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学園の神鳴り殺し  作者: 片岡 雅
-侵略者の使い:入学編-
54/110

◇7-2◇

 キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン。

 昔ながらの、どこにでもある、普通のチャイムが校舎中に鳴り響いた。教室で着席している優の耳にもその音は勿論届いている。今のチャイムは、学活の開始を示すものだ。

 彼らは今、とある人物の到着を待っていた。待っているのは担任の大文字博だ。いくら職員会議があるにしても遅いだろう。もう10分も経過している。実力テストもあるこの日は、時間の遅れは許されないだろうに、一体どこでなにをしているのだ。

 クラス全体が、どよんとしていた。


 それから更に5分、学活も終わりさていよいよテストだ、という時間帯、ようやく彼らの教室の扉は開けられた。

 ……しかし、扉の奥から現れたのは、博ではなく、西岡修平先生だったのだ。


「いやぁ、すいません。今日は大文字先生はお休みでして、代わりに私がここに来る事になっていたのを忘れていまして、まことに申し訳ない」


 そうやって苦笑いで頭を下げる西岡先生。そんな姿を見て、なんとなくみなも苦笑いしていた。いきなり来て誤られたら、怒るに怒れないだろう。そもそも相手は教師だ、上下関係もある。


「えと、時間もないので簡潔に連絡しますね。本日の日程は、ご存知実力テストの実地となっております。ですが、帰りの学活はしっかりあるので、勝手に帰らないでくださいね」


 そこらからぽろぽろと「まじかー」とか「えーやだー」だとか、いかにも気怠そうな台詞が聞こえてくる。言葉にはしないものの、優も内心では同じような事を思っていたのも事実だ。


「これは決定事項ですから、変りませんよ? ――それでは、皆さん頑張ってくださいね……明日のためにも、ね」


 そのまま柔らかい笑顔でさって行く西岡先生。彼の最後の言葉のとき、一瞬彼の瞳が熱を失ったことは、誰にも、優ですらも気付かなかった――。


 さて、学活も終わり、もうじきテストを先生が持ってくる。周りでは先ほどまでの微妙な緊張感から開放され、テストのことでまたざわざわと話し合っている。優はその中に混ざる気はさらさらないが、しかし、どうしても早いうちに済ませておきたいことがあった。

 優は席を立つと、遥の2つうしろの席まで行った。


「……なぁ、ツカサ、お前に言っときたいことがあるんだ」


 優に声を掛けられた事に相当驚いたのか、ツカサは呆気に取られた顔で優の方を向いた。


「いやその、やっぱりこないだは悪いことしたなと思って、改めて謝っときたいんだ。ツカサはああ言ってくれたけど、その所為でもし最近暗い顔してるんだとしたらさ、謝りたいんだ……!」


 優はツカサの目を見て、はっきりと言った。

 それを見たツカサは、ああ、この少年はこんなにも強い人間だったのかと、こんなにも前を見ていけるのかと思い、涙をこらえるので必死だった。彼の姿はいままで自分が持つことのできなかったものすべてを持っている。勇気というなの心を、優しさというなの思いを、そして――希望というなの道を。

 しかしそんな彼が、ツカサにはどうしてもわからなかった。


――なぜ、彼は……――



「悪かった、ツカサ」


 優の声がツカサの耳に響く。心を握られたような痛みを感じる。彼のことをまっすぐと見ることができない。彼のことを見るのが怖い。

 しかしツカサも、自分の感情を疑えど、目を背けることはできない。遥に申し訳ない――。


 この時、様々な感情が彼女のなかで揺れ動いた。こんな自体を引き起こした犯人は決まっている。神田優だ。――そしてそこから彼女を正気に戻したのも、彼だった。


「ツカサ、今日の放課後、カフェテリアに来てくれないか? お詫びになにか奢るよ」


 それは彼の必死の謝罪だった。ツカサにたいしてなにか言うわけでもなく、ただ引くわけでもなく、いままで通りに接しようとしてくれている。

 ツカサにとって、これ以上の優しさはない。これ以上に、心を揺さぶられたことはない。

――しかしだからこそツカサにはわからないのだ。こんな優しさを持っているのになぜ彼は――。


「――……わかった」


 結局、思いはまとまらなかった。最終的には話もまとまらず、ただ了承しただけ。


「ありがとう。それじゃ、先生来たから。――お互い、テスト頑張ろう」


「う、うん」


 優の後ろ姿なら、ツカサにも見れた。


 テストは1時間目から順に、国語、数学、英語、と単純な並びをしている。

 ちなみに、ツカサと優が勉強が苦手だ。こう、思わぬところに共通点があったりするも。……まぁ、これはあまり嬉しい共通点とは言えないが。

 まぁなんにせよ、彼らが顔をしっかりと会わせるのは、これからしばらくあとのことだ。

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