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第五十二話 御遣い、捕らわる

【一刀】

「……ここか。」


 貂蝉の案内で、一刀は泰山の麓まで来ていた。何も言わずに許昌を出てきたので、誰かが一刀の不在に気づけば大騒ぎになるだろう。


【貂蝉】

「えぇ。この山の頂上に、ヤツらの神殿があるわ。」


【一刀】

「そうか。ありがとな、貂蝉。」


【貂蝉】

「いいのよん。これが、私の最後の役目だし…」


【一刀】

「…最後?」


 踏み出そうとしていた一刀は、貂蝉の意味深な発言に思わず振り返った。すると…


【一刀】

「なっ!?貂蝉!お前…」


 貂蝉の体が、足もとから徐々に消え始めていた。


【貂蝉】

「この外史は、イレギュラーな存在の介入によって、大きく歪められてしまったわ。そのせいで、本来なら居たはずの存在が消えてしまっている…そして、私も…」


【一刀】

「イレギュラー…俺や、蒼馬さんの事か?」


【貂蝉】

「ご主人様は別よ。この外史は、もともとご主人様がきっかけで生まれた外史…あの死神と呼ばれた男も、イレギュラーではあったけど…原因となったヤツは他にいるわ。気を付けて、ご主人様…そして、この外史を、世界を、愛する人々を守って頂戴。その為の…」


