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学園の神鳴り殺し  作者: 片岡 雅
-梅雨の修行旅:合宿編-
94/110

◇11-2◇

 朝食も終わり、現在時刻は午前9時。生徒はみなロビーに集合していて、先生数名がその前にたちこれからの事を説明していた。――しかし、その説明は校長からのもので(事前に録画された立体映像を使用している)、これまたずいぶんと長ったらしいものだった。まるで入学式が再来したような気分で、遥は顔を引きつらせていた。時折挟まれるどうでもいい話やくだらないジョークなどは、聞いていてまったく楽しくない。早く終わってくれないものかと、ずっと考えながら聞いていた。

 おそらく司はまた器用に立ち寝でもしているのだろうな。優くんはどのへんにいるのかな。など、別の事を考えて気を紛らわせた。

 校長の話の要点をまとめるとこうだ。


――これより一日の間は、個々にグループを組み、自然を探索すること。今回はもうガイドは入らないから、各自メンバー構成は極慎重に考えること。そして、それぞれGPSを所持すること。以上。


 よく考えてみると、これだけの内容のために校長はいつまでのべらべら話し続けていたのか。そう思うと、誰もが苦笑した。ある意味で彼の行動は称えるべきものだろう。

 さて、くだらない話は終わりにして、遥は長い話の所為で疲れた体を軽くほぐすように伸びると、すぐさまグループ作りを開始した。だがしかし、探している人物はたった一人だ。そしてそれはもちろん――


「あ、優くん! いたいた。ねぇ、そろそろ行こう?」


 一人で人混みの中キョロキョロしていた神田優だ。


「ああ、遥そっちのほうにいたのか。探したよ」


「ごめん、来るの遅れちゃってさ。ルームメイトがなんかばたばたしちゃって」


「そっか。まぁ、会えたからよかった」


「うん!」


 どうやら優も遥の事を探してようだ。まぁ、というのもそのはず。元々この日はしおりに自由探索と書いてあったから、来る前から優と遥の二人はこの日は修行をしようと決めていたのだ。修行といっても、開発に近いものになるだろうが。


「それじゃぁ、メンバー決まったやつからGPS渡してくぞ! 順番に取りに来い!」


 ロビーの入り口付近で一人の教師が声を上げた。それに続き、何人もの生徒たちがGPSを受け取りに並んでいく。優たちがぼけっとそれを見ている間に、気付けばもうそれは長蛇の列となっていた。

 そして二人は、あれ……と思う。それとともに、やっちまったと。


「……優くん。並ぼっか」


「……そうだな」


 ずいぶんと浮かない顔をして、2人はてくてくと列に並んだ。

 ありえないほど時間の掛かりそうなこの非効率的な配布方法は、優には想定外の出来事だった。


――結局、2人して無事ロビーを通り宿舎から出ることができたのはそれから30分後のことだった。

 予想の斜め上を行く疲労に、2人同時にため息をつく。

 だが、これでようやく自由となった。あとは廃校へと向かい、どかどかやるだけだ。幸い、すでに優は修行についての案もできている。GPSに関してもさっさと小細工を加えればいいものだし、というかあるチップを埋め込めばすむことだし、今のところ優たちを阻むものは何もないといっても差し支えない。


「さぁ、行こうか」


「うん!」


 優の言葉に、遥は元気よく返事を返す。

 なんだか遥は機嫌が良いようで、先ほどからニコニコしていた。別に可笑しいことでもないのだが、優には少しそれが気になっていた。


「遥、何か良いことでもあったのか?」


「どうして?」


「いやだって、さっきからずっと楽しそうにしてるし、これから修行だぞ? わかってるよな?」


 やや疑うような素振りを見せながら優は遥の顔を覗いた。


「わかってるよ。ただ、久しぶりに優くんと2人だと思うと嬉しくて」


 うっ、と、優は一歩後ずさる。なんというか、本当に遥は平気で恥ずかしい事を言うなと、改めて思った。


「そ、そっか……」


 なんとうか、遥の顔を直視できない。優は最近、どうも遥の事を意識しすぎているようで、それは先日の誰が一番女子っぽいか騒動の所為だと思われる。あのときの優自身の回答を出して以来、少し遥を意識してしまっていた。

 それからはなんとなく気まずくなり、遥もあまり優に話しかけないまま、地道に歩みを進めた。昨日のように森の道に入り、湖組を遠めにちらちら窺いながら歩き続ける。あまり他人と会うのは好ましくないのだ。なんと言ったって誤魔化すのがとても面倒だし、そしてなにより修行の邪魔になる可能性がある。できれば何も起きることなく、この1日を終えたいのだ。


「――さて、そろそろかな……」


 宿舎から廃校までのちょうど中間あたり。

 優は自分のGPSを取り出すと、事前に千尋から受け取っていた電子チップを器用な手つきで埋め込んだ。これによってGPSの機能が麻痺し、実際とは違う動きでポイントが移動するようになるのだ。優は遥からも二つ返事でGPSを受け取ると、自分のと同じ細工を施した。

 周辺に優たち以外の人間の気配はいない。これで、もう誰も優たちを探し当てることはできないだろう。まぁ、偶然ということもありえるが、それに関しては極力優は回避するつもりだ。


(よし、じゃもう少し歩こう)


 特に何か言うこともなく遥にGPSを返すと、そのまま再び歩き出す。先ほどから2人は顔を合わせていない。

 第3者から見てみると青春真っ盛りなこの光景は、とある人物からすれば対した興味の対象には成りえなかった。《彼女》からすれば、ただただつまらない光景でしかなかったのだ。

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