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学園の神鳴り殺し  作者: 片岡 雅
-侵略者の使い:入学編-
63/110

◇8-3◇

 遥たちが索敵試験を終える頃、優は手紙を読み終えていた。補修された床の裏側に隠されたそれは、驚くことに優をこの一連の事件の真相へと導いた。

 泥沼のなかに潜む真実、まさにそんな感じだ。

 差出人の思いがこもった――心が詰め込まれた手紙だった。それは、優は生まれてはじめて目にするものだ。彼にはもう家族にそんな手紙を送る事はできない。だが、この先家族以外の人間に送る事ならばできる。――そしてこの手紙も、まだ宛先に届ける事はできるだろう。


――家族への手紙――


 これには、優は強く思うものがあった。勝手に読んでしまったのは悪く思うが、いろいろわかった。まず、この手紙の差出人はすでにこの世にはいないこと。そして、宛先人物はまだ生きていること。


(この手紙は、絶対に届けないとな……)


 優は手紙をもとあったように折り紙で作られた簡単な袋をにしまうと、ライターのライトを廃れた教室の中へと向けた。初めは考えもしなかったが、どうやら教室の天井から地上への道に続いているらしい。これは先ほどの手紙に書いてあった事だ。

 初めに優が倒れていた机の上に、それはあった。なんともまぁ近くにあったのだろうか。灯台下暗しとはよく言ったものである。下というよりは上だが。


「しっかし、一体コレどうやって登るのかな(まったく誰だよこんなところに連れてきたやつ)」


 心の泣きでひそかに愚痴をこぼしつつ、ぼやいていた。抜け道を言っても、それは天井のタイルが1枚剥がれた程度のもので、まず狭い。そしてそのうえ結構高さがある。机に乗ってやっと手が届くくらいだ。さらには手が届いても、その天井はあまりにボロボロで、ぶら下がりでもすればたちまち崩れてしまうのではないかいうほどである。

 まったくどうしたらいいものか、悩まされるばかりだ。



――その頃、遥たちは……。

 体育館、舞台上の試験用銃をそれぞれ手に取り、射撃という名の実戦のため準備をしていた。周りのほかの生徒はまだ混乱している様子で、遥たちのように舞台上の武器をとりにくるものは本の数人だった。扉から出て行こうとするものもいわしたが、当然開くはずもなく、誰も逃げる事はできなかった。体育館中に声を掛ける生徒もいたが、それが皆の耳に届く事はなかった。

 こうなってはもう、自分の身は自分で守るしかなくなってしまう。しかし、コレではもうそれすら仕方がないといえる。


(ゴーグルも付けておこう)


 威力が弱くとも電磁弾が支給されているという事は、おそらく射撃の的となるのはエレクトリックビーストすなわち電獣であろう。ということはゴーグルをつけもせずにいるというのは、この場では防具もつけずに戦場へ向かうに同じ、危険な事だ。

 そんな遥に倣って、幸一と田中もゴーグルをつける。コレで一応準備万端といったところだろうか、しかしそれでもやはり不安だった。まだ未熟自分達に実戦などできるものかと。確かに、他の生徒と比べれば、遥自身戦闘を行っていないにしろ対電獣の戦いを幾度か見ているので、大体の勝手なんかは分かる。


「私も、ここで頑張らないと……!」


 銃を右手に、遥は左手で小さくガッツポーズを作った。

 幸一と目を合わせて、こくんと頷く。


「――! そろそろ来なすったみたいだな」


 その時どこかで硝子が割れる音がした。自然とその音の方向に視線が行く幸一。遥も同じようにそちらに視線がいく。そしてそれと同時に、試験用銃に弱い電磁弾のカートリッジを装填して、スライドを引く。

 ゴーグル越しに見た先、そこには先日遭遇したホーネットモデルと同じものがいた。

 しかしその姿に驚愕するより前に、遥はその数に驚かされた。


「なんだあの数!?」


「キャー!! 何あれ!?」


 舞台の下からもようやく反応する声が聞こえた。

 割れた硝子の隙間から進入したホーネットモデルの総数、約60ほど。これはシャレにならない数だ。


「……おい、相沢、あれ、なんとかなると思うか?」


 幸一の視線は敵に向いたまま、彼はなんとも不安そうな声を上げた。


「……やるしかないよ。私たちだけでも数を減らさなきゃ、大変な事になる」


 いくら試験とはいっても、これは実戦。ホーネットモデルに殺傷能力があるかないかは、以前には分からなかった。だからそのぶん、油断してはいけない。被害がでる前に何とかしなければならないのだ。

 赤い光の蜂が、羽音を立てずに体育館の中を飛行している。舞台下から行動を起こそうというものは、ひとりもいなかった。


「やろう、佐藤くん田中くん!」


 遥は覚悟を決め、舞台上から駆け下りた。

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