 貂蝉の言葉は、それ以上は続かなかった。今や彼女の姿は完全に消えてしまったのだから。


【一刀】

「……その為の、この力だったんだな。」


 一刀はやっと、この世界に来てから、自身に宿った力の意味を理解した。

 蒼馬も言っていた…この世界そのものが、力を与えているようだ…と。まさにその通りだったのだ。崩壊していくこの世界が、彼に助けを求めていたのだ。


【一刀】

「言われなくても、やってやるさ。これ以上、俺の仲間を…大切な人たちを、傷つけさせやしない。」


 決意を胸に、一刀は泰山を駆け登り始めた。




【于吉】

「来ましたね…では、歓迎の準備をしましょうか。」


【左慈】

「必要ない。俺が出る。」


【于吉】

「おや、左慈。呉の扇動は済んだのですか?」


 泰山の頂上に建てられた神殿の中で待ち構える于吉、その背後に突如現れた左慈…見ると、少し服の袖辺りが斬られている。


【左慈】

「失敗だ!何処が完璧な作戦だ…孫策のヤツに全て見抜かれていたぞ!」




【雪蓮】

「ありがとう、元放道士♪褒美の品は今、兵たちが持ってくるわ。」


 冥琳にとり憑いていた病魔を桃香に移し、後はそれをネタに孫呉に揺さぶりをかける手筈だった。


【左慈】

「いえ、お気持ちだけで結構。病に苦しむ方を救うのが、私の務めですから。」


 決して見返りを求める事なく、人々を助ける高尚なる慈善家…第二の御遣いとして、民の信望も集める。これも作戦の内だった。


【雪蓮】

「…そう言って、一切の見返り、金品も受け取らない。噂どおりね。でも…それで、どうやって日々の糧を得ているのかしら?」


【左慈】

「それは…」


【雪蓮】

「そもそも、街を出歩く姿を見た者もいないそうじゃない?食事はどうしてるのかしら?」


【左慈】

「……」


【雪蓮】

「…貴方、何者?何が狙い?」


 江東の麒麟児、小覇王と謳われる雪蓮には、あっさり見破られてしまった。




【于吉】

「なるほど…それで慌てて逃げ帰ったと。」


【左慈】

「うるさい!元はと言えばお前が立てた作戦だろうが!」


【于吉】

「失礼しました。まさか本当に、民から何も受け取らずにいたとは思いませんでしたので…」


 人間らしい生活感の欠片も感じさせないのでは、雪蓮に見抜かれて当然である。


【于吉】

『相変わらず、融通のきかない…ま、そこがいいトコロなんですが。』


【左慈】

『…なんだ!?寒気が…』


 一刀の迎撃に出ようとしていた左慈は、不意に襲った寒気に身震いした。寒気というか、背筋をゾワゾワとする感覚が走ったというか、舐め上げられたような感触だったが。


【于吉】

「まぁ、焦る事は無いでしょう。まずは小手調べといきましょう。」


【左慈】

「…チッ!好きにしろ。ただし、トドメは俺が刺す!」


【于吉】

「分かっていますよ。」


 于吉は、第一の罠を発動した。




【一刀】

「…ん?」


 快調なペースで山を登っていた一刀…だが、不意に足元に響くものを感じ立ち止まった。


【一刀】

「…地面が揺れている?いや、これは…」


 上を見上げると、幾つもの大岩が一刀めがけ落ちてきていた。それが、山肌を跳ねる度に、地面が振動していたのだ。


【一刀】

「チッ!簡単には登らせてくれねぇか…」


 そう言って、一刀は星降りの御魂で大岩の一つを一瞬で細切れにした。が、その上からも、次々と岩が降り注ぐ…


【一刀】

「くっ…」


 あまりの数に、一刀はあっという間に下敷きにされてしまうのだった。




 時を一日遡り…左慈の正体を見破った雪蓮は、逃げた彼を追い込むべく兵を上げて出陣した。そこまでする意味があるのかと問われれば、たぶん彼女はいつものとおりに答えるのだろう。

 と、その途中で、冥琳の危篤を聞いて、見舞いの為に呉に向かっていた蓮華と思春に合流した。その後、左慈を見失ってしまった上に、冥琳も回復して心配ないという事もあり、姉妹は揃って一刀不在の荊州の城へ向かった。

 城に着いたのは夜になっての事だったが、すでに城には先客がいた。張魯によって回復した桃香が率いてきた蜀軍だ。

 そこで、一同は桃香から一刀の敵である于吉と左慈の事を知った。

【雪蓮】

「なるほどね…あの元放道士も、一刀の敵だったわけね。追って来て正解だったわ。」


【蓮華】

「一刀は大丈夫かしら?許昌からの報せを受けて、飛び出して行ってしまったけど…」


【愛紗】

「すぐにでも、許昌に報せを送った方がいいのでは?」


 しかし、そんな話をしてる矢先に…霞が血相を変えて帰って来た。


【霞】

「アカン!一刀が、いなくなってもうた!」


【雛里】

「まさか!?すでに敵の手に…」


【星】

「いや、主の力量を考えれば、そう簡単に敵方の手にかかるとは考えにくい。」


【蓮華】

「もしかして、一刀も敵の存在を知ったんじゃ…そして、周りに被害が及ばないように、自ら姿を消して、一人で敵のもとへ…」


【愛紗】

「考えたくはないが…あの方の性格を考えれば、その可能性は高いな…」


【桃香】

「……泰山…敵の本拠地は、泰山の神殿みたいだよ!」


【雪蓮】

「なら、急いで兵を纏めて、泰山に向かいましょう。」


【霞】

「なら、もう一っ走りして、孟ちゃんにも協力仰いでくるわ。」


【星】

「私は成都に戻り、残りの兵力を纏めて来ましょう。」


【桃香】

「お願いね、星ちゃん。」


 こうして、全軍が総力を挙げた大軍団が、泰山に向けて出兵する事となった。それが、一刀が泰山に到着するのと、ほぼ時を同じくしての事である。




【一刀】

「……ふぅー…危なかった。」


 降り注ぐ岩の下敷きになったかに見えた一刀だったが、岩の間からひょっこり顔を出してきた。そして、そのまま這い出してきて上を見上げた。


【一刀】

「落石は終わりか。次は何を仕掛けてくるつもりだ?」


 再び、頂への道を進み始めた一刀…大岩の上をぴょんぴょんと飛び越えながら、軽やかな足取りで登って来る。その様子からは、アトラクションを楽しんでいるかのような余裕さえ感じられる。

 そんな一刀の様子に、于吉は…


【于吉】

「…この程度の罠では手ぬるいですか。ならば次は…」


 第二の罠を発動した。

 一刀の行く手に、大きな竜巻が出現した。


【一刀】

「おっ!今度は竜巻かよ…ゲームやマンガだと、近くに術者が居そうなもんなんだけどな…」


 生憎、術者は近くではなく頂上だ。つまり、この竜巻そのものをどうにかしないと、一刀は先に進めないという事だ。


【一刀】

「……蒼馬さんとの戦いが無かったら、途方に暮れてたな。はぁぁぁっ!」


 一刀は風の流れに逆になるように、右上から斜めに袈裟斬りの要領で星降りの御魂を一閃させた。すると、竜巻を作っていた風は一刀の気に絡め取られ逆転し、残りの風を相殺する事によって竜巻は霧散した。


