表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学園の神鳴り殺し  作者: 片岡 雅
-侵略者の使い:入学編-
50/110

◇6-4◇

 ガサガサ……。

 数メートル離れた位置にある茂みが怪しく揺れる。その動きにいち早く反応した優は、遥との会話を中断して、相手に気付かれないよう近づいていった。


(できれば小動物であって欲しいんだがな。ここで電獣なんてこられても面倒なだけだ……)


 そっと、そっと、揺れ動く茂みとの距離を縮める。

 腰のホルダーから銃を取り出しとりあえず弱性の電磁弾を装填すると、草に手を伸ばした。――そして、思い切り立ち上がり、銃を構える。


「誰だ!」


「ふぇ!?」


 バッと退かした茂みの奥、そこには、小動物でも電獣でもなく、1人の少女がいた。それは薄紫色の長髪をツインテールではなくポニーテールにまとめている少女だ。


「涼子!?」


「あ、バレた!?」


 バレタじゃないよ、とため息をついて呆れる優に、涼子はただあたふたしている。うしろのほうで様子を伺っていた遥は、また目を点にして驚いている。

 どうやら涼子が足を木の根に引っ掛けていたようで、しばらく茂みが揺れていたのはその所為だ。それにしても、なぜこんな町外れに涼子がいるのか、優も遥もそればかりが引っ掛かる。

 今すぐにでも訊ねたいところだが、それよりまずはいまなお木の根に引っ掛かる涼子の足を外すのが先だろう。

 優は前に向けていた銃をホルダーに収めると、涼子に近づいていった。


「な、なに?」


「それ、外れないんだろ? オレも手伝うよ」


「い、いいわよ、このくらい自分でとれるわ」


 涼子は両手をバタバタさせて断ろうとするが、優はやめる気配を見せない。


「そんな強がらなくていいだろ? 困ったときはお互い様だ」


 そこまで言うと、涼子の腕は、動きを止めて、まるで小動物のように動きを止めた。

 どうやってはまったのかわからない木の根をつかんで、思いきり引っ張った。……が、なかなかガッチリと地面にくっついていて、離れる気配はない。

 結局、涼子の足をはずすのには5分ほどの時間を要してしまった。


「それで、なんでこんなところにいるんだ?」


 それから3人切り株に座って、涼子から話を聞こうとしていた。彼女は明らかに普段着でスカートをはいていることから、山を登りに来たということでもないだろう。いったい本当に何しに来たのか。


「ここは壁も近いし、1人で来るのは危険だろ?」


「そ、それは……」


 俯いてもじもじする涼子。……これではなにも伝わらない。


「それは?」


「う……」


 先ほどの「そ、それは」というのが言いづらくて困っていることを表すことくらいは、優にもわかっている。だが、このままでは埒が明かないので敢えて聞いた。

 すると、右サイドの遥から痛い視線が送られてきたが、優は気にしない。


「意地が悪いわね……。たまたま、たまたまよ? たまたまあんたたちの姿が見えたからついてきたのよ。それだけ」


「ほう。じゃなんで隠れてたんだ? ついてきてたんなら別に声かけてもよかったんじゃないのか?」


「う……」


 なんとも分かりやすい人間だ。優がなにか意表をつく発言をするたびに涼子はビクッとする。そして、「意地が悪い」と言いたげな視線を送ってくる。


「そ、それはその……出ていきづらくて……」


「……なんで?」


 涼子がまた優に例の視線を送る。


「だって、あんたたち楽しそうだったし、邪魔しても悪いかなって……」


「そんなの関係ないだろ? 別にデートしてたわけでもあるまいに、友達だろ?」


「へ、友達? あっいや別にそう訳じゃないわよ! ただ、なんとなく出づらかっただけよ」


 なんと分かりやすいのだろう。つくづくそう思わせる。

 不器用な涼子は、顔を赤く染めて俯いている。


「まぁ、なにはともあれ、何かしに来たわけでもないし、怪我なんかもしてないし、問題ないか」


「そうだね」


 右サイドで遥も同意の意を示す。向かい側に座っている涼子は少し落ち着いたようで、ほっと息を吐いていた。


「あっ」


 優はなにかを思い付いたように声をあげた。


「どうしたの優くん?」


「ああ、なあ涼子、お前たしかオレの正体知ってたよな?」


「ええ、知ってるけどそれが?」


「じゃあもうひとつ秘密にしてもらおう。ここのことは他言無用だ」


 優がここまで言うと、遥も先の優と同じに思い付いたように声をあげた。

 この優の指示に、涼子は1度首を傾げたが、快く了承してくれた。遥に圧力を感じたのだろうか。

 なんにせよ、おそらくこれで問題はほとんど解消しただろう。優からすれば、少々素直すぎて怖いところが問題なのだが。


「それじゃあ、今日はもうココですることもないからな。そろそろ帰るか」


 空も段々紅に染まりはじめ、黄昏時といっても十分に差し支えない。森の中も様々な動物が住処へと戻り、どこか騒がしくなりつつあった。


「そうだね。明日は学校あるし、そろそろ帰ろうか」


 遥はもともとここへは父の墓参りと優との話のために来ていたので、目的も果たされている。優もそれについてきただけなので問題はない。涼子はといえば、この2人にくっついてきただけなので全く問題はない。


「明後日は実力テストもあるからな。帰っても少し勉強するようだな」


「そういえばあんた達は実技もあったわよね」


「うん。実技が一番辛いかな」


「そう、だな」


 なんでもないというようにそっぽを向いていう優に、遥がじとっと視線を送る。


「あそっか、本職だからあんたは余裕ってわけね。なんかずるいわね」


「それはないだろ……」


 優からして正直言うと、遥のジト目よりも涼子の台詞のほうが刺さった。そうして困った顔をする優を、遥はけらけらと笑っていた。


――森の中に、一陣の風が吹く。切り株から立ち上がった涼子の髪が、撫でられたようになびいた。それに釣られて涼子が首をまわす。すると、木の上で何かが光るのが見えた。ふと視線を送ると、一瞬でそれは見えなくなる。しかしまた次の瞬間、それは涼子の目の前にまで接近していた。

 刹那、その《何か》が、強く発光した。


「――!?」


 涼子の肩が下向きに押された。

 しかし、それは彼女の目の前の光の所為ではなく、優によるものだった。

 涼子が圧力を感じるのと共に、優の放った弾丸が、何かを捉えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