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An Inconvenient Truth

こんにちは! ワセリン太郎です! 月曜日、憂鬱でお漏らししてしまいそうになりますね! では皆様、今週もがんばっていきましょー!

「おせー・よ!?」


「悪かったってば!」


 ようやく自宅に着いた俺は……腹を空かせたパッ君より叱責を受けていた。俺だって好きで電車の屋根に乗ったり、空中遊覧をしてきたワケじゃない。当初は一時間程度で戻る筈だったのだ。


 時計を見ると時刻はお昼前。流石に悪い事をしたな、これではパッ君も腹が減ったことだろう。


 最近コイツは毎日メシを食っており、俺が自宅を空けている場合も……ちゃっかりアリシアさんの手料理を食べているそうな。羨ましい。しかし、当初に神様ジイサマから聞いた”ノームは契約時に食物を要求してくる”とかいう設定は……一体何処へいってしまったのだろう? まあいいか、”よくわからん存在”だとも言ってたし。

 

 それに三度の飯をきちんと食うのは決して悪い事ではない。例えノームという謎の怪異の類であっても、俺は同じだと思う。それこそが”暮らしが根付いてゆく”ということだ。

 

 そんな事を考えながら味噌汁を作っていると……いつの間にだろう? 隣のミストの部屋から、イビキが聞こえなく(・・・・・)なっている。恐らく鶴千代が戻って来たことにより、ようやく二人共ゴソゴソと起きだしたのだろう。実に良い御身分で羨ましい限りだ。


 レアもミストも基本的に目覚まし時計で起きたりはしない。腹が減っては飯を食い、眠くなっては布団へ潜る。そして十分に睡眠を取ったと身体が判断したら、ノソノソと起きあがる。


 日が昇り出すと目覚める野生動物の方が、遙かに理性的だ。しかし奴等も一応は女性。毎日の風呂だけは重要な様で、その日に入れないとわかると急に騒ぎ出す。


 ただ、洗濯だけはほぼ(・・)毎日している様なので……その点だけが救いか? やっているのはミストだが。



 そうこうしている内に味噌汁が出来上がり、俺は二人分の飯を茶碗へとよそうと……居間のちゃぶ台の上へ朝飯を運ぶ。そういや賞味期限が迫っていたし、今日は納豆も付けよう。納豆に限っては賞味期限を少々過ぎても大丈夫だとは聞くが……俺はあまりオススメはしない。


 台の上ではパッ君が急須を持ち上げ、湯飲みへと茶を注いでいる。


「よし、食うか」


「いただきます!」


「ただき・ます!?」


 そして俺とパッ君は、ようやく朝飯にありつく事ができたのだった。



 


 ──ピポン、ピポン、ピポピポピポピポピポーン!

 

 食事を終えて茶碗を洗っていると……玄関の呼び鈴が鳴り、こちらの返事も待たずに扉が開く。このチャイムの押し方は……どうせレアだ。


 案の定、ドヤドヤと勝手に部屋へ上がり込んでくる三馬鹿娘(あんぽんたんず)


「あれ、お前らもう飯食ったの? 起き出したの遅かったじゃん」


 確かイビキが止んだのは、俺が味噌汁を作り出す前後だったと記憶している。まだ半分眠そうなミストが気怠そうに答えた。


「ああ……昨日の夜に取った宅配ピザが残っててさ、それ食べたんだ。あと”じゃが○こ”もあったし」


「ピザもどうかと思うが……朝からお菓子食うの止めろよ」


「なんでさ、”じゃが○こ”はちゃんとポテトじゃん。野菜だろ?」


「ミストの言う通り、四種のチーズピザにも野菜の切れっ端の様な物が入っていて、実に健康的だったな!」


 まったく……トマトソースが掛かっているという理由で”ピザは野菜に分類する”と認定してしまった、アメリカの議会の様な連中だ。


「ピザというのは実に美味かったの! ウチは初めて食したのじゃ!」


 駄目だコイツら……しかしそうか、鶴千代はあの手の食品を初めて食べたのか。まあ、高揚するのもわからんでもない。しかし……宅配ピザなどとんでもない。あんな高価なものをポンポン注文していては、家計が速やかに破綻してしまう。


 うちの冷蔵庫から勝手に納豆を取り出し、蓋を開けるレア。俺が洗ったばかりの箸で、それを混ぜ混ぜし……勝手にムシャムシャと美味そうに食いだした。まあ、文句を言うだけ無駄である。通常、外国人に納豆はあまり好まれないと聞くが……コイツ等は大概のものは平然と食ってのける。まあ、外国人ではなく天界人なのだけれど。


 人数分の茶を淹れていると……テレビを見ていたミストが騒ぎ出した。


「なにこれ、スゲー楽しそう!」


 炊事場から居間を覗くと、テレビに”巨大スーパー銭湯特集”的なものが映し出されており、それが彼女達の興味を引いているようだ。しかしあくまで”都会の巨大浴場”であり、神丘市のような田舎には……この様な立派な施設は存在しない。


