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その門は開かず

こんにちは! ワセリン太郎です! ぼちぼち更新していきます!

「とまあ……そういうワケじゃ。家賃はこちらで支払うでの、すまんが大家(しげる)のアパートで面倒を見てやってくれるか?」


「おう神様(ジイサマ)、俺は全然構わねえぜ! むしろ願ったり叶ったりだ」


 神様(カミサマ)の提案に満更でも無い様子の大家(マッチョ)。そりゃそうだろう、この鶴千代と名乗る天狗の少女を招き入れる事により、万年空室だらけの実家のアパートが一室埋まるのだ。


「これ鶴千代や、とりあえず今日はミストの部屋にでも間借りしておきなさい。また明日以降にでも、ワシらが部屋の準備を手伝ってやるからの?」


 神様(カミサマ)の言葉に嬉しそうに、元気に頷く鶴千代。


「うむ、かたじけない! ミストや、世話になるぞ!」


 頭を下げる彼女に、気楽な様子でミストが応えた。


「おっけー。レア姉さんもいるから三人でちょっと狭いけどな~。そこんとこ我慢しろよな!」


 案外コイツはこういう時は面倒見が良い。一応そういう事でこの場は一旦お開きとなり、美津波様や姫様(キア)達へと挨拶を終えてから……皆、神様(カミサマ)が開いてくれた移動用魔法門(ゲート)でバラバラに帰宅する事となった。

 

 俺は大家(しげる)さんに付き合い、車での帰宅となる。メルクリウスも『僕もいいかな?』と同乗する意思を見せた。今日の事も聞いておきたいし、断る理由もない。

 

 そうして俺達は土手に停車してあった自家用車(バン)へと乗り込んだ。エンジンを掛けながら大家(しげる)さんが言う。


「おうオメーら、メシでも食っていくか!」


 流石に俺も疲れており、自宅に戻って料理する気力はない。メルクリウスもそれは同じようで、俺の顔を見ると提案に同意するように頷いた。


「そうっすね。あ、珍宝軒(ちんぽうけん)はナシっすよ! もう怪物の肉とか食いたくないですからね!」


「ああ? 我が儘は良くねえぞ!? アレ美味かっただろーが!」


「太郎君、顔が青いけど……何かあったのかい?」


「メルクリウス、聞かないでくれ。“アレ”を食ったのを思い出したくない……」


「……?」


 その後、珍しく俺の意見を聞いてくれた大家(しげる)さんは、商店街付近の居酒屋へと車を走らせる。その道中、メルクリウスと情報の共有を済ませておいたが……まあ予想通り目立った収穫は無かった。当然、こちらのヴェストラでの話を聞き終えた彼はドン引きしていたが。


 三人で居酒屋に入り、冷えた生ビールを煽る。うん、最高に美味い。

 

 ちなみに大家(しげる)さんが酒を我慢する筈もなく、帰りは代行を呼んで送って貰う予定だ。


 それから色々と摘まむ物を頼み、下らない話をしながら一時間程ワイワイと飲んでいただろうか? 急にメルクリウスが、ポケットからスマホを取り出して『あれ?』という表情を見せた。どうやら、電話の様だ。


「何だろうね? 珍しい、父から着信だ」


 電話に出る彼。


「──はい、どうされました? ……えっ!? いえ、今朝アパートを出た際にはそのような事はなかったと思いますが……母上もこちらへ? ……はい、わかりました。すぐ戻ります。今商店街の居酒屋なので、そう時間は掛からないかと」


 そうして電話を切ったメルクリウスは、少々不思議そうな顔をしている。 


「おう、メルクリウス。何かあったのかよ?」


 大家(しげる)さんに問われた彼は周囲に聞かれない様、気を配りながら小声で応えた。まあどうせ、周りは酔っ払いだらけなので、聞かれても大して問題はないのだろうが。


「ええ、どうも天界への移動用魔法門(ゲート)が開かないらしいです。別の世界へ行っていた母上も、そちら側から直接帰還しようとされた様ですが……」


「ダメだったのかよ?」


「ええ、どうやらその様ですね」


「ならしゃーねーな、戻るか!」


 支払いを済ませた俺達は、珍しくコインパーキングに駐車されている自家用車(バン)へと戻ってきた。周囲を見まわすが……少々、時間が早かった様だ。いつも深夜になると、そこかしこに路駐している運転代行業者の姿が……まだ何処にも見当たらない。


「みんな飲んでるし……俺、代行呼びますわ。ちょっとお待ちを」


大家(しげる)さん、太郎君、ここからは近いし……悪いけど僕はお先に!」


 そう言うと早足に歩き出すメルクリウス。まあ、ここなら確かに代行が来るのを待つより歩いた方が早いかな? 俺がそう考えていると……


 ──ブロロロロ……


 何故か車に乗り込んでエンジンを掛け始める大家(マッチョ)


「ちょっ!? アンタ何やってんすか!?」


「緊急事態なんだろ? これは仕方ねえぜ!」


「いやいや、ダメですって!! 騒ぎに便乗しようとしてるでしょ!?」


「うるせえぞウンコラマン! オメーは歩いて帰ってこいや!」


 そう言って……行ってしまった。あのオッサン、代行の代金を払いたくないだけだろ!? マジで捕まっても知らないからな!


