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学園の神鳴り殺し  作者: 片岡 雅
-侵略者の使い:入学編-
71/110

◇Ed-1◇

 そろそろ日も暮れてくる頃だろうか。横殴りの日差しが窓硝子に反射して、これでもかというくらいに眩しかった。扉の前に家に背を向けるか立ちでたっている優だが、向かい側の家なんかからの反射光が半端なじゃかった。


「本当に行くのか?」


「ええ。もうココに残る意味はないもの。それに、新しい1歩を踏み出す為にも、ここにはいられないわ」


 七日はどこか寂しそうな表情をしながら、優に向かって笑いながら言った。


「でも、さすがに2度と戻らないということもないわよ? 一応この町は私の故郷だもの。災害が起きる前だって知ってるんだから。そう簡単には忘れられない。……我が侭かもしれないけどね」


「いいんじゃないか? 戻ってきたら遊びにこいよ? 七日さんの《秘密》知ってんのオレくらいだし」


 悪戯な笑みを浮かべる優。

 《秘密》だなんて最後に使ったのは一体いつだったろうか。子供みたいな言い回しが懐かしく思えてくる。そんな感情が湧くのも、もしかしたら全てが1段落した所為かもしれない。

 そんな様子に七日は少々怒り気味で、


「絶対誰にも言わないでよ?」


「ああ、言わないさ。組織のやつが来ても黙秘権を行使するとも。同じ思いがあって共感できるところとかあるからな。駄目だとわかってても引き渡せない」


「神田君って、結構滅茶苦茶やるんだね。組織に反抗したりさ」


「そうかもな。でも、何とかやってけてる。――だからさ、七日さんも何とかなるって」


 いままでの自分の事を思い出しながら言っているのか、優は若干苦笑していた。


「それにしてもさ、一週間くらい前は完全に赤の他人って感じでいたのに、何かしらのきっかけでここまで喋れるもんなんだな。少し以外だった。七日さんが思いもよらない行動にでるのを見れたり、だとか」


「またそれ? 神田くん決行意地悪よね……」


 はははと、2人夕日のもとで笑いあう。

 優はあまりしみじみとした別れが好きではない。というよりかはまず、別れそのものが嫌いだ。だが、今回ばかりはどうしようもない事だった。七日は今回校内で起きた一連の事件の重要参考人だ。最悪独房行きだって有り得る。

 だが、今の彼女にはもうそれまであった野望はない。悪感情もないのだ。それを知っているからこそ、優は彼女の事をどうしようかと、悩んでいた。

 そこで七日の言葉を聞いたときは、優はかなり驚いた。


「私はこの町から出て行くわ。私がすべき事を探す為に。どこかにある、大事なものをまた見つけるために」


 そう言ったのだ。それで優は決心したのだ。七日を逃がそうと。それから優は七日を家にかくまって、準備を進めて今に至る。

 今日は試験最終日から2日目だ。

 今日まではいろいろと忙しかった。試験最終日は涼子との待ち合わせを忘れていてがみがみ言われたり、昨日はツカサとの待ち合わせにいけなかったことの謝罪をして、その理由をいろいろ誤魔化しながら並べて、結局怒られた。

 それからの今日だ。かなり疲れた連日だったが、そんな疲れも燃えるように美しい夕日が忘れさせてくれそうだ。

 こんなどうしようもない別れには、そんな夕日が似合っている。


「それじゃあな。気をつけて」


「ええ。あなたも気をつけてね」


 優の道も、まだ始まったばかりだ。またいずれ七日の道とも交わる事があるかもしれない。その時はまた、力を貸してもらうことがあるかもしれない。

 だがいまそんな難しい事を考えることはなく、優の頭の中では、七日との別れの言葉と共に、これからどうやってツカサや涼子、それに加えて遥に言い訳をしようかということ以外なかったのだから。



                    -侵略者の使い:入学編-~完

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