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学園の神鳴り殺し  作者: 片岡 雅
-侵略者の使い:入学編-
21/110

◇2-8◇

 雲ひとつない昼下がり、春風の吹く帰路を歩いていた。桜の花びらは相変わらず足元に散らばっていて、視界をまっピンクに染め上げている。

 優は遥と幸一とともに学校を出て帰宅していたのだが、残念ながら幸一の家は学校と桜並木坂の中間地点にある商店街の周辺らしくて、つい先ほどの交差点で別れてしまっていた。つまり今は、優と遥の2人のみというわけだ。


(なんというかまぁ、気まずくなるわけで)


 いくらお友達と認識していても、今でも自分のことが好きだという人間と何もないかのように接するのは、何かと気まずくなる。そもそも優にとってはこんな事自体はじめてなので尚更気まずいのだ。

 その上実は、今日は遥の家族が不在らしく、昼食と夕食もないというのだ。コレは要するに、彼女の母親によって仕組まれた罠。よくもまぁ1日でコレだけのトラップを仕掛けられるものだ。

 本気で感心する。


「……遥さぁ、今日飯どうするの?」


 取り合えずという形で声を掛ける。もちろん「とりあえず」なんて言葉は言わないが。


「えっと、まだ、なにも考えてないの……(優くん家にお邪魔したいとか絶対言えないよ!!)」


「そ、そっか(やべー自分で訊いておいてこの後つなぐ言葉おもいつかねえ!!)」


 お互いに相手に言いたい事がはっきりと言えず困惑していた。それでも足は動いているので着々と目的地に向かっていってしまうのが、また問題である。到着までにこの話をつけないと、遥にいたっては、食べるものがないのだから。

 しかし、会話が止まって間が空いてしまっている所為で、余計に声が掛けづらい。

 そしてとうとう、商店街も抜け、通りも越え、いつもの桜並木坂の目の前までたどり着いてしまった。


(そうだ、今日のお詫びという事で遥を招待すればいい。そうだ、そうすればいいんだ)


 優の頭のなかには一応グッドなアイデアが浮かんだ。あとはこのことを遥に伝えるだけ。――なのだが、大事な第一声が見つからない。

 一歩、また一歩と遥の家へと近づいていく。今言わなくては、言わなくてはいけない!

 すると、優の前で、ふと遥が足を止めた。


「は、遥?」


 今度は振り返った。そして、一度優の目を見る。


「あ、あのさ、今日、優くんの家にお邪魔させてもらってもいいかな? そのお昼だけでも……」


 顔を赤くしておろおろする遥。しかしそんな姿に、優は少し心を打たれていた。


(言いづらかったろうに、オレが何も言わないから……。オレ、やっぱダメだな……)


 優も心を決めて、下向きなっていた顔を真っ直ぐ前へと向けて、言った。


「遥。……ふっ、ダメなわけないだろ? 昼だけじゃなく、夜までいろよ。どうせなら泊まってってもいいぞ? どうせ家人いないしさ?」


「え、本当?」


「ああ、本当だ」


 彼の笑顔をはじめて見た気がした。いや、今までも幾度か微笑むことはあったが、なぜか、「はじめて」と、そう思えた。頭の上に乗せられた手が、遥には少しこそばゆい思いだった。

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