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線路はどこまでも

 こんにちは! ワセリン太郎です! 最近、レアさん奇行の序盤を読み返し、”非常に読みにくい”と感じておりまして。(まあ、最新話も下手で十分読みにくいかも知れませんが)

 

 なので! ボチボチと時間を掛け、序盤から順に【新約版 レアさん奇行】へと書き換えて行こうと思っております。時間の都合上、ほんの少しずつではありますけど。

 

 実は数話分は置き換えが完了しており、その見分け方なのですが、新約版の方はよーく見て頂くと……”とある部分”に規則性を持たせてあります。以前は気分でバラバラにしていた部分なのですが。


 内容もすこーしだけ改変しており(おおまかな話の流れは変えない様にしております)、もしお時間がありましたら……コッソリ見つけて読んで頂けると幸いです。


「──ぶふぉぁぁぁぁぁっ!?」


 強制的に口を押し広げる、強烈な風圧。 


 己の身に何が起きたのか理解出来ない俺だったが、とにかく風圧に耐えて電車の屋根の突起にしがみつく──!


「な、なんじゃこりゃあぁぁぁ!?」


 伏せた顔を上げ、必死に前方の状況をを伺うと……そこには何食わぬ顔で列車の屋根にあぐらをかき、楽しそうに笑う鶴千代の姿が。

 

 今まで大人しくしてたので忘れていた……コイツも大馬鹿者達レアたちと同じく、超常の存在だったという事を……


「すごいの! 速いの! 楽しいの!」


 ケタケタと笑う鶴千代。


 し、死ぬ──!! 


 目の前で楽しそうにするアホとは対照的に、俺の髪の毛は風圧で逆立ち……おそらく端から見ると、とんでもない形相となっているだろう。それが何なのかはわからないが、パチパチと顔や身体に色々な物が叩きつけられる。これは多分、羽虫か何かだ。


 ──プアァァァァ……


 隣町へとノンストップで、快調に走る電車。長いトンネルへと差し掛かった様だ。一瞬で視界が悪くなり、その事が更に俺の不安を掻き立てる。


「お、降ろせ! 降ろしてくれぇぇぇ!!」


 そのまま必死に耐えていると、ビュンという空気が広がる音と共に……視界が急に開けた。トンネルを抜けたのだ。


 もう一度顔を上げて必死に前を見ると、明らかな不満を表情に出した鶴千代の顔が。


「嫌じゃ! もっと乗りたい!」


「いい加減にしろおぉぉぉ!!」


 そうして、俺達を乗せた特急電車は……次の停車駅の隣町へと向け、猛スピードで駆け抜けていったのだ。



 ~20分後~



「びゃあぁぁぁぁ! 太郎がぶったぁぁぁぁ! あほぉぉぉぉ!!」


 泣きわめく鶴千代あんぽんたんの手を引き、俺は隣町の住宅街を歩く。何故コイツが泣いているのかって? 決まっている、俺が頭にゲンコツをくれてやったのだ。


「やかましい! 今まで色々あったけどな、流石に今回は”死んだ”かと思ったわ! 知ってるか? 俺も鉄道詳しくないからよく知らんけどさ、確か日〇本線は交流二万ボルト流れてんだぞ!? 多分、鶴千代おまえに言っても意味わかんないと思うけど! とにかく今回、運良く生きてたけどさ! 電車の屋根に登るとかダメ! ゼッタイ!!」


「びゃあぁぁぁぁ! ぶったぁぁぁぁぁ!」


 ダメだ、聞いていない。軽くゲンコツしただけなのだが……もういい。


 頭を掻きむしる俺は、再び鶴千代を連れて歩き出す。何故歩いているかというと……財布を自宅に置いてきてしまったからだ。持っていた小銭は朝のコンビニで大半を使い、電車に乗って帰る金もない。当然スマホも家で充電中、誰かに連絡を取る事も不可能で打つ手なし。

 

 ちなみに神丘市からこの隣町までは、車で二十分ちょっとの距離。とても歩いて帰れる筈もなく……


「どうやって帰ろう……」


 そう俺がぐったりしていた時だった。目の前の曲がり角から、中型の雑種犬を連れたお婆さんが現れたのだ。彼女は鶴千代が泣いているのを見て、こちらへと近寄って来る。


「あらあら……お嬢さん、どうしたのかしらね?」


 少々バツが悪く感じた俺は、苦笑いしながら挨拶をする。


「おはようございます。いえ、コイツがちょっと言うこと聞かなかったもんで、注意してたところなんですよ」


「あらそう……うふふ。ダメよ? ちゃんとお兄ちゃんの言うことを聞かないと……」


「うびゃあぁぁぁ! あほ! 太郎のあほぉぉぉ! びゃぁぁぁぁ!」


「すみません、朝っぱらからやかましくて……」


 そう俺が頭を掻いていると……


 お婆さんが連れていた飼い犬が、泣き喚く鶴千代の足元へと近寄ったのだ。それを見て突如泣き止むアホの子。


「犬じゃ……犬がおる!」


 鶴千代の顔を見上げて元気よく尻尾を振る、お婆さんの飼い犬。彼女も急に笑顔となった。とりあえず泣き止んでくれて助かった。


 とつぜん大声を出す鶴千代。


「わんお! わんわんお!!」


 ──ワンッ! ワンッ!


