◇5-2◇
「――ここまで来ればいいか。……んで、話ってなんだ?」
しばらく前まで熱々のココアと戯れていた優だったが、カフェテリアを出るのと同時に涼子に捕まり、話があるというので他のメンバーとは別れて移動していた。
現在地はカフェテリア周辺のやぶのなか。この学校はなにかとやぶやら茂みやらが多いようだ。いつも同じ景色を見ている気がする。
「えっと……」
涼子が俯きながら口を開く。
彼女はどこかそわそわしていて、いつかの七日のようにスカートの裾をいじっていた。
「どうしたんだ?」
話が進みそうにないから、優から逆に声をかけた。
すると……余計に顔を赤くして黙りこんでしまった。
これは普通に意味がわからない。
「なぁ、本当にどうしたんだ? 顔赤いぞ、熱でもあるのか?」
しばらく前にいろいろ勝手なこと言ったばかりで気まずいが、優には目の前の彼女を放っておくことはできない。
しかし、それでも反応は見せなかった。
残念ながら、さすがに他のメンバーをこれ以上待たせるわけにもいかない。
「わるいけど、言えないなら無理しなくてもいいから。さっきは勝手なこと言って悪かったな。あまり、関わりたくないんだろ? 早く、行こう」
言葉が終わると、優はスッと振り返り足を動かし始めた。
「――そんなことない!」
急に優の歩みが止まった。彼の降られた腕を涼子が掴んだからだ。
「あんたが謝んないでよ……。確かに私は神鳴り殺しなんて嫌いよ。――でも、あんたは嫌いじゃないわ。体はって庇ってくれたんだもの、私が謝る方よ。腕だってまだ痺れてるんでしょ? さっきイチゴパフェ食べてるときも、左手の動きが不自然だったわ……」
「気付いてたのか……」
「当たり前でしょ? 私は今年の一年生代表よ? 甘く見ないで」
涼子の視線が、すべてを見透かすかのように優を向いていた。その2つの目には、微かに涙が浮かんでいる。
「心配してくれたんだな。ありがとう」
「べ、別にそういう訳じゃないわよ。……ただ、私だけ一方的になんて気にくわないだけよ!」
優の言葉に対していつもどおり(?)の強気な涼子が、やっと優の目の前に現れた。これでひと安心だろう。
(って、なぜ腕を放さない?)
涼子の手は、いまだにがっしりと優の腕をつかんでいる。いや、それどころか、がっしりと抱きついてきた。
「お、おい古川さん」
「普通に名前で呼んで」
「りょ、涼子さん……」
「普通に涼子でいいのよ」
クスリと涼子は微笑む。
「あのこと、誰にも言わないでおくから……」
「あ、あぁ。ありがとう」
「……だから、この事は誰にも内緒ね」
「あ、あぁ」
俯いてしまって表情は伺えないがきっとまた涙を流しているのか、もしくはただ俯いてあるだけかだろう。
遥といい、涼子といい、優にとって、あまりいい予感はしなかった。特に、涼子にかんしては……。




