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学園の神鳴り殺し  作者: 片岡 雅
-侵略者の使い:入学編-
44/110

◇5-6◇

「はぁ……」


 昇りきった太陽を眺めながら、カフェテリアの窓際の席で、彼はため息を吐いた。それは疲れから来るものでもあり、呆れからのものでもあり、ただ形式的なものでもある。この先へつなぐためのいわゆる、フラグである。

 今朝、生徒会室で呼び出しを受けた後、1人とぼとぼと教室へと戻る優だったのだが、どうも校内がざわざわしている気がしていた。それも、1年生に限っての事であり、明らかに何かがあることを決定付けていたのだ。

 それが頭の中心に教室に戻ると、エレキボードにA3サイズのプリントが掲示されているのを見つけた。それを見ながら机に手をつき俯いている生徒もちらほら、いることはいる。よく見ると、幸一もその中の1人だった。

 とりあえず今は情報がないので幸一の許へと駆け寄る優、その顔には、若干哀れなものを見るようなものがあったことは、まぁいいだろう。


「なぁ佐藤、どうしたんだ? なんか1年生だけこんな感じなんだけど」


 クラスの中は明らかに落ち込みモードである。本当に一体何があったというのか。


「お前さっきいなかったからなぁ、ほら、あれ見てみろよ。エレキボードの紙」


「エレキボードの、紙?」


 優は少し首を傾げ、半信半疑でエレキボードまで歩いていった。よく見るとプリントの横に遥が見えるが、あまりよくないオーラを放っているのであえて声はかけない。

 プリントには、印刷ではなく手書きのコピーが書かれていて、書かれている内容は……『一週間後、1学年において一斉に実力テストをします。内容は筆記と、あと実技です。以上です。』……なんて、殴り書きの文字で読みづらいところこそあったが、明らかに博の文字だった。

 しかし……


「実力テストか……」


 正直言って、優にかかればテストなんて……テストなんて……、せ、専門教科くらいなら、完璧にこなせる。だがそれをしては、劣科生なのにそんなトップまで登りつめたら、完全に怪しまれる。つまり、今回のテストでがんばってはいけないのだろう。まぁもちろん、この先この学校に残る事も考えて、あるていどの成績を取る事は必須だが……一応今回は《実力テスト》なので、勉強はしない事にしておこう。

 だがこれで、1年生だけがざわざわしている理由が分かった。

 隣で俯き周りがまったく見えていない遥はさておき、まだまだ口の利ける幸一のところへ戻る。


「おい佐藤、理由は分かったけど、でもココまで沈むことはないんじゃないのか? 昨日まであんなに賑やかだったのに」


「まぁ、神田はあの身のこなしがあれば楽勝なんだろうけど、俺たちには実技のテストは地獄なんだよ。入試のときもかなり頑張ったんだぜ? それでもこのクラスだったけどな……」


 落ち込んでうな垂れる幸一。こんな彼の様子を見ていると、どれだけ実技テストが難関なものかが見えてくる。優は入試を受けずにこの学校に入学したから、それがどういったものか、詳細は分からないが。

――そしてそれから、いつもどおり時間が経ち、午前授業に入り、そしてそれが終わると昼食をとりにカフェテリアへと向かっていった。

 そして現在へ至る。


「――んで、呼んどいて遅れた挙句、なにしてるんだよ……」


 今、カフェテリアのテーブルに頬杖を着く優の前に、遥と幸一が膝を床に着いてせがんでいる。その内容は、テストの話だ。優が以前になかなかの身体能力を発揮した所為で、実技のほうを教えてくれといわれているのだ。そしてその代わりに、優は他の教科を教えてもらうという交換条件を与えられている。

 それを受けるべきか否か、悩むのも馬鹿らしい。

 第一、幸一にはいろいろと見せるのはよくない。それに優は今回テストでは大した点数を取るつもりではないし、あまり目立つのもよくない。


「悪いが、オレに教えられることなんて何もないし、あの時のは……まぐれだったんだよ、な?」


 優はそんな調子で、作り笑いで誤魔化そうとするが、だが、それで引き下がる幸一達ではない事も彼は知っていた。そんなわけがないと、なかなか引き下がらず、遥共々すがりついてきた。


「なぁ、頼むよ。見捨てないでくれよ~」


「いや、見捨てるとかそういうの以前に、アレはまぐれだっていってるだろ?」


「いや、アレは絶対まぐれなんかじゃない。あの運動能力、あの射撃力、あれは……絶対にまぐれなんかじゃない! だから頼む、同じお祭り委員だろ~」


「いや、お祭り委員とか関係ないから」


「同じお祭り野郎だろう~」


「お祭り馬鹿はお前だけだこのお祭り柔道馬鹿!」


 実際、幸一たちに実技を教えて、向こうからは普通科目を習うというのも、けして悪い話ではない。だが、幸一が本当のことを知らない以上、迂闊に協力することはできないのだ。……せめて、遥だけならよかったのに……とか思ってしまう優がいるのは仕方がないことだ。


「まったく……悪いが、オレは教えられない。じゃあな悪く思わないでくれよ」


 一言言い残して、飲みかけのココアを置いたまま優はその場を放れてしまった。

 そこに残された遥と幸一は、ただ呆然とするのみである。


「ダメだったな……」


「そうですね……」


「もう一回トライしてみる……?」


「そうですね。もう一回頼んでみましょうか……」


「うん」


 残されて膝で立つ2人を、明らかに周りの生徒は避けてカフェテリアを歩いていた。

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