 犬も嬉しそうだ。優しくほほえむお婆さん。


「よかったわねぇ、タロウちゃん。お姉ちゃんに遊んで貰いなさい?」


 どうもこの犬は……俺と同じ名前のようだ。少し複雑な心境ではある。嬉しそうに、ワシャワシャと犬とじゃれ合う鶴千代。


「わんわん! わん! そうか、お主の名前もタロウか? 良かったな太郎! 同じ名じゃ、タロウも雄じゃし、同性同名じゃな!」


「……そうっスね」


 ──ワンッ! ワンッ!


「べろべろべろ! わんわん! べろべろ!」


 あっ! 鶴千代、犬の顔を舐めるの止めて! もはやどちらが動物なのかわからない。


「あらぁ……」


 流石にドン引きするお婆さん。


「ちょっ!? おま、やめろ!」


 慌てた俺は、犬をベロベロするアホの子三号を……無理矢理引きはがす。


「わんわんお!!」


「お前は犬か!? ──待て! シッダン! やめれ!」


 命令を聞き、犬のように座って停止する犬千代いぬちよ。その姿はまるで、雑種の中型犬の様だった。


 とりあえず、彼女の首根っこに手を置いて押さえる。はあ、今はこんな事してる場合じゃないのに……


「しかし、どうやって帰ろうかなぁ……」


 ふと我に返った俺がそう呟くと、お婆さんが不思議そうな顔をして訪ねてきた。


「あなたたち、余所から来たの?」


 流石に『はい! 今朝、電車の屋根に乗って来ました!』とは言えない。


「ええ、住んでるのは隣の神丘市なんですが。ちょっとした”手違い”があって、ここで降ろされてしまったんですよ。迎えを呼ぶにも、携帯電話も自宅に置いてきてしまって……」


 ポリポリと頭を掻く。


「あら困ってたのねぇ……ウチから電話する? それなら連絡がつくでしょう?」


「え、よろしいんですか? そうさせて頂けると助かりますけど……」


 ニコニコと頷くお婆さん。有難い、とても助かる。


「ありがとうございます、では申し訳ないですが……」


 俺がそう言いかけた時だった。お座りして俺達の会話を見上げていた犬千代いぬちよ……じゃなかった鶴千代つるちよが、ポカンとした顔で妙な事を言い出したのだ。


「なんじゃ太郎、帰りたかったのか? ウチも腹が減ったし……そうじゃな、ではそろそろ帰るとするかの!」


「いや、だから。帰る手段が無くて困ってたんだろうが。こちらの方が電話を貸して下さるらしいから、大家(しげる)さんに連絡して迎えを頼もうかと……」


 不思議そうな顔の鶴千代。


「……飛んで帰れば(・・・・・・)よかろう?」


 は? 今、何つった!? 何か嫌な予感がする。しかし俺の気も知らずに続ける、アホの子三号。


「そうか、人間ひとは飛べぬのじゃったな! 何とまあ、不便な生き物よ。しかし心配はいらぬ! ウチが運んで進ぜよう」


「飛ぶ……? お前何言ってんの……?」


「ウチは天狗じゃからな、空を飛ぶなど造作も無い事じゃ!」


 そう言い放って立ち上がり、膝の汚れをポンポンと払った鶴千代は……俺とお婆さんの目の前で、突然背中に”黒くて大きな翼”を生やしたのだ! ──ジーザス!!


「ええっ!?」 


 ──目を見開いて言葉を失うお婆さん! いや、俺もなんですけど!?


「ではご老人、そして犬のタロウもご機嫌ようじゃ! また会う事もあろう、それまで身体を労り達者での!」


 一方的に、お婆さん達へ別れの挨拶を済ませた鶴千代は、ゆっくりと俺の背後に回る。

 

 そして両腕で俺の腰に抱きつく様な体勢を取り……腰の前でガッチリと指を組み、ロックしたのだった。


 「……えっ?」


 ──バサッ、バサッ


 背後で、翼の羽ばたく音がする。そしてゆっくりと……俺の両足は重力に逆らい、地面と別れを告げたのだった。ワケがわからなくなり、とりあえず……宙に浮いたまま、お婆さんへとお礼を告げる。

 

「えっと……電話の件、お気遣いありがとうございました……何か良くわからないですけど、帰れそう……です」


「い、いえ……き、気をつけて帰りなさいね……?」


「は、はい……」 


 お互い、何と声を掛けて良いものか解らない状況だ。そして、鶴千代の元気な声が響いた。


「ではの、ご老人! また会おう!」


 突然の加速を受けつつ、勢いよく上昇しだす俺の身体。一気に小さくなって行く街並み。まるで地図の航空写真を急激に縮小したような景色に、意識がブッ飛びそうになる──!


「ぎゃあぁぁぁ!! し、死ぬ──!?」


「黙っておれ太郎、舌を噛むぞ!」


「た、助けてくれぇええ! 俺、歩いて帰る! 歩くからぁぁぁ!?」



 消えゆく意識の中で俺は想う。これなら電車の屋根のほうが幾分マシだったと。


 


「摩訶般若波羅蜜多心経……観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五……」


 そうして怪しい二人が飛び去った後、その場に残されたお婆さんは……両の掌を合わせ、何故か彼等が消えて行った方角に向かい、一心不乱に般若心経を唱えていたのだった。

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