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夏の思い出

作者: ろん

 思い出のひとつは、母の父の事だ。

 たしか東京タワーは建っていたので、今上天皇の結婚の前後だと思う。

 母方の祖母からの手紙で、祖父が巣鴨刑務所スガモプリズンから釈放されるとの連絡を受けたのは暑くなりはじめた時期であった。

 電話など四軒長屋でも一番羽振りの良い家にしか無かった。

 祖父は軍医であったが、敗戦の時点で捕虜収容所長を拝命しており、部下の暴力行為の責任で東京裁判により、絞首刑デスオブハンギングの判決を受けていたのだ。

 母の記憶では、皇太子の結婚に伴う特赦であった。

 祖母、伯父、母、叔父、叔母のお供で暑いなか、目一杯めかしこんで巣鴨まで行ったのを覚えている。


 もうひとつは、我が家初の飼い猫のことだ。

 玄関からなにから、全ての戸を開け放ち夕食を摂っているときに、縁側の先にほとんど真っ黒で、口元と足先が白い猫が行儀良く座っているのを見つけた。 父が猫嫌いのため猫を飼ったことは無かったが、つい呼ぶと縁側に上がってきた。

 珍しく機嫌が良かったのであろう父が文句を言わないのを良いことにおかずの目刺しを与えると、よほど空腹だったのであろう彼女(黒猫)はあっという間に食べてしまった。

 彼女はそのまま居着いたのだが、あんなにガツガツ食べたのはそれきりである。

 相性が良かったのであろう、父にも邪険にされることなく二十年ほども我が家で生きた彼女(くろ)は涼風の立つ頃苦しむこともなく旅立った。

 今でも、何匹かの猫の写真の中央にその姿がある。


サンフランシスコ講和条約締結時点で、執行されていなかった死刑は自動的に終身刑に減刑されたらしいです。

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