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学園の神鳴り殺し  作者: 片岡 雅
-侵略者の使い:入学編-
35/110

◇4-5◇

 まさかこの状況で遥と、しかもおまけに涼子までこちらに来てしまうとは。

 優の頭のなかは若干パニックが再来していた。


「なんでついてきたんだ! 遥ならともかく、涼子まで!」


 状況が状況のため、注意するだけだったはずの言葉も、叱りつけるような形になっていた。


「ごめんなさい……」


 それで謝るのはまだかわいいほうだ。


「なんだ私が劣科生なんかに叱られなきゃいけないのかしら? それに、あんただって自分で戻れとか言ってこっち来てんじゃない」


 こちらにはまったく困ったものだ。自分と相手との実力差で人の優劣を付けるのは、最近の力ある若者の悪いところだ。

 優もこういった思考は気に食わない。だが、いまはそんなこと言っている場合じゃない。


「くっ、とにかくこっちは危険なんだ。今から急いで遠くまで離れるんだ!」


「嫌よ。そこまで言うなら理由を説明しなさい」


 理由は、いまの状態であまり一般人に、特に優を知る人間にいうべきではない。正体がバレるリスクが僅かながら生じてしまう。

 だが、背に腹はかえられない。


「理由は……現在地付近に高圧的電磁エネルギーを確認したからだ。こんなのこの学校で出せるもんじゃない。危険だ」


「そろ、本当なの? 優くん」


「ああ、本当だ」


 遥は彼の言葉で納得してくれたようだ。さて問題は……。


「なんでそんなことがわかるのよ? 第一それが本当だとして、なんであんたは逃げないのよ?」


 痛いところを突いてくる。それはつまり、優の正体が答えになる質問だ。


「そ、それは……」


 言葉につまる。そんな優を怪しそうだと涼子が疑いの眼差しで覗いている。


「――それは私があとで説明します。だからいまは避難を!」


「わ、わかったわよ。仕方ないわね」


 遥の押しで引いてくれたようだ。あとでまた遥には感謝しなくてはならないな。

 変なことを喋らないといいのだが……そう思いもするが、きっともう口を滑らせたりしないだろう。彼女は優が姿を消すことは望まないからだ。


「ありがとう。それじゃあ、まだどこにいるかまではわからないから、気を付けてくれ」


「うん」


 これで、遥も涼子もこの場から――嫌な波が一番強かったところ、すなわち敵の居場所から遠退いた。

 これですこしへまをしても人の口から漏れる心配はないだろう。設置された監視カメラも、おそらく敵さんが来れば高圧的エネルギーのショックで勝手に止まってくれる。


――来るなら来い――


 優のほうはもうとっくに迎撃体制は万全だ。

 いや、そう思ったのもつかの間の出来事となる。


(! 反応が消えた!?)


 敵を待ち受けていたその時、事態は起きた。

 波という形で感じていた敵の反応がロストした。先程まで大きな反応があったはずなのに跡形もなく。


(――まさか、ダミー!?)


 それは戦闘時なんかに囮として使われたりする偽物。

 それを敵が使っているとするならば、敵にはなにかターゲットでもいるのか? それ以前に優の存在を知っていた?

 いくつもの思考が交錯するなか、それに比例して不安もまた募っていた。


(このブロック内でターゲットにするなんて、オレ以外に遥と涼子しかいないはずだ)


 これはすこし、不味い。

 しかしとりあえずは周囲の警戒、ということで、優は辺りを目を細めて見回す。その結果どうやら目に写る範囲ではなにもないことがわかる。

 スチロールの木とブルーシートの山しか見えない。


(よし、次だ)


 通信機に電源をいれ、遥に名指しで声をかける。


「遥、そっちになにか……来て……ない……か……?」


 優の声は少しずつトーンが落ち、結果遥に届かない声量になってしまっていた。


『優くん? どうしたの?』


 そんな優の異変に気がついた遥も、彼に声をかけた。

 この状況で通信機に他の人の音声が流れてこないのはおそらくはツカサのことでそれどころではないのかもしれない。しかしいまは、それがありがたい。


「遥……」


 優は通信機を放り投げて、その場を駆け出した。新たに現れる大きな波。通信中の気味の悪いノイズ。

 それはすべて、遥たちの向かった方向を示していた。

 誤算だった。いまはもうそれしか言いようがない。まさか敵がダミーまで所持しているとは思ってもみなかった。

 予想できなったわけでもない。なのに、学校の内側だからと楽観視していた。その所為で他人を巻き込んでしまうなんて……我ながら呆れる。

 優の口からは少しの苦笑がこぼれる。


「間に合えよ……」


 優の足が地面を蹴る。

 すると数十メートル走ったところで、暗闇のなかに2つの小さな光を見つけた。

 その光は怪しく青色にひかり、動くことなくその場にとどまっている。

 優にはその光の正体がわかっていた。それは――


「ELLか!」


 敵が着けているELLの光が、目に写っていたのだ。

 それから少しずつ遥たちの姿もシルエットとして浮かんできた。どうやらまだ無事なようで、攻防をしている様子もない。


(頼む、間に合え)


 心のなかで叫ぶ。


 振り上げられる腕。揺れる2つの光。――そして、不自然な空気の振動。

 優の体が、自然と前に出た。

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