【一刀】

「よし。道が開いた。」


 …もはや、この程度では彼の足を止める事は出来なかった。


【于吉】

「…チッ!まさか、ここまで強くなっているとは…あの男のせいですかね。」


 予想以上に強くなっている一刀に、于吉は初めて忌々しげな表情を見せた。


【左慈】

「だから俺が行くと言っているだろう!ヤツはこの俺が…」


【于吉】

「まぁ、落ち着いて下さい。そう焦る事も無いでしょう?とりあえず、この後も間断なく罠を仕掛けます。彼の体力を削れるだけ削っておくんです。」


【左慈】

「フン!削り過ぎて、ここまで辿り着けなくなるんじゃないか?」


【于吉】

「その時は、そこでトドメを刺せばいいのです。」


 于吉は、一刀の足止めが不可能だと悟ると、その後は一刀の体力を消耗させる事に専念した。落木落石、竜巻つむじ風…一つ一つの罠は大した事ない。今の一刀にとっては、せいぜいスリルのあるアスレチックだろう。


【一刀】

「はぁ…はぁ……」


 さすがの一刀も、延々と続く罠を潜りながらの登山に、疲労の色を隠せなくなってきていた。


【一刀】

「ったく…しつこいな…はぁ……いい加減に…」


 と、思っていたら、また落石である。


【一刀】

「クソっ!」


 高速で移動し、落石の合間を縫って進む一刀。しかし、その動きには登り始めた頃のようなキレがなく、方向転換の時にどうしてもよろめいてしまう。


【一刀】

「ぐっ!危ねっ!うぉっ!」


 躱し切れず、星降りの御魂で斬り刻むが…今度はその破片が、一刀の目の上に当たった。傷は浅かったが、血がドクドクと流れてきた。


【一刀】

「ヤベッ!」


 片目の塞がった一刀は、トップスピードでその場から離脱した。


【一刀】

『こんな状態じゃ、あの落石を躱してられない…』


 ようやっと、一刀は落石トラップ地帯から離脱する事が出来た。しかし、その頃には一刀の息はかなり上がっていた。


【一刀】

「はぁっ…はぁっ…はぁっ……くっ、そ……傷は…ふさが、ったが…」


【左慈】

「もはや、一歩も動けまい?」


【一刀】

「!?」


 突然、一刀の前に現れた左慈…明確な敵意と殺気に、反射的に身構えようとする一刀だったが、疲労困憊した一刀が構えるのを待ってくれるはずもなかった。


【左慈】

「はっ!」


 ドゴッ


【一刀】

「ぐっ!」


 鳩尾に、左慈の拳がめり込む…呼吸が止まり、酸欠状態によって一刀の意識は、否応なく手放された。


【左慈】

「フン…死ね!」


 力なく崩れ落ちようとする一刀の首めがけ、手刀を振り下ろす左慈…だがそれを、何故か于吉が止めた。


【左慈】

「何のつもりだ?」


【于吉】

「いえね、大変に面白い案を思い付きまして。」


【左慈】

「?」


 于吉の冷徹な笑みの意味が分からず、首を傾げる左慈…ひと先ず、二人は一刀を縛り、神殿へと連れて行くのだった。




 翌日、泰山を望む平原には、かつての三国統一の戦以上の兵士たちが集まっていた。


【桂花】

「華琳様。」


【華琳】

「桃香や雪蓮の所も含め、兵はどのくらい集まったのかしら?」


【桂花】

「我が方の兵が二十万、雪蓮が率いる呉軍十七万、鈴々率いる蜀軍が十万…さらには、五胡勢力からの援軍が八万です。」


【華琳】

「かつて、これほどの大軍団が組織された事があったかしら?一刀本人は否定するけど、これだけの兵を呼ぶ彼の人徳…もはや、凡人の域ではないでしょうに。」


【稟】

「では華琳様、号令を。」


【華琳】

「…聞けぇっ!勇敢なる天命の戦士たちよ!」


 大軍を前にした華琳は、静かに息を吸い…凛とした声で号令を発した。

 王位を一刀に託しても、覇王の威厳は未だ衰えてなどいなかった。


【華琳】

「我らが王である天の御遣いは、彼の死神を討ち果たした、この国に住む全ての民の恩人である。そんな彼の前に、今また強大な敵が現れたという。見も知らぬこの国の為、我らの為に、命をかけて戦ってくれた…その恩に、今こそ報いる時ぞ!」


