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学園の神鳴り殺し  作者: 片岡 雅
-侵略者の使い:入学編-
51/110

◇6-5◇

 何もない地面に、優の撃ち抜いた何かが落ちた。それは、言うなれば半透明のキューブで、何なのかは分からなかった。

 それでもただ1つ言えるのは、その正体不明の半透明のキューブが――電磁波を帯びていることだ。となると、当然この半透明も理解できる。おそらくは遥の父親の墓と同じ原理。電磁波で光を屈折させて不可視化させようとしているのだろう。それが中途半端になっていて、半透明なのだ。

 しかし妙だ。一体どこからこんな物がやってきたのか、明らかに優たちを狙っていたこのキューブは、一体なぜ完全な透明ではなかったのか。


(まさか、技術としては完成しているのではないのか?)


 研究が成功していても公表しないという、いくつかの例が優の脳裏を過ぎる。大体その場合は、何かしら公表する事や研究そのものに問題があったりする。――もし、遥の父親の研究もこれに当てはまるとするならば、あのシステムは墓自体、研究自体を隠していたのかもしれない。

 だとすると、地面に力なく転がるキューブの作者にこの場所を知られることは不味いだろう。早く立ち去るに越したことはない。

 しかし、


(この物体からは電磁波が感知できなかった……)


 そう、不可視であり、なによりも電磁波をまとっているのに、被災して電磁波に敏感になった優には今でもちっともそれが感じられない。

 これはあまり、よくない。

 ただでさえ見通しの悪い森のなかで、いつくいるかもわからない敵の位置を把握できないのはいささか不味い。

 しかも、優も一瞬だが奥の木のところで何かが光るのを確認している。

 敵の数は1ではない。

 と、その時遥がなにか思い付いたように声をあげた。


「どうした?」


「これ、蜂だよ」


「え?」


 いつのまにかライターを起動している遥の言葉に、優もライターを起動してELLアプリ越しに(レンズは休みだから置いてきた)キューブを見る。


「これは、ホーネットモデル……?」


 優もその姿に驚愕した。転がったキューブを包むようにして、赤色の光が蜂を象っていたのだ。


(普通、電獣は青白く光って見えるはず。だがこれは、それとは全く逆の色だ。このキューブをコアと見ても、これだって目に見えてる)


 優はいくつかあり得そうな仮説をたてていくが、どれも条件に当てはまらない。

 木々が風で揺れるなか、たどり着いた答えは――


「人工の、電獣……」


 不完全な透過も、これならば説明がつくだろう。

 だが、果たして人の手でコアを、ましてやコアに電磁波をまとわせるなど、出来るのだろうか。

 いや、悩ましいところまだ多々あるが、いまはまずこの状況を打開することだろう。

 感知できない以上、警戒することしかできない。

 優は銃は構えたまま、辺りに意識を集中させた。


「涼子は俺と遥の間にいてくれ。遥、これは実戦だ。敵に殺傷能力があるかわからないが気を付けろ!」


「うん!」


 遥も以前優から受け取った空薬莢と、髪に飾っていたレスビアンカの花を手に取ると、即席の戦闘体制を作った。彼女は以前話に聞いたレスビアンカの性質を利用するのだ。

 優は慣れた手つきで強めの電磁弾を装填すると、まず増したに転がったキューブをさらに撃った。そうしてとどめをさす。

 先ほどまで対人用の弱い電磁弾でとどめがさしきれていなかったのだ。

 ようやくはっきりと見えるようになったキューブを踏みつけ、辺りを見回す。

 ライターで片手が塞がるのは辛いが、ある程度なら赤い光で敵の位置がつかめるので、仕方ないだろう。

 敵の数は見えているだけでおよそ20。その奥にもいる可能性を考慮すると、一筋縄ではいかない。


「――!?」


 優の視界で赤い光が閃いた。それは数にして3つ。全くなめられたものだ。優はその光を難なく撃ち落とした。

 彼の背後では、遥も交戦していた。空の薬莢にちぎった花びらを詰めてそこらへ投げつける。レスビアンカの性質により、ホーネットモデルは次から次へと投げられた薬莢のほうへ誘われていく。

 そうして集まったのを、優がすべて撃ち抜く。

 戦況は、上々といって差し支えない。このままいけば確実にホーネットモデルを殲滅できる。


「ラストスパートだ!」


 1匹ずつホーネットモデルが地面に向かって落下していく。優たち3人の周りには、電磁波による実体を失ったキューブがいくつも散らばっていた。

 数が減ったのか敵側ももう勢いがなく、あと数分で決着がつく。


「遥、薬莢を!」


「はい!」


 遥は優に指示された通りにちぎった花びらの入った薬莢を渡す。優はそれを装填すると、前方に撃ちだした。残り数少ないホーネットモデルはそれに誘われていき、集まった来たところで優がすべて撃ち落す。

 やや時間は掛かったが、なんとか脅威は去ったようだ。増援のようなものもなく、作者が現れるようなこともなかった。


(これは、報告しておいたほうがいいか……)「遥、涼子、いますぐ家に帰るぞ。くれぐれも逸れるなよ?」


 空はすでに蒼紫色を帯びており、森の中はじき暗闇と化す。それまでに出なければいけない。

 3人は辺りをしっかりと警戒しながら、町へと向かって歩き出した――。




「――まさかここまでやるとは……意外とアレは邪魔かもしれないな」


  木々の合間に吹く夜風で白衣がたなびく。人差し指で軽くあげた眼鏡越しに、彼はまた少年たちを見ていた。

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