俺は頷くと、背中のリュックからノームのパッ君を取り出して彼女へと見せた。


「それは……ノームだね。そのノームがどうしたんだい?」


「いえ、実はコイツに食われると……」


 

 彼女にこれまでの経緯を語る俺。その話に目を輝かせつつ聞き入っていたアルヴィトさんは……


「──なんと! 実に興味深い! しかもその個体ノームはオリハルコンを生成可能だと……ごめん、ちょっと解剖してみてもいいかな?」


「ちょ!? ダメですって!!」


「しね・よ?」


 当然憤慨するパッ君。しかしどうもこの人は、思考のベクトルが常人とはズレている様な気がするな、レアが尊敬する筈だ。まーた何か面倒臭い話にならなきゃいいが。


「ごめんごめん、ちょっと興奮しちゃってね。心残りだが、その話はまた今度にしよう。それより今は……まずロキ達をどうにかしないとね。早いところ彼女達をどうにかしないと、私も趣味の研究が出来ずに困っているんだ。全く困った娘達だよ」


 溜息を吐いて口を挟むロッタちゃん。


「姉様、そんな事より人質」


「あ、ああ。そうだった! いやロッタ、もちろん忘れてはいないさ! 人質、そう人質ね……」


 ぜってー嘘だ、このマッドサイエンティスト。ロッタちゃんにつられて溜息を吐いた俺は、気を取り直し、確認の意味を込めてアルヴィトさんへと問う。


「あの、もしそのロキ達と一戦交えるとすると……勝機はあるんでしょうか? 一応レアが天界(こっち)に戻って来てから、やたらとパワーアップはしてるんですけど」


 困った様な表情で首を振るアルヴィトさん。


「いや、神気を解放する事が出来れば……まあ戦いにはなるだろうけれども、残念ながら勝てる見込みは薄いね。ロキの力はそれ程強大だよ」


「あの例の無茶苦茶パワーアップする”魔法の瓶”も二つだけ預かっては来てるんですけど……」


 肩をすくめる彼女。


「もし、レアとヒルド辺りが同時に”能力の完全解放”をし、ロキ一人に対して二人掛かりで戦えば……勝負できる可能性もあるにはあるけどね。でも相手はシギュンも含めて二人。そして残念ながら現在、天界にはヒルドクラスの強力な戦乙女(ヴァルキリー)は居ないんだ。ブリュンヒルデもアイリスも神様(おじいさま)達と日本に行っちゃってるし、残って人質になってるのは文官と戦乙女(ヴァルキリー)候補生だけだからね。あ、先に言っておくけど候補生達にはソレは使わせられないからね? まだ成長途中の娘達には負担が大きすぎるんだ」


「つまり八方塞がりってワケですか……」


「そこで私は君、山田太郎君に期待しているのだけれども」


「お、俺ですか!?」


「だって君、以前戦乙女(ヴァルキリー)隊を相手に随分派手にやらかしたそうじゃないか。人間の身で一体どうやったんだい? 聞いても皆、口を開いてくれなくてね」


「すんません、言いたくないっす」


「ちぇ」


 うう、全く活路が見いだせない。何か腹が痛くなって来た……そういやここ、トイレがあったな。ちょっと失礼して行って来よう。


「ちょっとすみません、お手洗いに……」


 先程入って来た、トイレに繋がる扉を指差すアルヴィトさん。


「ああ、魔法門(ゲート)は開けておいてあげるから行っといで。敵に見つからないようにね?」


「太郎、ウ○コか? 大きい方か? もしかしてウ○コなのか? 下痢か?」


 俺は余計な事を聞いてくるレアを無視し、扉をくぐって……元居た公衆トイレへと戻って来た。


 そして個室に入ると……先ずは紙のチェックだ。こういう時に慌ててしゃがむと……ホレ見た事か! やはり紙が無い、危ないところだ。


 俺は隣の個室に移動し、紙の有無を確かめた。あれ? ここにも無い。個室の数は全部で三つ、そして最後の最も入口に近い便所を覗くと……あ、あった。まあ最悪、流せるポケットティッシュは持参して来ているのだが。


 とりあえず出す物を出さないと、落ち着いて考える事もままならない。俺は大きく深呼吸するとズボンを下ろし、冷たい便器へとどっかり腰を降ろした。


 それから間もなく用を足し終えた俺は尻を拭いて流し、便所の個室で一人座ったまま、これからの事について思いを巡らせる。当然ズボンは下げたままだ。

 

 神様(カミサマ)やアルヴィトさんの話によると、武力による衝突は……ナシだな。それはどうもリスクがでかすぎる模様。では他の方法は? いや、現状では俺が持っている相手の情報が少なすぎる。一旦、隠し部屋へと戻ってロキとシギュンについての詳細を聞けるだけ聞いて……などと考えていた時だった。


 俺の居るトイレへ”思わぬ事態”が転がり込んで来たのは。

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