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学園の神鳴り殺し  作者: 片岡 雅
-侵略者の使い:入学編-
24/110

◇3-1◇

 とうとう、新入生歓迎会の日が訪れた。今日はまた肝試し日和というかなんというか、朝から外が暗かった。

 お祭り委員会の関係上、新入生歓迎会でやることはある程度聞いていたが、それでも肝試しと先輩方の合唱と証書授与と、1つを除いてある程度よく聞く新入生歓迎会だった。生徒も皆少し浮かれ気味で、誰と肝試しはいるかだとか、どさまぎで誰とくっつこうかだとか、そんな高校生ライフエンジョイ状態になっていた。

 それなのに、そんな楽しげな空気なのに、お祭り委員会という名の鎖につながれていた優は、なんとも哀しい気分だった。


(ああ、あの時、役職決めのとき、もっとちゃんと考えとくんだった……)


 あの日、被ったところはジャンケンで決めていて、優はそのジャンケンに負けに負けてこのお祭り委員会に流れ着いたのだ。まったく、ついていないにもほどがある。

 とりあえず朝という事で遥を迎えに来ていた優だったが、そのことばかりが頭にあって、遥が来たのに気付かないでいた。


「優くん。優くん」


「え、あ、ああ。遥か、おはよう」


「おはよう。もうどうしたの? そんなに難しそうな顔して」


 難しそうな顔。そうか今そんな顔をしているのか。

 優は今日のことで頭が一杯でそれどころではなかった。第一、肝試しなんて一体どこでするのだろうか。大方学校の体育館とか特科棟のあまり教室とか、そういう広い空間の中だろうが、まったくなぜ新入生歓迎会で肝試しなのだろうか。季節はずれにもほどがある。


「なぁ遥。肝試しで暗いからトラブルが起き易いとか言ってたんだけどさ、一体どんなトラブルが起きると思う?」


「そうだね、やっぱり、暗いから小さないざこざが発展しちゃう、とかじゃない? あとは、転んで怪我するとか?」


 トラブルの話を笑顔で坦々と話す遥。話を聞いてくれるところはありがたいのだが、怪我とか言いながら笑われると、怖い。

 それにしても何故いつもこんなに笑っていられるんだ? ツカサとかと喋ってるときは別にそうでもないのに。まったく、女っていうのはよく分からない。


「喧嘩や怪我ね。そんなのをお祭り馬鹿に任せて大丈夫なのかまったく」


「それ、佐藤君のこと? 大丈夫だよ。佐藤君、中学校では柔道部だって聞いたよ?」


「へー。あの馬鹿が。意外だな」


「もう、馬鹿馬鹿言って、優くんが馬鹿になるよ?」


「お、おう……」


 小学生みたいな事を超がつくほど真顔で言われると、なんか困る。

 いつもの桜並木坂もそんな他愛もない話で下りきったが、いつからか、なぜか通学路に慣れていた。先週の金曜なんかはお互い距離を置いていたというのに、だ。おそらく金曜の放課後一緒に過ごしたのがよかったのだろうか、少し距離が縮んでいるようだった。

 遥はそのことに少しはしゃいでいる様子だが、優はそんなこと気付きもしないで、ただ疑問に思うだけだ。

 その調子で、いつもどおりの通学路を進んでいく。商店街と大通りを抜けて、学校へと真っ直ぐ歩いた。入学式のときの公園も越えたところで、遥がある1つの異変に気付いた。


「あれ、学校の屋上、誰かいない?」


「ん? 別に誰もいないけど?」


「可笑しいな、なんか白い人影があったんだけど……」


 はてと首をかしげながら歩く遥に、優が一度デコピンをかました。


「おまえ、ドンだけ目がいいんだよ。こっから屋上なんて見えないだろ普通」


「えー。そうだけどさ、確かにいたよ。可笑しいな……」


 結局その話はつかないまま、2人は神桜高の校門にたどり着き、そこから真っ直ぐ下駄箱へと向かった。

――そのころ。


「ちっ、あの娘、いま俺のこと見たな。なにものだ、あの娘。まさか俺のことが見えるなんて……」


 誰もいないはずの屋上で、白く黒い影が、真っ直ぐと彼女の見ていた。

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