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学園の神鳴り殺し  作者: 片岡 雅
-侵略者の使い:入学編-
65/110

◇8-5◇

 しばらく続いていた道は、第一体育館から少し離れたところにあるやぶに続いていた。しばらく暗闇の中にいた所為か、外の光は眩しすぎてついつい目を瞑ってしまう。少しずつ目を開けて慣らせようとするが、なかなか時間が掛かりそうだ。

 だが、これで外にでることができた。


(朝ってことは、オレあれからずっとあそこにいたんだな……)


 脱出の事が頭から消えて、ふとそう考えたとき、1つ問題が浮かんだ。


(……あれ? ってことは今日はテスト2日目? もう始まってるんじゃ……)


 まったく持ってその通りである。テストはすでに開始していた。それももう残すところあとは実技のみである。しかもその実技は今、大変な状況に陥っている。現在の優には、そんなこと知る由もないのだが。

 しばらくして、ようやく目が慣れてきた。辺りを見回すと、人気のまったくないやぶが広がっていた。すこし離れたところにある第一体育館に目が行くが、それはおそらく他に何もないからだろう。


(とりあえず、移動するか)


 今はまず、情報が必要だ。時間はライターで調べることができるが、こうも見通しの悪い外にいてはいつ敵に狙われるかも分からない。優なら人工の電獣が来ても対処できるし、建物の狭い中のほうが安全だろう。

 やぶから少し走って、第一体育館の裏の扉を開いた。そこには人は居らず、実技のテストはきっと第二体育館で行うのだろうと優に教える。

 カーテンの開けられた窓から差し込む光が、フロアを照らしていた。

 体育館ともなるとかなり広いが、それでも見通しは最高だ。なにせ空間が1つあるだけなのだから。

 優はそんななかで壁に体を任せ、思考をめぐらせていた。


(まずオレを殴った奴は誰なのかだ。これはまず影鴉(レイヴン)の奴らで間違いないだろう。電磁流兵器がないんだから絶対だ。それとあと、あの時俺は七日に会ってたのか……あぁ駄目だ、これは思い出せない)


 優の頭の中では、混雑する曖昧な記憶と情報が渦巻いている。


(――とにかくだ、とにかくまずはどこかに潜む敵を対処するのが先決だ。最悪、成績とかは俺にはどうという物でもないからな)


 あまりよくない論理に至った。


(そうと決まれば、まずは情報を――)


 優が壁から体を起こしたその時だった。外から声が聞こえてきたのだ。しかもその声は、どちらも聞き覚えのある声だった。話の内容はわからない。だが、あまりいい気はしない。何せ今はテスト中、そとを出歩き人が早々いるはずがない。

 壁に耳を這わせ、盗み聞きを試みる優。だが、そこで会話は途絶えてしまった。それどころか、だんだん優の入ってきた扉へと足音が近づいてきていた。


(やばっ)


 優は急いで更衣室へと駆け込んだ。部活なんかで使うための小さな更衣室だが、裏口から近い位置にあって助かった。位置的に女子更衣室だが。

 ガチャンと、扉の開く音がドア越しに聞こえた。入ってきたのは足音からして2つ。先ほど聞こえた声といい、正体を確かめたいのは山々なのだが、そうしてはこちらの存在にも気付かれてしまうと、優は行動に移せずにいた。

 すると、


「ここなら問題ないだろう。さて、念のためだ、コレを渡しておこう」


「はい。……これはやはり彼のためですか?」


「そうだね。いつ来るとも分からない。念には念をという奴だよ」


「分かりました。常時携帯しておきます」


 男の声と、女の声。なにを話しているのかは相変わらず分からないが、明らかに怪しいものだ。


「さて、それで、試験のほうはどうだ?」


「順調に進んでいます。スキルは問題ないでしょう。あとは――迫り来る脅威に精神と肉体が耐えられるか、ということですね……」


「そうか……。完成が待ち遠しいよ。フフ……ハッハッハッハ!!」


 そこから、遠ざかっていく2つの声。

 会話の内容は、優は最後の話を聞いてなんとなくの察しが着いていた。これはあまりよくないものだ。できれば当たってほしくないとまで思えてくる。


(でも、そう都合よくはいかないんだろうな……)


 最近はいろいろあった。新歓での襲撃に人工電獣。何もないほうが逆に可笑しい。

 優はライターを片手に、そっと更衣室の扉を開けた。ライターではELLアプリを起動させている。いつ敵が来ても大丈夫なようにだ。人工電獣はまだプロトタイプでコアが半透明なキューブとして見えるはずだから必要ないと思えるが、それでも念のためという奴だ。

 そっと、そっと扉から外へでる。しかしもう、そこには誰もいなかった。先と変らずどこまでも続く体育館のフロアがある。しかし扉が開いた音は聞こえなかった。裏口ならともかく、他の扉は開けたらガラガラガラと騒音が響く。つまりまだ外へはでていないということだ。

 この広い空間のなかで、隠れられるところは、優には1つしか考えられなかった。放送室だ。体育館の舞台裏から階段で2階に上りすぐある、放送室。体育館内を見晴らす事もできるし、外の様子もうかがうことができる。なにより第二体育館をモニターにて監視する事ができる。

 優には知る由もない絶好の待機ポイントだ。


(だとしたら、もうばれてるかもしれないな……)


 それから優は急ぐのを止めた。学校を壊さないためにも、特に精密機械類が集まる狭い放送室での戦闘は極力避けたい。できることなら、敵をおびき寄せてから叩きたいのだ。

 舞台上、戦闘するのならばもってこいの位置まで来た。暗幕もしばらく前に取られた間まで、動くのを阻むものは何一つない。舞台裏ともなれば上へと続く階段もある。いざとなれば逃げる事にも差し支えない。


(来い……!)


 準備は万端だ。

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