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学園の神鳴り殺し  作者: 片岡 雅
-侵略者の使い:入学編-
42/110

◇5-4◇

 新入生歓迎会の翌日――4月13日水曜日の朝、優は通学途中遥の家へはよらず、いち早く学校へと来ていた。その理由は簡単で、本部からの呼び出しを受けたのだ。

 ここは特科棟4階廊下、今彼が目指しているのは402号室だ。お察しの方もいると思われるが、ここで再び吉田サトシが再登場するというわけだ。

 以前に1度来ているから道には迷わず、何の問題もなく扉の前にたどり着いた。相変わらずしっかりとしたセキュリティの部屋で、最新の電子ロックを設置した頑丈そうな鉄の扉で入口は塞がれている。これでは公務室という名前が怪しいとさえ思える、公務室とは本来、一体何をするところなのだろうかと。

 それはさておき、以前のように優が名乗ると、自動ロックは解除され、扉のドアノブが勝手に下りた。それを手で掴み、ゆっくりと押す。


「失礼しま――!!?」


 優は驚愕した。

 以前来たときには高感度立体映像で会話(一方的な)をしたが、今回はそうではないらしい。もちろん、本人がいるわけでもない。本人がいてココまで驚くのはその人物に対してかなり失礼であろう。

 優が驚いたのは、公務室が以前来たときとは、明らかにものが違っているからだったのだ。公務長の机の前には、言うなれば大型のカメラのようなものがあり、両サイドの壁際には、コレもまた大型のスピーカーのようなものが設置されていた。――ここまでなら、まだまだ許容範囲だ。

 しかし極め付けに、部屋の中心、大型カメラのようなもののの前に、緑色の淡い光が辺りから集まってきているのだ。それはまるで電獣にエスコード電磁波を流し込んだときのような光で、一瞬心を奪われた。

 そして、その淡い光は結果として、吉田サトシの体形を築きあげた。


『いやぁ、驚いたかい? これね、最近開発されたシステムなんだよ。従来までの高感度立体映像ではなく、多少のタイムラグはあるが、ほぼリアルタイムで会話もできる。すごいだろう?』


 高めの中年声が、公務室にひっそりと響いた。

 なぜかしら自慢げに語るサトシの映像に、優は呆れたため息を吐いた。


「まったく、先生はシステム開発なんてできないでしょ? そんな我が事のように言わないでください。――そんなことよりも、早く本題に移ってください。このあと学活なんですから」


『そ、そうだね。神田君も相変わらずだね……。いや、えと、本題なんだけどね、多分分かってるとは思うけど、影鴉(レイヴン)の事でね』


 これはまぁ、優もそれを予想していたうえで今この場にいるので、驚きはしない。

 しかしそれとともに、少し気にはなっていたのだ。まだまだベテランとは言えない神鳴り殺しである優には、事態の詳細を木目細かに知る権利はないため、肝試しのときに襲ってきた尾崎や、逃げた仲間のその後の対応や現状を知らされていないのだ。

 だから、これは優にとっていい会談になる可能性がある。


「そうですか。――あのあと、尾崎や逃げた仲間はどうなったんです?」


 時間もあまりないため、先に聞いておくことにする。さすがに今回ばかりは優も直接的に関与しているため、サトシも隠そうとはしないようだ。


『あのあと、尾崎のほうは死んでいたし、即刻火葬して弔ったんだけど、その仲間の、監視役だっけ? が、どうしても索敵の網に掛からなくてね、こちらとしてもあまり他の地方から人員を裂くわけにも行かないからお手上げなんだよ。そこで、君を呼んだんだ』


 なるほど、そういうことか。

 すこしばかり嫌そうな表情を浮かべる優だが、この学校、この地区で起きたことである以上、彼と無関係ではなくなってしまうので、やらざるを得ない、と諦める。


「それで、オレは何をすれば?」


『基本的に、コレまでどおりの日常を送ってくれてかまわない。というより、おそらく相手側は君のことを知っているだろうから、君があまり行動を見せてしまうと逆に怪しまれて見つかるものも見つからない。――それにだ、神田君、おそらく敵は君の学校の中にいるはずだよ? そこは意外と警備も堅いからね、簡単に何人もそう進入できはしないよ?』


「確かに。だとすると、少し気をつけたほうがいいかもしれませんね。こないだ、一人にはばれてしまいましたし」


『え!? もうばれたの!? ちょっと今回はいつにもまして早いね。生徒だからばれやすいって言うのはあるけど、さすがにそれは早いよ』


 サトシが両手を挙げていかにも驚いたという顔をしている。正直腹が立つ。


「大丈夫です。口には出さないように念を押しておいてありますから」


『本当にそれで大丈夫なの?』


「大丈夫です」


『そう……。まぁ君がそこまで言うなら何も言わないけどね。精々気をつけてね』


 サトシは最後にそう言うと、そのまま消えてしまった。立体映像のほうが。

 ちっ、本体消えればいいのに……とか思ってしまう。


「まったく、困った先生だ」


 優はそう言い残して、公務室を出た。

 そのままライターを手に取り時間を確かめると、現在時刻8時20分と表示された。学活開始の時刻まで、およそ後10分。おそらく教室にはすでに遥やツカサなどもいるので、今までどこにいたのかと聞かれそうで少し嫌なところもあるが、急がねばなるまい。なによりも遅刻は厳禁だ。


「さ、急ごう」


 足を動かしながら、手に持っていたライターをもとあったポケットの中へと仕舞い込む。

 するとその時、丁度3階へと階段を下ろうとしたときだった。誰かの声が、優の耳に入ったのだ。


「――はい。はい。わかりました。……では、その時に。――はい、その、彼は……」


 声の主は、すぐに分かった。屋上へと続く階段で1人座り誰かと通話している七日だった。何を話しているかなんていうのは興味もないし、そういう趣味もない。それに今は何より時間がないので、優はそのまま階段を静かに駆け下りた。

 その先に何があるとも知らずに。

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