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学園の神鳴り殺し  作者: 片岡 雅
-侵略者の使い:入学編-
53/110

◇7-1◇

 やけに鋭い朝日がカーテンの隙間から差し込んでいた。リンリンリンリン鳴り響く目覚ましの騒音に意識を戻され、気づいた頃には時刻7時45分……。

 優が家から学校までいくのにおよそ30分だとすると、支度をする時間で……


「うわっ! 間に合わねえ!」


 ちょうど、10分ほど遅刻となる。

 優がバタバタと焦っていると、1階からチャイムの音が耳に届いた。



「――(今日はテストなんだし、)急いでね?」


「はい……」


 来客は遥だった。彼女は笑っているようではあるが、目が笑っていない。

 今日はどうやら早めに家を出たらしくて、優の家まではるばる遠回りしてきたのだそうだ。結構な話だ。しかし、災難なのは遥のほうだろうか、折角呼びに来たのに目的の人はまだ目が覚めたばかりのお寝坊さんだったのだから。以前優の家に泊まったときに彼が朝に弱いということは知ってはいたが、まさか遅刻しかけるほどのものとは……と遥は少々動揺を隠せない。彼が学校に遅刻してきたことは今まで一度もなかったのだからなおさらだ。


「あ、いや……違う……」


 遥の脳裏に恐ろしい光景が浮かぶ。目を閉じれば瞼の裏に写りすらする。

 それは、毎日のように屋上まで家から跳んで登校する優の姿だ。遥は以前、1度優に聞いたことがあるのだ。


『どうして優くんはいつも朝汗掻いてるの? 私とほとんど変らない時間に来てるのに、そんなに急いでるの?』


 それは不思議にも思うだろう。夏でもないのに毎朝毎朝汗を掻いて席についているのだから。なんとなく他のクラスメイトなんかは見ぬふりをしていたが、遥はコレがどうしても気になったのだ。

 そして返ってきた答えが、


『ま、まぁな。寄り道してんだよ、日課でさ』


 なんだろうかその日課とは。聞きたくともなかなか聞きづらい雰囲気にいつもそのことは訊けずにいた遥、だがしかし、今やっとその答えにたどり着いたのだ。


「ああやばいやばい、いそげいそげ……!」


 どこかの部屋から優の声が聞こえてくる。時間的にはもうそろそろ遅刻しても可笑しくない時刻だ。

――がしかし彼は遅刻はしない。おそらくこの先もずっとだ。なぜなら彼は――今日も明日も、学校まで跳ぶのだから……!!

 とまぁ遥がこんなくだらない究極の理論(略して極論)にたどり着いた当たりで、優がどうやらようやく支度を済ませたようで、遥を呼びに来た。


「悪いな遥。ちょっと衝撃強いかも知んないから、ちゃんと掴まっててね」


 遥はベランダにて優にそう言われた。

 始めた会ったあの日のように遥は荷物片手に優に背中に抱きつく。するとまた、優はいつの間にかつけていた彼の媒体――グローブになにか結晶のような四角いキューブを握った。するとどうだろうか、いつか体験した、あの浮遊感が現れ、風が遥たちを少しずつ浮かせていった。


「それじゃ、跳んでこう!」


「え、ちょ、まっ――」


 優と遥は跳んだ。それはもう空高く。ほんの数回跳ぶだけなのだから、物凄い時間の節約ができる。……極力するべきではないのだが。

 それにしたって、疲労の代わりに遅刻が付かなくて済むのだから、これはいい事だ。高校生にとって遅刻は大事だ。

 優からすれば、初日のように登校中電獣が街中に出現したらそちらを優先しなければなるまい。そうすれば結果として遅刻する事も有り得る話だ。そんなこともあって、前々からこの跳躍に使う結晶(?)だけは許可が下りていたのだ。



 しかしそれにしても、


「キャッ――――――ァァァァアアアアア!!!」


 緊張感がないからか、思いのほか絶叫してしまった遥であった。このことには、今まで見せなかった遥の姿に優も少し驚いていた。

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