 タイヤを鳴かせ、路地へと消えて行くテールライト。諦めた俺は……メルクリウスの後を追い、早足で歩いた。



 そのまま二人で暫く行くと……俺達の住むアパートが見えて来る。大家(しげる)さんの自宅前には、先に到着して路駐された自家用車(バン)が。


 ガレージを覗くと……明かりの灯った建物内には神様(カミサマ)達の姿があった。俺とメルクリウスも中へと入る。


「父上、移動用魔法門(ゲート)が使えないというのは本当ですか? あれ? 母上も日本(こちら)へ来られていたのでは?」


「うむ、ババアは異世界(アタランテ)のミカの所に行き、あちら側からも調べてみるそうじゃ。しかし困ったのう……異世界(アタランテ)や魔界、それに日本(こちら)への相互通行は問題なし。どうも天界へのみ、通路が塞がれている状態なんじゃよ。何故かワシの魔法での直接移動も出来なくなっておるし……」


 俺はふと気が付く。そういえば、あの大軍で河川敷に押し掛けていた戦乙女(ヴァルキリー)隊はどうしたのだろう?


「そういや天界に戻れないのなら、あの戦乙女(ヴァルキリー)隊は何処に行ったんですか? かなりの人数だったと思いますけど」


 それには腕を組み、難しい顔をしていたブリュンヒルデが答えてくれた。


「いや、大所帯だったものでね……一旦、キア姫に頼んで魔界に宿泊させて貰う事になったよ。流石にあの人数では、市内のホテルでどうにかするには難しいだろうからね」


「ああ、なるほど。確かにこの時間から大量の部屋を確保するのも難しいでしょうしね……それで移動用魔法門(ゲート)は直りそうなんですか?」


 眉間にシワを寄せたままの神様(カミサマ)


「いやの、実は”故障”というのは考えにくいのじゃよ。もし術式が壊れておれば……他の世界への通行も不可能になるんじゃ」


「ああ、そうか……余所へは行けるって仰ってましたもんね」


「それと天界へと連絡を取ってみたのじゃが……これもまた何故だか繋がらん。魔法式でも携帯電話でも結果は同じじゃった」


 例の通話用の魔法の木札を、困った様にこちらへ見せる神様(カミサマ)


 そうこうしていると移動用魔法門(ゲート)が光り、中から数名の戦乙女(ヴァルキリー)を従えた背の高い女性が現れた。フリッグ様だ。神様(カミサマ)が声を掛ける。


「バアさん、どうじゃった?」


 首を横に振るフリッグ様。


「ダメさね。どうも……何かの妨害術式が働いている様に思えるよ。誰かが間違えて、調整室の操作でもしたんかねぇ……」


 何か鍵を紛失して自宅に入れなくなった一家を見てるみたいだな。いや、余計な事を言うと怒られそうだし黙っておこう。


「いや、移動用魔法門(ゲート)は並の神気量では操作は出来ん。可能な者もおるにはおるが……問題はその全員が”この場”に居る、という事なんじゃよ」


 メルクリウスと、何故か隣でカップ麺をズルズルと啜るレアをチラ見する神様(カミサマ)。フリッグ様も同じように二人を交互に見て……溜息を吐いた。

 

 それからふと、彼女は何かを思いついたようにレアへと問う。


「そうさねぇ……レアや。お前、最近天界へ帰ったかい?」


 不思議そうな顔をして答えるレア。


「うん、バアちゃん。ヴェストラ行く前に帰った!」


「その時、どこに寄ったんだい? 思い出してみな?」


 カップ麺の汁を啜りながら、暫し考えるアホの子。


「えっと……魔道具管理部門? あそこへ寄って、アルヴィト姉さんに”必殺アイテム”を下さい! って言いに行った! それでパンツが沢山増えたのだ!」


 やはりか……という表情になるフリッグ様。


「レアや、管理部門で何か機材をイジったんじゃないだろうね?」


 う~ん、と再び思い出す様に考えるレア。暫くすると、ハッとしたような顔をする。


「あっ! アルヴィト姉さんが道具を探しに行った時に……面白そうな変な物が沢山あったので、色々イジくったぞ! デカいボタンとか変なダイヤルとか!」


 同時に溜息を吐く神様(カミサマ)とフリッグ様。ああ、どうやら原因はそれらしい……


移動用魔法門(ゲート)は設定を大幅に変えると、その効果適用までには数時間程度掛かるんじゃ。その間にレアは日本(こちら)へ戻って来て、そのまま異世界(アタランテ)へ……といった所か。まあ数日中には、誰かがおかしいと気付くじゃろ。主任のアルヴィトには緊急時の為に濃縮した神気の結晶も渡してある。あの子が気付きさえすれば操作も可能じゃ」


 神様(カミサマ)達には少々悪いが……これははっきり言って”良くある事故”だ。


 これまでレア達の巻き起こす事件の数々を間近の特等席で見てきた俺には……正直、大した事には思えない。

 ヒルドも似たような思いなのか……俺の顔を見て苦笑いし、軽く肩を竦めて見せる。


 そして……皆、昼間の騒ぎで疲れていたので、その日はそのまま解散となったのだった。

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