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学園の神鳴り殺し  作者: 片岡 雅
-侵略者の使い:入学編-
46/110

◇5-8◇

 テストの存在を知ってか、以前よりやはり少し落ち着きのない教室。エレキボードにはもうテスト告知のプリントは貼られていないが、教卓に1枚、教室の後ろ側に1枚、廊下に1枚と、無駄に多くしかも地味に目に付くところにそれが貼られているのには、いささか博の悪意を感じた。

 そんなことを考えていると、優の日常でてくる欠伸も段々と歪んだものになっていく。

 教壇に立つ博の目が、少し笑っているような気がした。


「さて、今日もまた普通教科の授業だ。――あ、ちなみにだがな、電磁科のヤツは来週の実力テストの成績でグループ分けされる。このグループ分けは1年に1回だから、それぞれ頑張るんだな」


 そんな彼の台詞もまた、どこか笑っているような気がした。

 1-Dクラスは、電磁科の生徒が約7割を占めている。幸一も先日電磁科に移ったとのことで、明らかに普通化の生徒は肩身を狭くしていた。ちなみにこのことはまだ優や遥以外の人間には知られていない。幸一も先生も話す気は無いようなので、無駄に口を出す必要はないだろう。

 さて、そんなこんなでいつの間にか、いつもどおりの日常を送っていた優。実際は、学校のどこかに影鴉(レイヴン)のスパイが紛れ込んでいる可能性があり、その上真実を知る人間がすでに2人もいる。それなのに、普通に過ごせているのは、彼が幸運なのかもしれない。

 いままでこのような状態が珍しかったわけではないのだが、それでもこのように普通に生活しているという事例は稀だ。コレに関しては、優が運命に恵まれたと言うしかなかろう。


「ねぇ優くん、今日ツカサちゃんいないよね。どうしたんだろう?」


「さぁな、あの先生も何もいってなかったし、休んだ理由ばかりは分からないよな」


 遥の問に優が答える。


「でもよ、最近なんか井上の様子が変だったじゃん? あれ、なんかあったのか?」


 自分の席を立ってやってきた幸一が口を挟んだ。


(まぁ、あったといえばあったんだが、でも、どうしたものやら)


「大丈夫かな……ツカサちゃん」


 俯いて心配する遥。それに続き、優は頬杖をつきながら、


「そうだなぁ」


相槌をうった。


「神田、お前なんか冷たいな」


「そうか? まぁ、いろいろあるんだよ」


「はぁ……」


 それからしばらく、チャイムが校内に鳴り響き、授業の開始を知らせる。先刻博の言っていたとおり、本日も1日普通科目のみの授業となる。

 遥は机にノートを1冊余計に用意して、自分のノートと同じように文字を書き連ねていっていた。おそらくはこの日学校を休んだツカサのためのノートだろうが、余分のノートを常に持っているあたり、用意周到なことだ。


「そういうわけで、この細胞は分裂を繰り返し、そしてやがて1つの固体として機能するわけです」


 今現在、1時間目の授業は生物学ということになっている。担当する教師は、以前優たちが電磁科施設でであった西岡修平だ。

 彼の授業は以外にも堅苦しいもので、随分と眠くなるものだった。時折眼鏡をあげるその姿には、度々驚かされる。その視線はあまりにも鋭いのだ。


(あの先生、なんか変な人だよな)


 コレが、優が彼に対して抱いた感想の1つである。


 時は川の流れのように早々と過ぎてゆき、とうとう放課後となる。金曜日は他の日と違い、授業数も1つ少ない。そのため、いつも以上に早く感じていたのだ。

 みなバラバラに教室から出て行く中、ある程度固まっているグループはそう多くない。まだ学校が始まって2週間と経っていないのだから無理もないのだろうが、明らかにテストが影響している。

 そんななかで、自然とグループをつくった――いや、できていた優たちは、幸運と言えよう。


「なぁ神田、今日もまたそっち行っていいか? 昨日は、結局のところ索敵しかしてなかったろう?」


「あぁ、そうだな。今日もやるか。同じ科の以上、あまり敵が強くなるのはよろしくないけど、それでも、下手な事やって怪我されるのも困る」


「あ、お前それ俺を馬鹿にしてるだろ!」


「さぁて、どうだかな」


「お前、結構嫌なやつだな……」


「生憎、そんなことは言われなれてるもので、なんともねぇ」


「くっ、この……」


 幸一から、言葉が出てこなくなった。

 そして、遥が抑えていた笑いが堪えられなくなったように笑い出した。


「な、なんだよ……」


「ううん。なんでもない」


 それからは、遥は普通に笑い出した。

 優にも幸一も、彼女がなぜ笑っているのかなどはわからないが、同様に笑いがこみ上げてきた。

 あまり他人と関わり過ぎることはよくないと言われていたが、彼らなら、彼女らなら、悪くない。そう、優には思えていた。

 ただ1つ気に掛かるものは、ツカサの事だった。

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