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学園の神鳴り殺し  作者: 片岡 雅
-侵略者の使い:入学編-
20/110

◇2-7◇

 幸一は唖然とした表情でただ優を見るばかりだ。その視線におかしなものはなく、ただ純粋に呆気にとられているのだ。


「おいおい、なんだよあの動きは……?」


「いや、悪い。つい本気になっちまった」


 本当についつい本気になってしまった優は焦る素振りを見せながらも、なるべく落ち着き笑って見せる。なにせ勘のいい人間には、一度勘付かれたこともあるからだ。

 しかしそんなようすは完全無視で、コートの外側――ガラスの向こうからツカサが走ってきた。その顔にはやや疑いの眼差しもある。


「ちょっとあんた、本当にいったい何者なの? 学校の内装を覚えてたり、ずっと息止めてたり、ついにはさっきの動き。あんた本当に劣科生なの? あんなの、優科正でも1年生にできる動きじゃないわよ」


 いつもは遥との関係について馬鹿みたいに突っかかってくるツカサだったが、まさかここまで勘が利くとは……。まったくどうしたものか。


「いやさ、オレ、昔からサバイバルゲームが大好きでさ、小さい頃から友達と遊んでたからさ、体が覚えているんだよ」


 ハハハと笑って誤魔化そうとするが、もちろん嘘だ。

 幼少期のことは覚えていないし、そもそもサバイバルゲームは好きじゃない。優は昔からあまりゲームそのものをしないのだ。


「それ本当? すんごく怪しいんだけど?」


 うまくいくかと思ったが、なかなかに勘が鋭い。優の嘘に疑いの眼差しを向け、そしてそのさきの真実へと視線を動かしつつあった。

 するとその時、


「――ツカサちゃん、あんまり優くんを責めないであげて。優くんにも事情があるのよ」


 強引に話を聞き出そうとするツカサの前に、遥が立ちはだかった。


「遥……。あんたが言うんじゃ仕方ないわね、ここは引いてあげるわ。神田くん、いつか必ず探り当てるから、覚悟してなさい!」


 ビシッと言って決めると、ツカサはそそくさとコートからでて、施設を出ていってしまった。

 追いかけたいのは山々なのだが、こればかりはどうにもならない。


「いいのか?」


「今は、仕方ない」


 幸一も気にして声をかけてくるが、考えを変えるわけにはいかない。


「悪いな、遥……」


「ううん。仕方なかったことだから……」


 遥に無理をさせてしまった。こればかりは謝らなくてはいけない。


(今度何かしてやらないとな……)


 そう心に決める優。

 しかし困った。まさかツカサに目をつけられるとは。同じクラスにいるぶん動きも制限されるのに、そのうえ詮索されるのは勘弁だ。あまり探られるのは好きじゃない。

 かといってこれ以上真相を知る人間を増やすのも考えものだ。何せまだ出会ったばかりで、相手がどのような人間かもわからない。彼女らには悪いが、そう簡単に信用するわけにはいかないのだ。


「困ったなぁ……」


 正体を隠して学校に通うのは、かなりの困難だったのだった。

 このまま3年間続けられるかわからない。いつかばれてしまったその時、何事もなければいいのだが。

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