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学園の神鳴り殺し  作者: 片岡 雅
-侵略者の使い:入学編-
23/110

◇2-10◇

 ビリビリと体中に電気が走っている。しかし今後のことを考えれば、このくらい耐え抜かなくてはならない。


「ほ、本当にいいのか? 遥……」


「うん。優くんならいいんだよ。はやく、我慢できなくなるから……」


「わかった。行くぞ、遥」


「う、イタッ……」


 指先が火傷したのではないかという高熱と激痛にさらされる。


「大丈夫か遥。やっぱりいきなり電磁弾に触れるのは不味かったかな? 少し耐性を身に付けたほうがよかったかもしれないな」


 現在地、無人の白黒部屋。そこの中央に置かれた黒い丸机の上で、遥の適性テストをしていた。

 というのも、少し前の話になるが、遥が優にとあることを申し出たのだ。


『優くん、お願いがあるの。私に、神鳴り殺しについて教えてほしい。私を神鳴り殺しにしてほしい』


 と。

 遥は幼い頃からの憧れで、今年で来た国立神桜高校の試験的な電磁科、1-Dクラスに入学した。そしてそれとともに、入学式の日、現・土見ヶ丘地区担当神鳴り殺しの神田優と運命の出会いを果たし隣同士の席になった。――そして、決意をしたのだ。

 遥は小さい頃から書いてきた神鳴り殺しから電獣までの近代の電磁関係についてのノートを持っている。入学式の日にも確認していたあのノートだ。

 遥がそのノートを書いていた理由もすべては《憧れ》にあるのだ。


『遥は、なんでそんなに神鳴り殺しにこだわるんだ?』


 とも聞かれた。しかし答えは簡単で、彼女にとってそれは英雄というべきものであるからで、優には更に詳しいことは教えていない。自分の夢を語るのは、いささか恥ずかしいものがあり、その所為だ。


「うーん。やっぱりまずは耐性だよな。あでも、これはちょっと生まれつきの体質に依存するものがあるから、遥には遥の……なにか、媒体でもあればなぁ」


 そんなわけで、優は遥のそんな憧れと決意を形にするために協力する事にしてくれていたのだ。

 ちなみに彼の言っていた媒体とは、今優の使用しているグローブのように、一定まで電磁的エネルギーからの人体へのダメージを抑える効果のあるアイテムの事だ。それがあれば、電磁流兵器もある程度なら訓練無しでも使えることには使えるのだ。まぁ、その媒体がなかなか個人にマッチしないというのが難しいところなのだが……。

 遥の場合は体の電磁耐性が弱い体質で、電磁弾などの電磁流兵器を受け付けない。しかしそれでは神鳴り殺しは務まらないので、耐性をつけようかと言っていたのだ。だがコレを身に付けるには、多少身体への負担がある。だからあんな事を言っていたのだ。


「媒体かぁ。私がいつも持ってて、かつ電磁耐性のあるもの。そんなのあるかなぁ~」


 ゆらゆらと揺れながら難しい顔で考えている遥。少し子供のような感じもあるが、本当に大事な事には真剣になる。そんな様子が見れて、優は少し嬉しかった。


「――て、ちょっと待てよ。おまえ、その耳の花飾り、てか花。それ、もしかして……」


 自慢げに飾っていた遥の赤い花を指差した。


「ん、花? ああ、これ? コレはね、一昨日の星座占いで私のラッキーアイテムだった――」


「いやそんな話じゃなくて、おまえそれ、《レスビアンカの花》だよな? なんでそんなものを――って、え、昨日?」


「うん」


 ぽけっとした顔で遥がうなずく。

 いや、そうか、そうだったのか。


「だからあの時、あの電獣いきなり方向転換したんだ……」


 物凄い青ざめた顔で遥を見る優。そんな彼の視線に、遥ははてと首をかしげた。


「お前のその花、電磁的エネルギーを引き寄せるんだ。だから一昨日はお前のいたあの坂に向かってオレは戦ってたんだよ。つまりだ、その花がなかったら、オレはお前に会うこともなく、誰にも正体が知られないまま平和な学校生活が送れたんだ。それがなかったら、オレが……多額の借金をしなくて済んだんだ……」


 へ?


「多額の借金?」


「そうだよ。あの日、いきなり電獣が動き出した所為で、電磁弾1ダースと特殊素材のグローブ、もってかれたんだ。あれがな、弾は大した額じゃないんだけど、グローブは、片方だけで50万するんだよ……。おかげで今は借金生活なんだ実は」


 へ?


「一応経費としてある程度はおりるんだけど、それでもやっぱ微妙でさ。借金返せなくて困ってるんだよ」


 へ?

 それはつまり、私の所為?

 遥の頭の中はあのときの喜びと今の罪悪感で満たされた。


「ご、ごめん。まさかそんな花だとは思ってなくて。ほ、本当にごめんなさい!」


 何度も何度も綺麗な角度で頭を下げる遥。お前はキツツキかとつっこみたいところだがそんなテンションでもないので別に何も言わないでおく。


「はぁ、いいさ、過ぎたことは仕方ない。とにかく、媒体が見つかってよかったよ」


「え、なに?」


 なぜこの話の流れで気付かない。気付け馬鹿。優は少し苛立ちを覚える。


「その花だよ花。レスビアンカの花」


 そういってまたも花飾り指差す優。

 しかしどういうことだろうか。遥にはさっぱり分からなかった。


「つまりだ、その花を介して、遥が電磁流兵器を扱う。そういうこと。俺の知り合いに、同じような媒体使ってるヤツがいるから、今度聞いとくよ。とりあえずまぁ、遥の媒体も決まったし、コレで一件落着かな?」


「うん、ありがとう。でも、まだ話は終わってないよ? 優くんにはもっといろいろ教えてもらいたいもん」


「おまえ、欲張りだなぁ……」


「だって、もっと優くんとお話したいもん……」


 顔を赤くして遥が言う。思わず優の赤くなってしまいそうだ。


「お前そういうことさらっと言うよな」


 そう言うところが、少し怖い。しかしまぁ、元気になってくれよかった。と、ひそかに思う優であった。

 時刻もまだ4時過ぎ。これから夜の就寝までずっと話しているのかと思うと、いささかに辛い。しかしそれも友達付き合いだと思って、乗り越える事にしよう。


――明々後日はいよいよ新観だ!――

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