【兵士たち】

「「「「「オオォォォッ!」」」」」


【華琳】

「恩義に報いぬは恥と知れ!全軍、進めぇっ!」


 一刀への恩を返す為、華琳のその言葉に全軍が雄叫びを上げた。それほどに、一刀の存在は彼らにとって大きいものだった。

 蜀の者たちにとっては当然ながら、呉の兵士たちにとっては赤壁での恩が、魏にとっては死神の恐怖と支配から救ってくれた恩がある。五胡にとっては、愛する五胡の王を生き返らせてくれた、神のような存在である。

 そんな一刀の為になら、彼らは命すら惜しくなかった。


【稟】

「では、我々も参りましょう…華琳様?」


【華琳】

「何でもないわ…」


 号令を終えた華琳の目に、光るものを見た気がした稟…それは、近くにいた風も桂花も同じようだ。だが、二人にはその意味が分かっているらしく、見て見ぬフリをしていた。




【于吉】

「来ましたね。」


【左慈】

「予想より早かったな。」


【于吉】

「ま、準備は整っていますがね。増。」


 于吉が術を発動すると、泰山の麓に傀儡たちがわらわらと湧いて来た。


【雪蓮】

「こいつら、何処から?」


【鈴々】

「関係ないのだ!焔耶の話では、ちゃんと…うりゃあああっ!」


 鈴々は思いきり丈八蛇矛を振り、一気に五人の傀儡どもを吹き飛ばした。


【鈴々】

「こうしてブッ飛ばせるから、心配要らないのだ。」


【春蘭】

「ならば一気にカタをつけるぞ。はぁぁぁっ!」


 そう言って、春蘭が七星餓狼を勢いよく叩きつけた。その瞬間、まるで爆撃のような衝撃が辺りに走り、傀儡たちはほとんどが吹っ飛んでしまった。


【春蘭】

「フン、他愛ない。もっと歯応えのあるヤツはおらんのか!」


 しかし、そんな春蘭の余裕を笑い飛ばすように、次々と新しい傀儡たちが湧いてきた。


【星】

「これは…」


【于吉】

「くっくっくっ!まだまだ、こんなものじゃありませんよ。その程度の傀儡、無限に生み出せるんですからね。」


【左慈】

「連れてきたぞ。」


 傀儡を操る于吉のもとに、左慈が一刀を連れてきた。一刀は手を後ろで縛られた上、腕と胴体まできつく縛られていて、身動きが取れない状態だった。


【一刀】

「くそっ!こんな縄…」


 気を溜めて、縄をブチ切ろうと力を込めるのだが、縄はビクともしなかった。


【左慈】

「大人しくしていろ!」


 そんな一刀を、左慈は突き飛ばした上、背中をぐりぐりと踏みつける。


【一刀】

「ぐっ…俺を殺したいんだろ?さっさとやったらどうだ?」


【于吉】

「勿論、殺しますよ。ですが、その前に…向こうに行っても寂しくないよう、彼女たちを先に、送り込んで差し上げようかと…」


【一刀】

「なっ!?みんなっ!?」


 于吉は大きな水晶玉に、麓で戦う兵士や将たちの姿を映し出した。


【一刀】

「やめろっ!皆は関係ないだろっ!殺すなら俺を…」


【左慈】

「黙れっ!」


【一刀】

「ぐっ…」


 左慈は一刀を踏む足に、一層力を込めた。


【左慈】

「貴様には死ぬ前に、可能な限りの絶望を与えてやる。仲間たちが殺されるサマを見ているがいい。」


【一刀】

「くそ…皆、逃げろ…逃げてくれ…」


 しかし、一刀の思いは届かず、連合軍は無尽蔵に増殖し続ける傀儡を相手に一歩も退こうとしなかった。

 戦場は、一刀を罵倒する傀儡たちの声と、一刀を讃える連合軍の声が入り混じり、徐々に狂気が募っていった。


【風】

「兵たちの疲労が心配ですね…一度、下がらせますか~。」


【朱里】

「そうですね。こちらの勢いも、いつまでも続くわけではありませんし…体勢を立て直しましょう。」