「泡じゃ! 何故に風呂から泡が吹き出しておる!? ブクブクしとる!」


「うむ、鶴千代。あれはジャグジーとかいうらしいぞ! 私も入った事はないのだがな。そうだ! お風呂の中でオナラを小刻みに出すと再現できるかもしれんぞ!」


 やめろレア。お前はそうやって度々ウ〇コを漏らしてきたのを忘れたのか。


「太郎、今度連れてけよなー。あ、ちょ!? レア姉さん見ろって! 風呂に電気流れてるんだって! 何で電気流してんの? 流したらどーなるんだ?」


 ……騒がしい。まあ、テレビを見て騒いでるだけなので実害はなく、平和なものなのだが。

 しかしスーパー銭湯か、ここ数年行ってないな……以前アパートの水道工事の際に、大家(しげる)さんに何度か連れて行って貰ったのが最後。それ以来行っていない。

 

 入浴料が五百円程度かかるし、風呂上がりにはコーヒー牛乳等も飲んでしまう。まあ安くても六百円ってところだ。割引のある回数券を買うのもアリなのかも知れないが、そこまで頻繁に行く事もない。やはり理由もなく行くには少々贅沢だ。サウナがあるのは非常に魅力的なのだが……


 そうして独り、ぼーっと思い出していると……鶴千代が炊事場へとやって来た。


「太郎、あるかの? お主が所有しておれば、貸して欲しいのじゃが」


「うん……? ごめん、考え事してて途中から聞いてなかった」


「うむ、太郎は”こんせんと(・・・・・)の延長こーど”という物は所有しておるかの? それが必要なのじゃ」


 コンセントの延長コード? 掃除機を掛ける時に使うから、あるにはあるが……横からレアが両手を一杯に広げ、ジェスチャーしながら補足してくる。


「太郎、長いヤツがいいのだ。そうだな、五メートルのがあるといい。それをミストの部屋の物と継ぎ足せば……間違いなく届くとおもうぞ」


「ああ、それなら押し入れの下の段に入ってるよ。そういやコードを伸ばして何に使うんだ?」


 笑顔でミストが答えた。


「やっぱレア姉さんアタマいいよな~。コンセントから延長コードを伸ばして風呂に入れたら”電気風呂”になるとかさ! アタシちょっと考えつかなかったぜ。 今晩、早速やってみよっかな~」


 この大馬鹿者達あんぽんたんずはこれだから恐ろしい。”燃え上がる我が家(アパート)”のイメージが鮮明に脳裏へと浮かぶ。


 頑強に出来ているコイツらは、感電した所で大してダメージを受けそうにはないが……この建物は非常に古い木造であり、配電設備も実際はどうなっているのか知れたものではない。そうなると火にくべられた薪のような物だ。


「確実にショートして火災が起こるからダメ! ゼッタイ!!」


「「えーっ……」」


 そんな馬鹿な話をしていた時だった。俺のスマホの着信音が鳴る。

 

 誰だろう? そう思って画面を見ると、発信者はヒルド。昨日のヴェストラの騒ぎで疲れているので、今日は休もうかと言っていたのだが……何かあったのだろうか? もしかしたら、不通になっている移動用魔法門(ゲート)が復旧したのかも知れないな。そう考えつつ電話に出る。


「もしもしヒルド? うん、俺。何かあったん?」


 おや? 彼女の声には元気がない。


「太郎、大変な事になってしまいました。戦乙女ヴァルキリー隊の武官が全員出払った隙に……天界が丸ごと乗っ取られ、文官達やロッタの様な候補生達も人質に……」


「えっ……!? あの怪物達が天界に? ロッタちゃんが……」


 ロッタちゃんはヒルドの実の妹だ。まさか移動用魔法門(ゲート)不通の裏側で、そんな事が起きていたなんて……


「いえ、占拠しているのは怪物達ではなく……とにかく、これから神様(おじいさま)達とそちらへと向かいます。大家(しげる)殿の自宅の居間を借りられるように、連絡はしてありますので」


 そう言って電話を切った。


 そうか。この仕掛けた相手が誰かはわからないけど、最初から狙いは神丘市でもヴェストラでもなく……天界だったのか。


 とにかく急いで大家(しげる)さんの家に行き、神様(カミサマ)達から話を聞こう。俺はテレビを見て騒ぐ三馬鹿娘あんぽんたんずへと声を掛ける。


「おい、天界が丸ごと乗っ取られてるってよ……煎餅食ってテレビ見てる場合じゃないぞ」


 ……流石に目を丸くする三人。そうして俺達は、慌てて下へと降りる準備を始めたのだった。


 

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