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学園の神鳴り殺し  作者: 片岡 雅
-侵略者の使い:入学編-
43/110

◇5-5◇

 放課後、すでに日も山の奥へと消えようとするころ、優は遥と共に、太陽で紅く照らされる桜並木を歩いていた。新入生歓迎会の次の日からは平常授業ということで、今日は午後まで学校にいたのだ。まだまだ専門的な授業はないにしろ、容易に気を抜くことはできない。

 ……のだが、優には少し心に引っかかる事があった。

 今朝サトシから告げられた影鴉(レイヴン)の話は勿論の事だが、もう1つクラスの事でそれはあった。

 新入生歓迎会も終わり、組まれた班員ごとに仲も深まって、入学当初よりも格段に賑わう教室内だったが、その中でツカサがずっと1人だったのだ。別に彼女に友達がいないわけでも、彼女が人間嫌いというわけでもない。入学当初は、持ち前の明るさで1人でいるところを見るのは稀だった。

――それなのに今は、1人で席に座っている。これがどうしても、優が無関係とは思えなかったのだ。なにしろ、肝試しが終わった後では優自ら自分が被災者であると告白したし、彼女とはトラブル(?)もあったし……。


「なぁ遥、あれからツカサと話したりした?」


 そんなことから、いまだ咲き乱れる桜を目に、訊ねた。

 すると、遥は少し考え込むように俯くと、そっと首を左右に振った。


「うんうん。今日は一度も話してないよ。優くん、なにかあったの?」


「……いや、オレにもわからない」


 この答えでは半分嘘であるが、仕方がない。この話は若干神鳴り殺しの仕事の事も絡んできそうなのだから。いくら憧れを抱いていようとも、巻き込むことはできない。

 そんな優に少し首を傾げる遥だが、何も言わずにそっとしておいた。彼女も彼女なりに、ツカサの事やこれからのこと、何かを思っているのかもしれない。


(オレも、もう少し調べてみるか)


 優は黄昏の空を見上げて、そう思った。



 その翌朝、優はまたいち早く学校へと来ていた。理由は……言うまでもないかもしれないが、また呼び出しをくらったのだ。しかし今回はサトシにではなく、生徒会長にだった……。

 彼と会うとなると、何か大変なトラブルやらなにやらが起こりそうで、なかなか近づきたいものではないのだが、一応彼も生徒会長なので、断るわけにはいかない。いやまぁおそらくは生徒会なんてものはまったく関与していない話だろうが、いやおそらくは妹の話であろうが、断るといろいろと後が面倒なので行くことにしたのだ。


「はぁ、面倒くさい……」


 コレ以外本音としてなりえないのはどうなのだろうか……。

 呆れと疲れの混ざったため息を吐くと共に、優は生徒会室の両開きドアをノックした。この扉は木製で、ロックも旧式採用で手動だった。おそらくは学園の歴史と文化を尊重してのものだろうが、やはりこうしてみるといいものだな。


(なんか、落ち着くな……)


 優がこれからの人類には感じる事のできない感動を覚えていると、扉の向こうから彼に応える声がした。その無駄に真面目そうな声から、優を呼んだ張本人、生徒バ会長古川幸男だとわかる。……にしても、その声を聞いて無の感情どころか疲れを覚えさせるとは、恐ろしいものである。


「し、失礼します……」


 優の顔が引きつる。全身から生徒会長への拒絶反応が出ているのだ。全細胞が悲鳴を上げ、さっさとココから去れと告げている。

 しかし、部屋の扉をすべて開けた途端、そんなサイレンはすべて収まってしまった。

 扉を開けた先、優の視線の先には、生徒バ会長の妹君である古川涼子がいたのだ。


(な、なぜだ? ぁいや、普通なら兄妹だし一緒にいても可笑しくないが、でも涼子は兄をウザがっていたはずだ。わからない、なぜこの場に彼女が? まさか、一昨日の事がばれた?! あの超シスコン会長なら、何をしでかすか分かったもんじゃないぞ!?)


 頭の中で無さそうで有り得る事を連想し焦りに焦る優。その姿はとても滑稽と言える。

 しかし、不味そうな顔をする涼子を見て、焦る事すら馬鹿馬鹿しく思えてきた。


「えと、何の用でしょうか?」


 だがあえて知らんふりをする。すると……


「そうだねぇ、言いづらいんだけどぉ、あえて言うなれば……いったい、いつ2人はそこまで仲良くなったんだい!?」


 やっぱりかー。

 幸男の言葉を聞くなり、優は石のように呆れて固まってしまった。こころなしか幸男が嬉しそうに見えるのも気になる。一体彼はなにを考えているのか……。


「い、いや、なんでそんなことを? 涼子がなんか変なこと言ったんですか? 別にオレは何も言ってないし何もしてないし……」


 尚も優は知らんふりを続ける。実際、優から接触したわけではないし、別に彼女の事を優がどうこう思っているわけでもないので、こんなことをする意味も理由もまったくないわけだが、何かが彼をこうさせている。

 が、いくら言い逃れしようとしても、幸男はニヤニヤした顔を隠そうとはしない。


「いんやぁ、今、涼子って呼び捨てにしましたよね? 完全に仲良い感じですよね?」


 なんなんだこの執着は、と涼子共に引く優であったが、よくよく考えてみれば以前開会式のときも幸男は「君は妹にふさわしい」とかなんとか言っていた。別に彼が優に対して嫉妬やら何やらを抱く必要はないのだ。……だがやはり、彼は一応良子の兄だし? それ以前に涼子のことはどうとか思ってないし?


「いやいや、別にそういうんじゃないですよ? ただただ肝試しで同じ班だっただけですよ? 本当にそれだけですってば」


「え? でも、涼子はちょっと脹れてるよ?」


 確かに、確かに幸男の言うとおり涼子の頬は脹れている。いやいや何膨らませてんだよ。意味わかんないぞ?


「おいおい涼子、オレは別に……」


「ふん。神田優、不愉快だわ。それと馬鹿な兄貴も、なんでそんな変な話をするのよ? するにしてもどうして本人がいる前で話するの? おかしくない?」


 相変わらずの涼子の毒舌。しかしそれを言われても幸男にはショックを受けるとかそういった様子が見受けられなかった。

 やばいこいつシスコンの上変態だ。

 一体何回目の失望か分かったものではないが、とにかく失望した。こんな人物が生徒会長でこの学校はこの先大丈夫なのか……。


「なんか、いろいろ有りえない」


 残念すぎた。

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