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学園の神鳴り殺し  作者: 片岡 雅
-侵略者の使い:入学編-
55/110

◇7-3◇

 テストは思ったよりもハードルが低く、受験問題の簡易版のようなものだった。しかし問題数が少ない分、1問に当てられる配点もまた上がってくる。つまりは1問でも外してしまうと、大幅に減点されてしまうのだ。そんなことを考えてみれば、油断なんてできない。

 皆同じような事を思ってか、クラスのなかは思いもよらぬ緊張感で溢れていた。

 ただし、1人は違った。彼は純粋に問題が解けなくて、ピリピリしているのだ。その彼というのが、他でもない、神田優という少年である。


 彼はほかのクラスメイトと違い、入試をして入学したわけではない。組織の問題でこの土見ヶ丘地区に配属されて、そこからの流れでここに入ることとなり、そのころにはすでに当たり前のように入試などは終わっていた。3月中旬の事である。

 よって、彼は勉強をしていない=彼の脳みそに知識は詰まっていない=実力テストが解けない、というこの最悪の状況に優は差し掛かっているのだ。もともと勉強の苦手だった彼には、これは相当な痛手であろう。事前に遥たちに勉強を教えてもらった事も幸いし、完全白紙というわけにはいかないが、それでも半分いくかいかないかという際どいものである。

 もしコレが小学生のテストだったら解けただろうに……優が組織に入ったのは10歳のときなのだ。つまりはそのころまでは人並みに勉強していた。いや勿論、組織に入ったからといって勉強できないわけではない。ただ彼の場合、勉強する以上に神鳴り殺しの仕事に強い思いを持っていて、勉強どころではなくなっていた。することにはするが、なかなかうまくいかなかったのだ。

 彼の成績表があるとするならば、そこには幾羽とアヒルが並んでいる事だろう。

 まぁそんなわけで、実技以外はダメダメな神田優である。


 それに比べ、遥は並といったところで、解けない問題はチョコチョコ見えるが、大体は、約7割程度は解けていた。

 彼女はそんな《なんとなく平均系女子》なのだ。なので実技の成績も勿論平均レベルだ。まぁどちらかといえば索敵技術は中の上といった具合だが。なのでもし本当に彼女がABNに入ることとすれば、この先技術を身に付ければ活躍する事間違いないかもしれない。

 とは言っても、それにはまず彼女の時折見せるドジなところをどうにか補わなくてはいけないだろうが。


 さて次は、遥かの2つうしろの席で嫌な汗を流し固まっている井上ツカサだ。

 彼女は中学時代の成績も下の上、ここでの授業も把握具合もまた中の下程度と、前に触れたとおり優と同じく勉強が苦手だ。が、優と同じように、事前に勉強していたので、少しは問題が解けていた。

 とまぁこんな感じで、皆それぞれここの実力を出していた。

 国語の文法に英語の文法、数学の方程式に英語の文法、英語の文法に英語の文法などなど、数少ないながらも積み込まれた問題の数々を、皆真面目に解いていた。


――テスト開始から2時間が経った。実力テストの終わりを告げるチャイムが、優たちの教室でも鳴り響く。


「はーい、では答案用紙を裏向きにして、後ろの席の人が持ってきてくださいねー。あでも、答案は1教科ずつ別々で持ってきてくださいね。出席番号順にするのも忘れずにー」


 1-D担当の先生が声を掛けた。なんとも気の抜けた先生だろうと思うなか、絶望的な敗北感に浸る優。彼はどうやら答案用紙の半分ほどが白紙で、別に何かと勝負しているわけでもないのだが、負けた気がしていたのだ。

 そうやって優がひとりため息を吐いていると、右隣からちいさく「ドンマイ」と声を掛けられて、笑うしかなかった。遥はどうやら結果としては上々といったようで、優の姿に苦笑していた。

 そうしたあと、優はふとツカサの方を向くが、彼女の顔は見れなかった。なぜならツカサはその時机に伏せていたからだ。そんな様子から、テストのほうはよくなかったものだと悟られる。


(あとで励ますか)


 心のなかでそんなこと思う優であった。


「はーい。答案も問題ないし、それじゃ、私は行くけど、まだ学活あるから帰っちゃダメだぞー。じゃなー」


 最後まで抜けた感じの先生だった。それでもこの先生は、実は電磁科を担当しているというのだから、少し不安を覚える。失礼ではあるが、こんな先生で大丈夫なのかと。

 そういえばこんな感情はよく担任の大文字博に対してもいだくが、彼にはもう失礼だとか何とかは感じなくなっていた。ある意味残念な事だ。

 そうして、無事テストも終わり、クラスの中の緊張感がなくなっていき、皆いつもどおりわいわいやっていた。楽しそうに笑うものに目に見えない涙を流しながらわめくもの、皆それぞれだが、それでも皆言い顔をしていた。優が羨ましがるくらいに。


「神田くん、ちょっといいですか?」


 そのとき、クラスの中を見て優が感動に浸っていると、後ろから声を掛けられた。その声の主は振り返らずとも分かる。そのなんともいえない敬語じみたものは、七日しかいない。


「なに?」


 優が振り返って返事を返すと、それは思ったとおり七日だった。


「えっと、あとで体育館裏に来てくれませんか? ちょっとした頼みごとがありまして」


「別にいいけど、ここじゃ不味い話なの?」


「……はい」


 少し不味そうな顔をする七日。一体何なのだろうと疑問に思うが、ここでは不味い話しということなので今問いただすわけにもいかないだろう。言われたとおり体育館うらに行くことを約束する優。

 しかし放課後となると、ツカサとの約束もあるし、優からすれば早めに済ませたいものだ。


「あのさ、これから学活終わったらすぐにでもいいかな?」


「はい。なるべくすぐ行きます」


「わかった。すぐ行くよ」


 会話が終わったところで、タイミングよく西岡先生が廊下に見えた。七日もそれを見て軽く挨拶すると、自分の席へと戻っていった。クラスメイトも皆自分の席へと戻り、バッグを机の上に用意する。これで帰る準備万端、ということだろう。


(なんか忙しくなりそうだ)


 西岡先生が教壇に立つ。

 優はこの先のスケジュールが、少し不安だった。

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