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学園の神鳴り殺し  作者: 片岡 雅
-梅雨の修行旅:合宿編-
81/110

◇9-7◇

 現時刻8時20分。場所、生徒会室。

 優の目の前には、現在進行形で妹について熱弁する国立神桜高校生徒会長こと古川幸男が立っていた。ガッツポーズをしながら語るその姿は、滑稽を通り過ぎて言葉もでてこない。

 現在この部屋には優たち2人しかおらず、ある意味では拷問に使えそうだ。

――さてそんな冗談はさておき、本題に移る。

 まずはなぜこんなところに優が来ているかという話なのだが、それはつい数刻前にさかのぼる。

 優にしては珍しく早い時間に起床したため、なんとなくという形で朝早くに登校したのだが、それが悪かったのだ。妹が合宿に行くということで何かピリピリしていたのかは知らないが、校舎のなかで生徒会長と遭遇(エンカウント)してしまい、つかまってしまったのだ。

 しかし、ココで不思議なのはなぜ彼がそんな朝早くにいたのかだ。一応言っておくが、優は今日も例の如く空を跳んで学校まで行ったのだ。そのため登校した時間はおよそ7時40分。普通に考えれば早すぎる時間だ。学校が開いていたのが奇跡とさえ思えるくらいに。

 なのになぜ校内にいたのか……。


(――まさか!?)


 まさか、校内でずっとスタンバイしていたというのか……。

 優は内心で驚愕の表情を浮かべる。そしてそれと同時に、幸男に対して嫌悪感を覚える。

 そして次に、なぜ幸男が優をつかまえたのか、ということだが、これは以外にも素直なものだった。合宿が始まるにあたり、学科こそ違うが彼の妹である涼子を見守ってほしいというのだ。それについては、涼子は優の正体を知っているわけだし断る理由もない。だが、そこからどうして幸男は妹のことを語りだすのか……。まったく困ったものである。


「あの、それで会長? 妹さんを見守ってほしいとは言いますが、一体なにから、合宿はそんなに危険ですか?」


「あの子のなにが可愛いってそれはもうあの下……って、ああ。そうだね、それを言ってなかったか」


 優の質問に気付かない、なんてことはなかったようで、語りを中断して応答してきた。


「えっとだね、実は、今回の合宿はこの地区内ではなく、壁外の自然地区になっているんだ。勿論、安全圏だけどね」


「え、それは初耳です」


 優は驚きを隠しきれず、言葉をもらした。


「うん。まぁまだ公表されてないからね」


 自然地区とは、壁に囲まれていない地区のことで、さらにそれを安全圏/危険圏/災害圏の3つに分けて考えられている。そもそも地区というものが壁内地区と自然地区の2つに分かれているから、それを考えると4つほどに分類されている事になる。

 今回合宿で行く予定の安全圏は、壁内よりも電獣の出現が頻繁だが、それでもそれぞれの個体自体の能力地が比較的低い地区だ。

 ちょっとした腕試しやオリエンテーションなどには最適だろう。


「そこでだ、君は電磁科に属しているのだから、腕は立つだろう。噂もよく聞く。だから、涼子の事を守ってもらいたいんだ。勿論学校を信用していないわけじゃない。でも、万が一でもだ、何かあったら生徒である君のほうが動きやすいとおもう。だから、もしもの時は、あの子の側にいてやってほしい。頼む、このとおりだ」


 そう言って、幸男は自ら頭を下げた。

 正直言って、このような状況になるとは優には想像もつかなかった。


「わかりました。わかりましたから頭を上げてください。……妹さんのことは、俺が必ず守りますから」


「ありがとう。恩に着るよ……」


 まさか幸男がこんな事を言い出すとは。いつもの彼からは想像できそうにない真面目な一面に、優は言葉を失っていた。すこし失礼だとはおもうが……。


「――あのところで、さっきから大事そうに握っているそれはなんなんですか?」


 話が一段落ついたところで、優は前々から気になっていたそれを訪ねた。

 優としては説明を求めたかったのだが、幸男はえ? なに? と言わんばかりの顔で、


「花束だけど?」


「いやだから、どうしてそんなものを今持っているのかって訊いているんです。オレに渡すなんてこともないでしょうし、ずっと持っている意味がわかりません」


 すると今度は、あぁなるほど! と言わんばかりの顔になり、握った花束を優につきだしてきた。


「は?」


「これを君の手から涼子に渡してほしい。きっとあの子も喜ぶ」


 そういって、幸男は優しい笑みを浮かべる。また、意外な一面を……いや、妹への愛はいつも通りか。何が違うかと言えば、誰の手から、ということだ。


「わかりました。責任をもってお届けします」


「んー、まぁそれでいいだろう。よろしく頼むよ」


「はい」


 現在時刻8時10分。天気は晴れ。

 校舎のなかには、すこしずつ生徒が登校してきていた。

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