 軍師たちがそう考えたのも束の間…後方部隊から伝令が届いた。


【冥琳】

「何!?後方から敵だと?」


【于吉】

「退かせませんよ。こちらは、まだまだいけるんですから。」


 軍の後方にも湧いてきた傀儡たち…連合軍は、挟み打ちされる形になってしまった。


【華琳】

「くっ!斥候の報告では敵はいなかったはず…」


 兵たちの士気が、見る間に下がっていくのが分かった。ただでさえ疲労していたところに、後方からの急襲を受けては仕方ないだろう。


【一刀】

「みんなぁっ!」


【于吉】

「さぁ、傀儡たちよ!遊びは終わりです!片っ端から殺し尽くしなさい!」


 于吉の指示によって、傀儡たちはパワーアップしたようだった。


【連合軍兵士A】

「何だ!?こいつら、急に…」


【連合軍兵士B】

「うわぁぁぁっ!」


 連合軍の兵士たちが次々に倒れていく…剣を折られ、鎧ごと斬り裂かれる兵士たち。


【一刀】

「止めろ…止めてくれ……」


 倒されていくのは、兵士たちだけじゃない…今や、傀儡の力は一端の将クラスだ。数に押されては、歴戦の猛者である彼女たちも厳しかった。


【蒲公英】

「はぁ…こんな、ところで…」


【翠】

「らぁっ!…っ!蒲公英、危ない!ぐっ!」


【蒲公英】

「翠姉様!」


 蒲公英を庇って、翠が敵の凶刃に倒れた。それを皮切りに、将たちも次々に窮地に追いやられていく。


【亞莎】

「やぁっ!」


 得意の鎖を使った攻撃だったが、亞莎の鎖が一人の傀儡に絡め取られた。


【亞莎】

「なっ!?きゃぁっ!」


 そのまま、その傀儡はもの凄い力で、鎖を引いて亞莎の体を投げ飛ばした。


【明命】

「亞莎!」


 亞莎が地面に叩きつけれられる直前、彼女を庇って明命が受け止めてくれた。が、衝撃に堪え切れず、倒れる明命…


【明命】

「ぐっ…」


【亞莎】

「明命!」


 そんな皆の様子に、一刀は…


【一刀】

「うぅっ…うおおおおぉぉぉっ!」


 今まで以上の力で、縄を引きちぎろうとした。しかし、術を施された縄は鎖より固く、一刀の腕を縛りつけたままだった。


【于吉】

「無駄ですよ。いくら力を込めても切れやしません。さて、そろそろ…貴方の一番な大事な、彼女を、殺して差し上げましょう。」


【一刀】

「っ!」


 水晶の中には、未だ善戦を続ける愛紗が映し出された。


【一刀】

「…止めろ…」


 剣を受け止めた、愛紗…しかし、そこにさらに襲いかかる傀儡たち。あっという間に、同時に四人に斬りかかられ、防いだ格好のまま身動きが取れなくなってしまった。


【一刀】

「止めろ!」


 その背後から、愛紗に迫る凶刃…


【一刀】

「止めろぉぉぉっ!」


【愛紗】

「くっ!」


 愛紗も、これまでかと死を覚悟した。次の瞬間…


【??】

「魂鋼。」


 ガキィンッ


【一刀】

「……」


【左慈】

「っ!?」


【于吉】

「ば、バカな…」


【愛紗】

「ぁ…貴方は…」


 突如として、愛紗の背後に現れ、迫り来る凶刃を自らの腕一本で受け止めたその男の姿に、一同は驚愕していた。


【華琳】

「…あれは!?」


 少し離れた所から、その状況を見ていた華琳もまた、思わず絶を振る手を止めてしまったほどだ。

 何故なら、そこには…


【華琳】

「蒼馬っ!」


【蒼馬】

「…やぁ♪久し振りだね~。」


 死んだはずの、蒼馬が立っていたのだから。

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