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学園の神鳴り殺し  作者: 片岡 雅
-梅雨の修行旅:合宿編-
84/110

◇9-10◇

 翌日5月13日金曜日。

 思えば、気が付けばもう合宿だ。と言っても差し支えないような準備期間だった。

 知らせを受けてからの2日間はあっと言う間に過ぎ去ってしまった。実際にこの2日間で優が何度あっと言うような機会にであったかわからない。まったく勘弁してもらいたいものだ。こんな台詞も、幾度使ったものか……。


「あーくそ、眠いなぁ」


 ほぼ半開き状態の瞼を右手で擦りながら、私服姿の優は学校を目指していた。私服と言っても、優の場合はただベストを脱いだだけなのだが。

 時刻にして7時ジャスト。集合が7時30分と設定されているため、サトシとの会話のためやむを得なくこんな時間に家を出たのだ。

 遥の家によるついでに千尋に話を――というのでもよかったのだが、しかしそれではきっと彼女に要らぬ心配をかけてしまうだろう。優はそれは避けるべきだと判断したのだ。


「それでこの状態じゃ世話ないよな」


 誰に言うわけでもなく、自分に言う。別にこれは彼がボッチだとかそういう話で、ただたんに嫌気が指して自分に嫌みを言っただけだ。決しておかしな意味ではない。

 しかし本当に、人の心配してこの状態では世話がない。

 すでに校門の前についているとは言っても、それが閉まっているのだから。

 

「これは、入っても別にいいよな……」


 いや、入る。うん、考えるだけ無駄だろう。

 これは自暴自棄とでも言うのだろうか、優はその眠気のあまり考える事を止め、強硬手段にでた。正門から少しはなれたところのフェンスを飛び越えて、そのまま校内へと侵入したのだ。普通の人間なら通れるはずのなら高さでも、優なら難なく飛び越えられてしまうのだから仕方ない。


「よし、アイツの部屋は確か4階か」


 実際全然よくないのだが、今の優にはそんなことどうでもいい事だ。

 とりあえず適当な茂みに身を隠し、そのまま質量変化のコアを使って屋上までひとっとび。そこから今度は電磁弾で電子ロックの強制解除し、校舎内へと進入した。

 よい子は真似してはいけない犯罪進入方法だ。


「ふぁ~」


 仕事(?)がひと段落した所為か、1つ大きな欠伸がでる。無意識のうちに口元に手をやり、目元に雫が溜まった。

 優は目元をシャツの裾でこすりながら、目的の部屋――公務室である402号室へと向かう。


「やっと着いたか」


 家をでてからはや20分弱。なにやら微妙な時間になってしまった。早急に話を済ませなければならないだろう。

 優は施錠された扉を例の如く電磁弾で無理やりこじ開けると、速攻で仲へと進入し適当に機械に電源を入れはじめた。3つ目くらいになるだろうか、それの電源を入れるとゴウゴウとモーター音が聞こえ始め、その音は次第にチャイムの音へと変わって行った。優はその機械の、呼び出しと書かれた赤いボタンを押していたのだ。それはまさに目的のボタンで、今まさにサトシを呼び出しているといった状態だ。

 それからしばらくして、チャイムの音が切れる。それと共に、部屋のそこらに置かれたスピーカーのような装置から、サトシの姿をかたどる高感度立体映像が映写される。


『ああ、なんだ神田君か。なんだいこんな時間に珍しいね。君はまだ夢のせかいで楽しんでいるものだとおもっていたよ』


 なんとも嫌味な言い方をしてくる人物こそまさに吉田サトシだ。


「……そうですね。物凄く寝ていたいです。でも、今日からこっちは合宿でしてね、朝が早いんですよ」


 同じく嫌味な口調で返答する優。だがその中には明らかに眠そうなものがあり、逆になんとも間抜けなものになっていた。


『そうかい。――でも、ただおしゃべりをするためにココに来たんじゃないんだろ? 君はあまり僕と話すのが好きじゃないみたいだからね』


「そういうことを自分でいうもんじゃありませんよ」


『ははは。そうだね、自虐ネタは控えようかな。――それで、なにが訊きたいんだい?』


 ようやく本題。といっても残り時間はもう5分と少ししかないのだから、もうここらで本題に移ってもらわないと困るか。


「実は、先日またなにものかが攻撃してきたんですが、取り逃してしまいましてね」


『ほう。君が、珍しいね』


「まぁもったいぶらずに言ってしまうと、何者かに攻撃を阻害されましてね。……単刀直入に訊きます。電磁波を一瞬にしてかき消すような能力を持った人間を、知っていますか?」


『それは、ジャミングじゃなくて?』


「いえ、ジャミングだったら電磁弾を撃つ前に阻害されます。阻害されたの着弾寸前のときですよ」


『なるほど……』


 立体映像のサトシはいかにも考えている顔になって、顎に手を添えた。


『それはきっと、中止能力者エレクトルキャンセラーだね』


中止能力者エレクトルキャンセラー?」


『そうだよ。最近噂になっていてね、なんでも、君と同様にして特殊な体質――これはもう能力といってしまったほうがいいかな、を、持っていてね、どうやらとある組織のトップにいるみたいなんだよ』


「とある組織?」


『そう。これは君もよく知っている組織だ』


「……影鴉(レイヴン)、ですか」


『そうだ』


 なるほど、それならあのときのことも説明できる。ただたんに、自分の部下を回収して行ったのだ。おそらくあのときの黒い光も、何かしらのエネルギー衝突による発光現象と捉えるのが一番か。


「なるほど、わかりました。ありがとうございます、そっち(・・・)はまだ日も昇ってないでしょうに」


『いや、いいさ。コレもサポーターの仕事だ』


「はい。それでは」


『うむ、合宿楽しんでおいで――』


 ぷつり。

 高感度立体映像は動くを止めゆらゆらと歪んでいき、そして崩れ去った。いくつかある機会の電源は外部から自動的に切られており、それで消えたのだ。どうかんがえてもサトシの仕業だから、変に調べる必要もないだろう。

 さて、時刻は7時26分。

 もうじき出席確認が始まる。

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