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学園の神鳴り殺し  作者: 片岡 雅
-侵略者の使い:入学編-
52/110

◇6-6◇

 早朝、優はサトシと通信を行うために、また公務室を訪れていた。時間も時間で昇降口玄関なども勿論まだ開いていないが、例の如く屋上へ跳びドアを無理やりこじ開けて入ったのだ。……その詳細については秘密だが。

 とにかく、公務室にいた。ココの扉もコントロール自体はサトシが握っているので、前もって開けてもらっていた。

 部屋の中は以前来たときと相も変わらずゴチャゴチャしていて、どこに何の機械があるのだとか、そんなことがもうさっぱりという風になっていた。こんなので部外者がここを訪れてしまったらと思うと、ゾッとする。おそらくそんなことはないのだろうが、注意しておくに越した事もないだろう、優はサトシに言っておこうと決めた。


(もう、来てもいいころだと思うんだけどな……)


 優がこの部屋に来てから、すでに20分が経過している。別に優が早すぎたわけでもないし、まったくなにをしているのか、困ったものだ。ああいう大人にはなってはいけないな、と世界中の人に伝えたい優である。


 それからまた数分のときが経つ。すると、ようやくデスクの上に置いてあった機械が動き出した。ゴウゴウとモーターが回り出し、ファンが動き、モニターが起動した。


『やぁ神田くん。いやぁまた悪いね、遅くなってしまったよ。こっちもこっちで忙しくてねぇ。――それで、そっちはいったいどんな進展があったんだい? あの組織について何か掴めたのかい?』


 例の新型システムで空間に現れた立体映像のサトシが目を光らせる。


「いや、残念ですがそういうわけではないです」


『そうか、それは残念だ。影鴉(レイヴン)……あの組織はまだ謎が多い。何しろ君のほうから最近情報が入ったくらいで、どのくらいの規模なのかも、どこの宗派から派生してきたのかも分からない。何より1番知りたいのはなにが目的なのかだけど、わからないのでは仕方ないよね』


 サトシの立体映像が「お手上げだね」、と両手を挙げる。

 ちなみに宗派からの派生とは、アール神教内部での思想の違いで作られたグループから組織化する工程のことで、思いのほかコレが多かったりする。反政府組織などの過激派集団や政治を行う上での政党の一部にもここから始まるケースがある。

 おそらく影鴉(レイヴン)もコレと同じパターンだと考えるのが妥当だろう。しかし、やはり目的が分からない以上は断定はできないか。


「でも彼らはオレがABNに所属している事を知っていましたし、攻撃行動にもでてきました。一体どこでその情報を知ったのかは分かりませんが、おそらくあの組織は我々を嫌悪している事でしょうね。その面を考えると、目的のほうは過激派側にかたよってると思ってもいいのでは?」


『いや、そうとも限らないね。攻撃的なのは確かだが、そこから過激派になるのは間違いだよ。組織のなかで思想がまとまるとも限らないからね。とはいっても、過激派ではないと言い切れないからまた面倒だよね。まぁ何はともあれ、警戒するに越したことはないよ』


「そうですね。気をつけておきましょう。――んで、そもそも今日呼んだ話なんですけど……」


 ここでようやく本題に移る。


「先日、人工のものと考えられる電磁生命体の襲撃を受けました」


『……人工? それは、ロボットとかそういうのじゃなくて?』


「いいえ、違います」


 サトシは明らかに動揺している。まぁ無理もない、なにせ人工の電磁生命体など前代未聞だ。しかし、この様子から見ておそらく遥の父親の研究も知らない可能性が高い。だとすると、言わないほうがいいだろう。信用していないわけではないが、念のためだ。


「まだ未完成のようで、コアのほうは半透明という具合でした。対人用の弱性電磁弾でも撃退できましたし、今のところは大した脅威ではなかったです」


『なるほどそうですか。それは今のところでは影鴉(レイヴン)の差し金と考えるのが一番有力でしょうが、なんとも言えないですね』


 顎に手を当てて悩ましい表情をする。

――すると、その時唐突に学校中に鐘が鳴り響いた。


「おっと、もうこんな時間ですか。最後にひとつ先生にお願いがあります」


『なんですか?』


「コアの使用を許可してほしいんです……!」


『君からそんなことを言い出すなんて、そんなに敵は強大かい?』


「いえ、ですが、念のために……」


『うん。まぁ、いいでしょう。コアの使用を許可します』


 しばらく唸るようにして考えていたが、笑って快く許可してくれた。何かを悟ったのだろうか。余計な事を考えていなければいいのだが……。


 さて、優もこれでもうここに来た目的は果たした。じき学活の時間も訪れるだろうし、長居は無用だ。


「それでは先生、オレはそろそろ教室に行きます」


『はい。それではくれぐれも、招待をばれないようにしてくださいよ?』


「わかってますよ。では」


 モニターが消えて、機会音が段々と小さくなっていく。そしていずれ、聞こえなくなる。それと同時に、優も公務室をでた。

 廊下には人もおらず、怪しまれる心配もない。もともとこの時間帯はこの階まで誰も登ってこようとしないので助かる。

 安堵のため息を吐きながら、優は教室へと向かった。

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