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学園の神鳴り殺し  作者: 片岡 雅
-梅雨の修行旅:合宿編-
77/110

◇9-3◇

 1限目開始を知らせる予鈴が鳴るころ、遥は優や幸一たちと共に特科棟3階の電磁科施設に集まっていた。実習の授業ももう何回目かで、オリエンテーションなんかはすでに終えている。今では少しばかりだが、模擬戦の様な事もしているのだ。

 そして、優はその模擬戦が1番嫌いだった。

 理由は単純明快。幸一がいる所為だ。

 4月の校内探索のとき、優はまだ普通化生徒だった幸一とここを訪れ、1度軽い模擬戦をしている。そのとき、ついつい本気を出してしまい、幸一を圧倒してしまった。そして、電磁科生となった幸一は今でも、そのことをしっかりと覚えているのだ。――つまり何が言いたいかというと、幸一が優の実力を言いふらすおかげで、隠す事もままならなくなってしまったのだ。本人にはおそらく悪気はないのだろうが、勘弁してもらいたい。奇跡的にまだ正体はばれていないが、それも時間の問題だ。

 なにはともあれ、担当教師の話によると、今回の授業はその模擬戦だそうだ。正直しんどい。優はそう思っている。

 ちなみに、この実習の授業は実技テストの成績で3つのグループに分けられており、嬉しい事に優も幸一も遥も皆同じグループだ。これはもともと優が遥と一緒にいるほうが何かと都合がよいからと、遥の教育をした結果だが、幸一の場合は、まぁオマケである。


「しっかし、初心者の俺が《こっち》これるなんてなぁ。これも神田のおかげかな?」


「そうだ……」


 意図的に一言で会話をきり、そのいかにも嫌そうな顔で、辺りを見回す。実習は2クラス合同で行われる。このためにも、グループ分けされているわけだが――とにかく、約65名を3つに分けていて、1つのグループに人は約22人となっている。

 そしていつもどおりなのだが、その約22人の視線が、少しずつ集まってきていた。


「マジでヤダ」


「まぁまぁ。それにしても、今日は誰が神田に吹っ飛ばされるのかな~」


 馬鹿みたいに腕を頭の後ろで組みながらいう幸一。あ、いや、馬鹿だったな。

 本当に、嫌なやつだ。面倒くさいヤツだ。


「なんで教えちゃったんだろぅ……」


 まるでこの世の終わりであるかのような絶望的な笑みを浮かべ、優は1人左斜め下を見つめた。

 そんな彼を見かねると、遥が駆け寄ってきた。女子である彼女は別の列にいていままでの話には絡んでいなかった。


「どうしたの優くん、そんな顔して、現実逃避?」


 何故か妙にグサッとくる。もちろん本人に悪気はない。こういう天然なところを見てしまえば、なんというか、幸一とあまり変わらない。


「いや、別に。――それよりも、遥のほうは列抜けてきてよかったのか?」


「うん。こっちはもう準備は終わったから。佐藤くんに相手頼もうかなと思って」


 ほー、と意外そうな顔をする優。それと同様に、幸一も少し驚いた顔で、


「なんだ珍しいな、俺はてっきり、神田とやりに来たと思ったんだけど」


「いやぁ、優くん強いからさぁ」


 遥は苦笑いで頭をかく。


「まぁ、その気持ちよくわかるよ。神田はなんでかしんないけど、こう、なんか持っている感じがするんだよな。まるで……本職みたいな?」


 その言葉に、一瞬時が止まる。まさか幸一からこんな言葉を聞くなんて、信じられない。

 そして焦った優は付け足すように、


「そんなまさか、きっと俺より強いやつはたくさんいるって、な?」


「うんうん。きっとそうだね」


 2人して焦りにあせる。

 普通ならば疑っていいところなのだが、幸一が馬鹿なのか、


「だよな。だってこんな高校生がそんな仕事してるの想像できないし、それによ、噂じゃ今この町に来てる神鳴り殺しは、冷徹で血も涙もないって話だ。そりゃ神田には当てはまらないだろ?」


 一見疑ったような表情を見せたくせにいきなりひょろっとした態度をとる。別に優自信、彼がどんな態度をとっていようとも関係はないのだが、それでも、最後の話はどうしても納得できなかった。


(……なんで俺がそんなひどい噂になってるんだ……?)


 意味がわからなすぎて再起不能になりかける。

 そんな様子に気づいた遥が、そっと彼の腕をつねって目を醒まさせた。


(優くん、これはチャンスなんだよ? ここで騙し通さない手はないよ!)


(そうだな。つい取り乱してしまったんだ。うん)


 軽く目を会わせて頷いただけでも、2人にはしっかりとした意味があった。


「それじゃあオレじゃないな。なんせオレは、可哀想なものを放っとけないタイプだからな」


「そうだね」


「ああそうだ。例えば幸一とかな」


「そう……だ……? え?」


 こればかりは遥の考えていたような台詞ではない。これは、優から幸一への細やかなお返しのつもりだ。


「なんか、その、ムカつくな」


 軽い冗談のつもりで右の拳を肩まで運ぶ。


「お互い様だ」


 優はあくまでも冷めた口調で、不適な笑みをこぼした。


「……お前、結構意地悪なんだなぁ」


「最近よく言われるよ」


「ほえぇー」


 恐らく最後の返事は話を聞いていない返事だ。

 つくづく面倒なやつだ。

――それから少しして、部屋の中にホイッスルの音が鳴り響いた。男子組がグループを組み終わったのを見て、担当の先生が鳴らしたのだ。

 それから優たちは組んだ人同士で並び、順番に模擬戦をこなしていった。特殊なマジックミラーで内部からは敵以外が見えないコートで、いくつもの無機質の弾丸が交錯して行ったのだ。

 これを1グループが3回ずつ繰り返していく。これをして、今日の1限目は終了した。

 遥対幸一の結果としては、優は予想できたが、幸一の勝利だ。遥はどうも前線が向かないようだ。サポートに回ってもらったほうがいいだろう。


 さて、次の授業はなんだったか。

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